AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

環境と心理

2023年06月29日 | まったり邦楽
70~80年代にかけて世界を席巻したテクノポップユニットYMO。

今年始め、そのドラマーを務め、数々のバンドやユニットで活躍したミュージシャンの高橋幸宏氏が逝去。
続けて3月下旬に同じく元YMOの坂本龍一氏も、その後を追うようにお亡くなりになるという。


まぁ自分、YMOに関してはベスト盤くらいしか持ってなく、彼らのユニットを含め全くといっていいほど聴いてこなかった訳ですが(すみません)、高橋幸宏氏が2015年辺りに発足したユニットMETAFIVEの、昨年秋頃にリリースされた2ndにしてラストアルバムと銘打たれた『METAATEM』を今更ながら購入。


METAFIVEは高橋幸宏氏が、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井と共に結成した、まぁスーパーユニットと言っていい程の超豪華な音楽ユニット。




METAFIVEの存在を知るキッカケとなったのが、昨年15年ぶりに観に行った大阪泉大津での野外フェスOTODAMA 2022。
その時元電気グルーヴのまりんこと砂原良徳氏が参加しているTESTSETというユニットが気になってて、そのライブを目撃して想定以上にカッコよかったのでYOUTUBEで色々動画を調べてると、出てきたのがこのMETAFIVEのライブ映像だった。

METAFIVE - The Paramedics (Live at METALIVE 2021)


上の曲は、昨年のOTODAMAでのTESTSETのライブでも披露されていた。それはバックスクリーンのアヴァンギャルドな映像も含め記憶している。
TESTSETでは、まりんの他、LEO今井、相対性理論のギタリストの永井聖一、GREAT3のドラマー白根賢一が加わっている。
そん時もすげーカッコいいなと興奮したが、やっぱ小山田氏のギターが入るとより楽曲が引き締まっている。

このTESTSETの面子で、実は2021年のフジロックにMETAFIVEとして出演しており、この頃はちょうど小山田氏が偽善良な世間と偏向マスメディアから猛烈リンチを受けていた時期で、高橋氏も病状が芳しくなく復帰が難しかった。
この年に発売予定だった本作『METAATEM』も、日本の愚かなキャンセルカルチャーによって発売中止になっている。
この年の主要メンバーが欠けた上でのMETAFIVEフジロック出演と、新ユニットTESTSETの結成は、理不尽な扱いを受けたMETAFIVEの楽曲群を埋もれさせたくないという、残されたメンバーの意地でもあったのだろう。


ところで、私にとって一番謎(というか未知)だったのがリードヴォーカル(?)LEO今井氏の存在。
名前や顔の骨格からいっておそらくハーフ。そして若い。
ルックスとヴォーカルスタイルからしてなんかヤンチャ系というか、ラウドな音楽をやっていそう。
高橋氏、小山田氏、まりん、TEIと、この4名はなんとなく接点が分かるんだが、LEO今井氏に関しては歳も他と比べてかなり若めだし、どういう経緯でこのMETAFIVEに参加することになったのかと。

意外にも人間椅子と繋がりがあったりして、なんとあの人間椅子の津軽弁全開の名曲「どだればち」を自身の(メタル?)バンドでカヴァーして、正式アルバムに収録している。
人間椅子の曲をプロのミュージシャンが取り上げたのって初めてじゃない?

LEO今井 × 鈴木研一 対談。



さて、本作『METAATEM』でありますが、まぁ正直めちゃくちゃハマりはしなかった。
全体的にいい音色でスタイリッシュな楽曲が並び、老若男女楽しめるアルバムだと思う。
今井氏がほとんどの曲でリードヴォーカルを務めていると思われるが、小山田氏、高橋氏も数曲歌っている。

本作で特に感銘を受けたのが、2020年に配信のみで発表された「環境と心理」。
冒頭は小山田氏が歌っていて、この切ないメロディーラインとトーン、この曲で初めてっていうくらい小山田氏の歌声が私の心情にシックリときた。
2番から高橋氏が歌を引き継ぎ、こちらもまた憂い感がハンパなく、渋くて切ない。




この歌詞とMV・・・


小山田氏の失脚と復帰、高橋氏の死を経てから聴くと、本当に心に沁みる。
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絵金と人間椅子

2023年06月18日 | やっぱりメタル!!
前記事のあべのハルカス美術館での『絵金展』レポでも触れた、人間椅子の1991年の2ndアルバム『桜の森の満開の下』。


そう、この9マス折りの歌詞カードを広げると、絵金の残酷絵「伊達競阿国戯場 累」の図が現れるのだ。




特典の栞も絵金



まぁこの『桜の森の満開の下』という作品と、絵金の絵にどういう意味合いが込められているのかと問われると、別にこれといった深い意味はなく、歌詞に血しぶきが飛び、生首がころがる人間椅子のおどろおどろな世界観と絵金の残酷絵とのイメージがピッタリ合うということで、当時のスタッフがジャケットに丁度いいんじゃないかと見つけてきたのだろう。

『桜の森の満開の下』というタイトルは、1stのラストに収録された曲のタイトルから拝借したもので、当時のメンバーのインタビュー記事で、「レッド・ツェッペリンがそういうことをしてたので(おそらく『聖なる館』)ちょっと真似してみた」みたいなことを言っていたのを記憶している。


70年代ハードロック嗜好の古ぼけたサウンドと、多少難解な土着的世界観の1st『人間失格』に比べ、2ndは随分と垢抜けたと申しますか、サウンド的にもカチッとしていて、クッキリと分かりやすい楽曲が増えたなと。
冒頭の反戦メッセージ的な歌詞内容の「爆弾行進曲」や、スラッシーな「心の家事」なんかはほんとにストレートでわかりやすい。

「遺言状放送」なんてほんとキャッチーでポップ。

初の映像作品『遺言状放送』より



本作からは、和の耽美的な世界観を見事表した名曲「夜叉ヶ池」なんていう、初のシングルカット曲も生まれた。
カップリングの「人面瘡」も秀逸。

このジャケットも絵金の「伊達競阿国戯場 累」の一部を切り取ってデザインされたものか?



