あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

五味太郎作のサンタクロース絵本のこと

2011-11-03 11:54:28 | インポート

 先日,近くの本屋でクリスマス関係の絵本が展示されているコーナーを見ました。どんなものがあるか興味深く見て回りましたが,最近発行されたものがほとんどでした。大好きな五味太郎さんの絵本もさがしてみましたが,ありませんでした。かって発行されたクリスマスやサンタクロースに関係する本にも名作や傑作があり,読み継がれてきた歴史があります。そういった良書も何冊か展示されていたらいいのになあと思いました。

さて,昨年も紹介したかもしれませんが,改めて五味太郎さんの絵本の魅力について,サンタクロースが登場する3冊を取り上げ,1冊ずつ紹介していきたいと思います。

1 てんしさまが おりてくる  <リブロポート 刊 1980年11月 初版発行>

  クリスマスの夜に,かみさまのおつかいとして てんしさまがおりてきて ふくろうをきよめます。きよめられたふくろうは,次にきつねをきよめ,きつねはくまをといった順に,リレー式にきよめの儀式が続いていきます。そして,くまはおじいさん(サンタクロース)をきよめ,サンタクロースになったおじいさんは子どもたちの家を回り,子どもをきよめ,さらにはおくりものをきよめます。きよめられた光のあさ,子どもはおくりものを手にして喜ぶという ストーリーです。

 絵の中の登場人物たちが,とてもかわいらしく(おじいさんも)親しみを感じます。ユーモアあふれる言葉と絵が一体となって五味ワールドが展開し,心がほんわりとしてきます。きよめるという神聖な行為も堅い感じがなく,どこかおかしく読み手の心をやわらかにときほぐしながら,きよめてくれるような感じがします。

 この絵本の中では,おくりものをまくらもとにおくのはおとうさんのやくめとなっており,サンタクロースは子どもとおくりものをきよめるやくめをします。

 きよめるは,辞書によると 「不吉なものやよごれなどを取り去って,きれいにする。けがれを払い去る」とあります。きよめられた子どもは,いやなことやかなしいことを忘れ,楽しく幸せな夢を見ているのだと思います。サンタクロースと一緒にソリに乗って空を駆けている夢かもしれませんし,ほしいと願っていたおくりものを手にして喜ぶ自分の姿を夢見ているのかもしれません。

 おくりものは,きよめられることで,子どもの願うおくりものとなり,おくりものに込められた愛を感じながら,子どもは受け取るのだと思います。そして,きよめられた光の中で,子どもはおくりものを手にし,うれしさと感謝の気持ちでいっぱいになることでしょう。感謝の対象は,親サンタクロースかもしれませんし,おじいさんサンタクロースかもしれません。どちらであっても,子どもが幸せな時が自分が幸せな時と考える人なら,だれでもサンタクロースになれるのですから……かまいません。

 おくりものをするのが親だと知ったら,子どもはサンタクロースはいないと思うのでしょうか?おくりものの向こうに,サンタクロースは確かにいるのです。ただ単におくりものを配る役目ではなく,おくりものの中に込められた子どもたちへの愛を気づかせる役目を果たすために。

 サンタクロースは,目に見えないものを目に見える形で伝える役目をもっているのではないでしょうか。子どもが大好きで,その笑顔がくもることなく幸せであることを願う想いから,サンタクロースは生まれた存在なのではないかなと考えます。その願いが大切にされる世界である限り,サンタクロースは目に見える姿を与えられながら,生き続けるのではないかなと思います。

 サン・テグジュぺリの『星の王子様』に,私が王子様に羊の入った箱の絵を描いてあげる場面があります。どうしても王子様の想っている羊の絵が描けなかったため,羊の入った入れ物とそこにのぞき窓をつけた絵を描いて王子様に見せるのです。王子様は,その絵を見て喜びます。のぞき窓の向こうに,自分の羊を見ることができたからです。のぞき窓までは,目に見える世界ですが,その先に見えた羊は目に見えない世界です。

 目に見える世界だけがすべてではなく,のぞき窓の向こうにも豊かな想像の世界が広がっています。サンタクロースも,妖精も,その向こうの世界に住んでいるのだと思います。

 絵本やたくさんの書物は,そんなのぞき窓のような役目を果たしてくれているような気がします。内容が飛躍しすぎた感じがしますが,2冊目以降は次回に紹介します。

 

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