2021年冬…日本特殊陶業市民会館 ビレッジホールで行われた
演者は春風亭昇太さん、柳家喬太郎さん、三遊亭白鳥さん、林家彦いちさんの4名での落語会
「大名古屋らくご祭2021」
夜の部「新作の夜」
…の続き…
前半の
三遊亭白鳥さんの続き
今回は、柳家喬太郎さんの噺を…
「聖夜の鐘」
内容は…
ネタバレ…にもなってしまうので
その「噺」を一から聞きたい方は
これから先は…読み進めないように…笑
マクラはやはり円丈師匠の話題から
地元名古屋、円丈師匠のご出身…今日は、春風亭昇太師匠、三遊亭白鳥師匠、林家彦いちさんと私と…新作の後輩が揃い…かつ三遊亭白鳥師匠が唯一、円丈師匠の御一門、お弟子さんということで、今のようなお話をさせてもらったと…
三遊亭白鳥師匠がなぜ、一席目に上がったかというと、それは早く帰りたいらしい…笑…
ああいうことを言っておきながら追悼する気持ちは、全くないと笑わせる…
さて、こうして毎年名古屋にうかがえることは嬉しいと…本気で言ってます…と強調する柳家喬太郎さん
この仕事がくると冬だなって気がする…と言いながら、もう一つ本音があると…それは、しょっちゅう来てるから…名古屋にはしょっちゅううかがってて、ありがたいと思う反面、切ないなと思うのは、近いから日帰りになると…こうした夜の公演でも終わったら東京に帰る…泊まって、みんなでワーワーということはできないので淋しく思う…と言いながらも、今はコロナ禍なので、泊まったからと言って、4人で集まってキャーキャー呑むということはたぶんやらないと思う…と言いつつ…「たぶん」というところが自信のないところで…と笑いを誘う…
少し感染がおさまっているので、気をつければいいのかな…という気がしないでもないと…
でも、今日もお客様はマスクご着用していただいて、手指のご消毒、検温していただいて、こうしてぎっしりとお客様が入っていただいてる、こういう状況をみると、ああ第6波もはじまるんだなという気がする…感無量でございますとの…この一言に客席大爆笑…
2022年1月からオミクロン株というものが流行り出して、カンセン爆発…この柳家喬太郎さんの予想…あたってしまいましたね…汗
さて、今、いろんなところに仕事で出かけても打ち上げというものができない…そもそも、いろんな土地へいくことがおっかなびっくりで、三遊亭白鳥さんの御出身地、新潟とか、年末になると行く秋田県とか、そういう感染というものがほとんどないと言いましょうか…感染者ゼロという日が続いているようなところに行くのは、東京から行くので申し訳ないなって気がする…迎えてくれる方は温かく迎えてくれるけど…きっと、どっか心の中で、こいつ大丈夫かなって思われてるんじゃないかと…恐縮しながらいったりするけど、今回の名古屋あるいは大阪なんかは、お互い様じゃないかと…笑
さらに、みなさんマスクしてらっしゃることを褒め称えながら、名古屋の方は金メダルかじりながら歩いていると思ったと…マスクしてたらかじれない…と笑いを重ね…
いろんな土地へ行くと、その土地のものをいただいたりしながら、仲間と一杯やってというのが楽しみなんだけど、コロナ禍になってから、去年からまったくできていないと…小人数で呑むことはなきにしもあらず…
でも、もっと大人数で仲間とわいわい集まる仕事もあってと
コロナ禍なので、去年、今年とやっていないけど、三遊亭白鳥さんが地元新潟でプロデュースをしている「虹色寄席」…三遊亭白鳥さん、林家彦いちさん、そして私、さらには落語ファンにはお馴染みの桃月庵白酒さん、立川談笑さん、入船亭扇辰さん、春風亭一之輔さん、林家二楽さん、こういったメンバーがレギュラーで新潟に行く…新潟の一つの建物の地下が劇場、3階か4階に能楽堂があって、両方で落語会をやるとのことで、3人ずつで、一公演、両方の会場でやって、お客さんはチケットを買えば、両方の会場にいける、落語聴き放題、見放題のイベントだと