当時ぴあに掲載されたシングル『夜叉ヶ池』の広告。



アーティスティックでお金かかってそうな、かなり攻めた(今じゃアウト?)MVも作製された。



個人的に当時お気に入りだったのが、「憂鬱時代」と「盗人賛歌」。
「憂鬱時代」のどんよりとした曲調と中間の和嶋氏のアコギソロにとてつもない哀愁が感じ取れたし、「盗人賛歌」の前半の”静”と後半の“動”の絶妙な展開は、ほんとうに人間椅子のただならぬ情緒深さを見出すことができる。

「相撲の唄」など、相撲の取り組みと男女の関係を掛けてそのまま歌ったわかりやすい内容の曲でも、後半の圧巻のプログレ展開は目を見張るものがあるし、ラストのサバス節全開の「太陽黒点」では、和嶋氏のワウがこれでもかと暴れまくる珠玉の名曲である。

まぁとにかく、どの楽曲にもそれぞれの創意工夫や情緒深さがあり、この2ndも間違いなく初期の名作のひとつに数えられる。


そして、九州から北海道へと北上するという全国規模の「桜前線ツアー」も展開され、渋谷公会堂のライブ模様は初の映像作品『遺言状放送』に一部収録されている。




ツアーパンフ。



ところで、昨年発売されたアナログ盤には、絵金の絵は付いていたのか?



さて、あべのハルカス美術館での『絵金展』は本日最終日。

会場には、中村七之助さんのナビゲーションによる音声ガイド貸出サービスなどもございますが、この人間椅子の2ndをスマートフォンで聴きながら、絵金のおどろ絵を堪能するのも一興かもしれません。


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土佐の残虐王

2023年06月12日 | 名所ガイド、巡礼記
個人的には、日本のハードロックバンド人間椅子の2ndアルバム『桜の森の満開の下』のジャケットで馴染み深い、幕末土佐の天才絵師”絵金”。


絵金が生まれた土佐、高知県では、毎年夏になると、県内各所の神社の境内や商店街の軒下に絵金の屏風絵が飾られ、提灯やロウソクの揺らめく火で浮かびあがらせるという、大変魅力的でおどろおどろしい行事が開催される。
私もいつかこの行事を現地まで観に行きたい!と、常日頃思っておるのですが、なかなか行く機会がなくって・・・


そこで!大阪のあべのハルカス美術館が、その高知の夏祭りを疑似体験させてくれる?『絵金展』を開催してくれたので、先週の土曜、色々大阪で寄りたいところもあったので、天王寺まで馳せ参じた。





あべのハルカス。
ここもなんだかんだ数年前の人間椅子のライブで訪れた時以来かな。



入ったビルの入り口を間違えて、催し会場まで辿り着くのに苦労した。
絵金さんも生前、まさかこんなビルの高層階に自分の絵が展示されるなんて、思ってもみなかったろうな。
しかも今回高知県外の展示は、なんと半世紀ぶりなんだとか。


受付カウンター。いざ絵金展へ!



カウンター後ろの丸フレーム絵金。



血しぶきが飛び、生首がころがる絵金の残酷絵の現物。
もちろん撮影はNG。
いやー、やっぱり迫力ありますよ。
各作品の解説を読むと、いろんな昔の言い伝えによる侍同士の復讐劇や、男女関係のもつれによる殺傷事件、四谷怪談、中には痴話喧嘩の仲裁をしてるシーンとか、とにかく穏やかでない、ただ事ならぬ風景がその絵金の画力によって色彩豊かにダイナミックに描かれている。

コミカルなタッチの絵巻物なんかもあって、土佐の年間風俗を表したものだとか、震災時の町の様子を記録したものもあって、なかなか興味深かった。
その中で、なぜか蛸が地上の畑の作物をドロボーしてるファンタジックな場面が描かれてる画はユニークで面白かった。


そして、ここから撮影OKの絵金祭りコーナー。
けっこうな人だかり。みんな残酷な絵が好きなんだなぁ~




高知の神社では参道に「絵馬台」というやぐらを組んで、芝居屏風を飾る。



場内の照明も提灯が明滅したり、ブラックライトを施したりと、美術館ならではの祭りの雰囲気を出そうと工夫を凝らしてくれている。



てながあしなが?







絵馬提灯型の絵金コーナーもあった。

石川五右衛門釜茹の連図が大変興味深かった。



はい、出来上がり。












SNS投稿キャンペーンやってて、その場で投稿してカウンターで絵金チロルチョコをもらう。



絵金プリクラ。今回は見合わせた。



いやいや、インスタ映えする写真もいっぱい撮れたし、物販で散財してナイスな絵金アイテムもゲットできたし、行ってよかったと思う。


でもやっぱ現地のあの幽玄なる祭りの雰囲気は、50%も出せてなかったのではないか。
まぁ美術館施設の整った内装では限界があるわな。
絵金の絵は、やっぱロウソクの灯りで鑑賞したかったってのもある。
防火防災の安全上、それは無理なんだけどね。


なので、家帰って物販コーナーでゲットした屏風ポストカードで、ひとりおうち絵金祭りを開催してみました。
手頃なロウソク立てがなかったので、画鋲を代用しております。




あべのハルカス『絵金展』は今週末まで。

興味ある方は是非。
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