朝日新聞の27日付けの社説に、原発のこれからの在り方について、国民投票という制度を導入して広く国民の声を聞いてはどうかという提言がありました。
その提案理由として、次の3点をあげています。
①原発問題は、国の将来を10年単位で左右し、国民の誰もが影響を受け、世論が割れている、国民投票にふさわしいテーマであること。
②国民と政治との失われた接点を取り戻す機会になること。
③制度の導入過程で、議論の技術や合意のつくり方を学ぶことができ、民主主義の教室になること。
具体的には、国民投票といっても、投票結果に法的拘束力のない諮問型の制度の導入を提案しています。議会制民主主義の根底を崩さず、憲法の改正も必要なく、導入しやすい点が、諮問型を提案する理由となっています。先例としてスウェーデンでは、スリーマイル島事故の翌年に、「新設を含めて容認」「新エネルギー開発を強化する条件付き容認」「早期全廃」という選択肢で問う、国民投票が行われたとのこと。その結果、2010年までの全廃が決まったが、30年後に議会が古い原発を建て替えるという方針に転換したそうです。国民と議会が試行錯誤していくという経過をたどっていくのが、諮問型国民投票制度のようです。
政治の場に国民の声が届かないような現状を考えると、国民投票制度の導入には賛成です。一人一人の声を政治に反映させていく上で、有効な制度になるのではないかと思うからです。また、投票する過程で、国民一人一人が問題意識を持ち、日本の未来を見据え、原発をどうしたらよいのか判断することになることと思います。政治家も、国民がどんな考えをもっているかを投票結果から知ることができ、国民の声を生かした政治の実現に向かってくれるのではないかと期待できそうです。
社説では、この制度をつくるのに拙速にならず2年ぐらいの時間をかけて設計してほしいとも主張しています。ゆっくり時間をかけ、どんな問題をどんな手順や方法で取り上げ、どんな形の投票制度にするのか、真に国民の声が政治の場に生かされる方向で検討していってほしいと思います。
ラジオで国会中継を聞いていると、これが良識ある議員の言葉かと思えるような発言やヤジを耳にします。政府側の答弁もどこか官僚的で内実の伴わない形式的な言葉だと感じる面があります。建設的な議論を積み重ねよりよい政策をつくり実行する中で信頼される政治の確立が望まれます。その起爆剤のような役割を国民投票制度が果たしてくれるような気がします。できるだけ早期の実現を強く望みます。