言うなれば、今日の公演のチケット代で「大名古屋らくご祭2021」の全部の公演を見れるようなものだと…そう考えたら、とてもお得な公演だと…
でも、劇場の公演と能楽堂の公演時間が被っているので、実はお得にならない…○○商法かな…と笑わせ
その公演後も仲間が集まるので、みんなでワイワイ飲んで三遊亭白鳥さんをイジルという楽しい会があったようで…
そこでのギャラの話
「虹色寄席」はその日のうちにいただけるということで、領収証にサインをする中、三遊亭白鳥さんだけは、「僕は向こうの部屋で」と…
三遊亭白鳥さんも、ここでサインをすればいいのに…
と、このことを我々の世界では「ぎる」というそうで
「あれ、ぎってるんじゃねえか、兄さんよ」…って、私が言ったことで
みんなが私のことを「ギリの兄さん」というとか…笑
「虹色寄席」の打ち上げ、1回目か2回目か忘れたけど、みんなでキャーキャー言いながら呑んだことがあったようで…みんな、すっかり酔っぱらってべろべろになっていて、特にべろべろになっていたのが三遊亭白鳥さん
林家彦いちさんと私とで、とりあえず三遊亭白鳥さんを寝かせてやろうと、真冬で防寒着を着たまま、ホテルの部屋で三遊亭白鳥さんをベットに運んで寝かして、林家彦いちさんとは、それぞれの部屋に分かれたそうな…
で、翌日になったら三遊亭白鳥さんはシラフに戻ってて…なんでも林家彦いちさんに驚いて電話をかけていたらしく…
その内容は、身に覚えのない鳥の羽根が部屋にいっぱい落ちていたって、慌てふためいた様子で
なんでも、三遊亭白鳥さんは、鳥をたべることはなんの問題もないけど、生きている鳥がとても苦手なんだとか…
で、その部屋に散乱する鳥の羽根に、相当驚いたらしい…
その原因は…というのが語っている柳家喬太郎さん…前の晩、羽織っていたものが、ダウンジャケット、それが羽毛だったようで…笑
また、同じように2回目の時も、みんなでキャーキャー言いながら呑んだことがあったようで…みんな、すっかり酔っぱらってべろべろになっていて、特にべろべろになっていたのがまたまた三遊亭白鳥さん
そのときも介護して、三遊亭白鳥さんをベットに運んで寝かして…そのときは卵の殻をいっぱい、わざとおいて…と…笑
三遊亭白鳥さんとは、おもしろいことがいっぱいあると…
名古屋にも泊ったことがあって、それはSWAという新作落語の公演で、翌日が大阪の公演だったので、そのまま名古屋泊となったときにも、みんなでキャーキャー言って飲んで、さらにホテルで部屋飲みをしようと…プロデュースは春風亭昇太さんなので、その春風亭昇太さんの部屋で…で、さほど欲しくなかったけど、エロ本も買ったとか…で、酔っぱらっているので、エロ本をビリビリ破いて春風亭昇太さんの部屋に散りばめたこともあったとか…
今考えると自分の行動が不明…と笑わせながらも…
こんな話をしたら長くなってしまうけど…と…さらに…笑
翌日…大阪公演…昼間、ちょっと歩こうということになって、動物園前とか大きな商店街を歩いていたら、三遊亭白鳥さんの姿がみえなくなって、どうしてたのかと思えば…戻ってきて、いいものをみつけたから買っちゃったと…
それはダボシャツとステテコのセット
三遊亭白鳥さんが言うには、寅さんが来ていたのと同じもの…「6千円でいいわー」と「寅さんがきてたのと同じもの、大阪で帰るんや、ほんまものやでー」と嬉しそうに言ってたけど
「寅さんは東京生まれ…ほんまものではない…笑…ましてや巣鴨に行けば全部勝っても2千円で買えそうなものだった」と
旅は楽しいけど、今は思うようにはいかない…地方に行って泊まりになっても、仕事が終わったらすぐに解散をして、ホテルの部屋で呑むことがほとんど…まあ、それはそれで楽しいけど…
旅というのは、どんな感じであれ、楽しい…いろんなところ、名所、旧跡を訪ね歩く旅もいいけど、ただ何の目的もなくといった旅もいい…とマクラをまとめて
演目「聖夜の鐘」
主人公は…何の目的もなくといった旅をしながら、田舎町のビジネスホテルに泊まっている旅人…
このビジネスホテルに泊まってから2週間たつという…
