チェコフィル、ズデニェク・マーツァル指揮のマーラー交響曲のCDを集めた。
八番、十番と大地の歌が発売されていないが主なものは出揃った。
マーツァル、チェコフィルの音は郷愁を誘うひなびた古雅な響きで、ノイマンの伝統を引き継いでいる。
山あり谷ありの巨人もチェコフィルなら安心して聞ける。ちゃんとメリハリのある作りだが中庸の美。
復活も比較的大人しいが最後の歓喜に自然に持って行かれる。
三番の第一楽章も勢いがあり、その後中庸の美で盛り上げながら最終楽章の耽美的な時間が来る。
四番も中庸の美で自然な作り。五番は巨人と並んで完成度が高い名演。
六番の行軍のようなメロディも威圧的ではない。二枚組で80分ちょっとだが長さを感じさせない。
寂寥感を感じさせるためにマーラーが入れたと思われるベルの音がカラカラとおもちゃのように聞こえるのはご愛嬌。
九番も時間を掛けて彼岸への階梯を天上的にゆっくりと昇ってゆくのを堪能できる。
マーツァルのマーラーは正確にはボヘミア風ではなくモラヴィア風と言うべき線の太い歌心らしいが、広い意味ではヴァーツラフ・ノイマンの響きを受け継いだまさにチェコフィルの音である。
牧歌的なある意味で前時代的な郷愁感のあるチェコフィルサウンドがこれでもかと言うほどの高音質で届けられる。エクストンのSACDハイブリッドはお値段が張るが中古で手に入れる手もある。
ノイマンのSACDハイブリッドが完成しなかっただけに、現役のマーツァルには是非とも八番、十番アダージョだけでなく補筆完成版と大地の歌も吹き込んでチェコフィルファンを感涙させてほしい。
エクストンは廉価盤を売らない方針らしいが、いつの日かライセンスをどこかが取得して薄型ボックスセットで出してくれるといいのだが。この際SACDでなくても構わないので廉価盤攻撃希望。
モラヴィア風、広い意味でのボヘミア風の美質を十全に兼ね備えたズデニェク・マーツァルのマーラーシリーズはヴァーツラフ・ノイマンと並んでチェコフィルマニアの心の糧である。末永く聞きこんでハイクオリティだったり5.1DSDだったりする超高音質のサウンドを心行くまで謳歌して呆けていたい。
マーツァルとノイマンには頭が下がる思いである。
郷愁を誘う不屈の歌心遠い国から熱く見守る