そんな旅人がビジネスホテルのフロントの女性、キミコさんに話しかける…
やることもないから散歩でもと思うけど…この街にはコンビニさえない…名所旧跡も特にない街…でも、まあ、行ったことのない街へ行ってみたいと思って…でもこういうところでも、こういった宿があるというのはありがたいと
フロントの女性、キミコさんは、
「こんな町でも仕事をしている人がたくさんいらっしゃるんで、ときどき出張でこの街にこられる方もいらっしゃいます…でも、お客さんお気づきですよね…お客さんがいらっしゃってから2週間、誰もお越しになっていません」
と…
よく経営をしていらっしゃるな…と従業員を尋ねると
このフロントの女性ともう一人男性と支配人だけ…
で、その支配人は、実にやる気のなさそうな…やる気のないオジサンの典型のようなオジサンだと…旅人の感想
しかし、若いもう一人の男性も含めて…若いお二人が勤めていらっしゃる…やはり故郷で骨をうずめたいのかと…旅人が尋ねれば
「こんなところでも働けるだけありがたい」とフロントの女性
旅人は二人の関係を察して「もう一人のお若い男性はいいお方か…彼と二人で働けるのは幸せなことだろう」というと
フロントの女性は
彼には地に足をつけてもらいたいと…どんな仕事でもいいから…コツコツ働いてほしい…で、いつかは結婚したいと思うけど…でも彼は夢を追っていて、夢しか見てない…見果てぬ夢というか、彫刻家になりたいといってると…
でも、実際、それで食べていけるのは、ほんの一握り…私には、彼に才能があるのかどうかはわからない…でも今日も、こうしてリネン室に籠ってコツコツ何かを彫っている…
夢を追うのは悪いことじゃないけど、私は二人で一緒に歩いていく確かな確証が欲しい…夢だけでは、ご飯は食べれませんからと…でも、こうしてお客さんと話していると、何か自分の心の内を話してしまっているような…と
フロントの女性が語れば…
旅人は「いいんですよ…こういうしっとりとした話もいいでしょう…何も円丈一門の落語ばかりでなくても」なんて言って笑わせる…
その話を聞いて、彼の話を聞いてみたいと思った旅人は
彼女にお願いして、彼が彫刻を彫っているリネン室に案内してもらうことに…
リネン室にて
「何か御用で」と…旅人に問うキヨシと名乗る若い男性
「彼女から話を聞きました…夢をみてらっしゃると…」と旅人が口にすれば
キヨシさんは
「あいつは俺のことを何も理解していない…いつか彫刻家になってアートの道を極めたいと思っている」
「彼女は地に足をつけてもらいたいと言っている」と言葉を返せば
「あいつは俺の夢のことなんかわからない…こんな田舎のきたなくて小さいビジネスホテルでずっと終わるつもりはない…俺がボーイであいつがガールで…」…笑
「なんとなく言いたいことはわかるけど、ガールとはいわない…」笑
キヨシさんは、さらに
明日はクリスマス・イブで、このホテルでささやかなパーティーをやると…そのときに彼女に渡すプレゼントを、今彫っていると…
パーティーと言ってもキヨシさんとキミコさんと支配人の3人だけのパーティだけど…と…ここで旅人でもあるお客さんをパーティーに誘うキヨシさん
旅人も、特に他に行く予定もなく…行くところをみつけようにも何にもこの街にはないので…さらには、彼の心のこもった手作りのプレゼントを彼女がどううけとめるか見届けたい気持ちがある…と、パーティーの参加を喜んで受け止める…
その話をきいていたのが、支配人…
その口調はまさに酔っぱらい…
「お客さん、こんなきたねえビジネスホテルにずっと泊まっていただいて、パーティーにも参加していただいて、ありがとうございますねえ」
それを見た旅人は
「素晴らしいやる気のなさ…もはや酔っぱらっていらっしゃる…」
さらに支配人が「なんで、うちのホテルにはお客さんがこないんですかね?」との問いかけには
「たぶん、あなたが問題…もう少しやる気をだせば…」
さて、翌日…
パーティーが始まった
「酒はいくらでもあるんで、遠慮なく…食べるものもいっぱい用意してあるんで…」とまたまたすでに酔っぱらってる支配人…
用意された食べ物は…というと「柿のタネ」「さきいか」「チーズ鱈」「しるこサンド」…
旅人は一言…いいクリスマス・イブだ…笑
スミマセンね…お客さん…と女性、キミコさんが声を掛けてくれるも、彼氏キヨシさんの姿は見えない…
こうしてパーティーは始まっているのに、まだリネン室に籠って彫っているとか…
すると、キヨシさんが姿を現せる
何やら布で覆われた大きなものを台座に載せてゴロゴロと運んできて
「できたよ!お客様、昨日はありがとうございました…キミコ、メリークリスマス!!これが俺からのプレゼント!お前のためにコツコツ心を込めて彫ったんだよ!受け取っておくれよ」
と、1本の木から彫ったものは
「十字架」
これを見たキミコさん
「これを彫ったの??バッカじゃないの?普通は二本の木を組み合わせるの…これを1本の木から…バッカじゃないの!」
「バカッていってはいけないんだよ…」「子供か!」
「いい加減にしてよ…地面を見て二本の足で歩いてよ」とキミコさん
その光景をみてた旅人は語る
夢をみるのは大事なこと…しかし、地面を見つめて一歩一歩着実に歩いていくことも大切なこと…夢を見るのは素晴らしいことだが、その夢ばかりを追っていると浮ついたものになる…地面を見て歩くことも素晴らしいことだが、地面ばかりを見て歩いていると、空の青さはわからない…一つの眼で空を見て一つの眼で地面をみる…そういう二人が集まれば…二つの眼で空を見て、二つの眼に地面を見て歩いていけると…
さらに、行きがかり上、二人のために何かを作りたいと…
木が残っているのかどうか確認し、リネン室にあることを知ると…
旅人は、リネン室に籠って小一時間ほど、こつこつと何かを彫っている…
リネン室から旅人が姿を現すと
「出来上がった…これが私からのクリスマスプレゼントだ…大志を胸に秘め、きちんと前を向いて地面を向いて歩いていけるか、お力添えになればと…
「木彫りの鐘」
不思議とこれを二人に渡すと…風もないのに…地震でもないのに…仕掛けがある訳でもない…ただの木彫りの鐘なのに…
「カラーン、カラーン」と鐘の音がなる!!!」
風情のある音色がパーティー会場に響き渡る…
「なんでこんなことが…」と旅人に尋ねると
「魂をこめるとはこういうこと…」
「木彫りの鐘に生命が宿って、鐘がなりはじめる…こんなことができる人は…」と慌てて宿帳の名前を確認すると
飛騨高山のご出身…名前が「甚五郎」
「左甚五郎先生!」
旅人は言う…
「わしは甚五郎先生というものではない…そもそも左甚五郎が生まれてから480年…そんなに人間は生きられない…ただ甚五郎の作ったものには魂が宿る…初代甚五郎が、その命を全うする晩年…精魂込めて自分を彫った…で、その魂が散った時に、その木彫りに魂が宿り、2代目甚五郎となった…2代目甚五郎が朽ち果てるときに3代目を彫り、3代目が朽ち果てるとき4代目を彫り…私は5代目だ…」と…
さて、この木彫りの鐘の噂は、あっという間に世間に広がり
甚五郎の彫った鐘があると…その街、そしてこのホテルは大繁盛…
そのうわさは日本のみならず海外へも…
サゲは、その観光外国人のこの一言
「ジンゴロウのベルは素晴らしい」
「ジンゴロウベルは素晴らしい」
「ジンゴロウベル」
「ジングルベル」…笑
クリスマス・イブに「聖夜の鐘」
なんかちょいとしたファンタジーの短編映画を見てるような…そんな気にさせてくれる臨場感あふれる素晴らしい新作落語でした
ええ、話でした
これ…演目「聖夜の鐘」よりも「ジングル・ベル」の方がもっと伝わりやすいって思ったな…
まあ、演目の発表は、すべての演目が終わってから公開されるから、たいしたことでもないけどね…
で、中入りを挟んで…第二部へと…
このブログ同様…続く…
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