この絵本のあとがきに、作者である あいだひさ さんが 次のように書いています。
……
「赤ちゃんの家から来た」 という事実は、3歳の誕生日に手作り絵本を通して本人に知らせています。私たちがどれほど待ち望んでいたか、親子になれてどんなに幸せかという想いは、何度聞かせても子どもがあきることのない一番のお気に入りの話です。
里親や特別養子縁組に限らず、家族の始まり方はさまざまであってよいと思います。そしてどんな始まり方でも、互いに心から思いやり、愛し合って築き上げてこそ家族だと信じています。家族の始め方には、こんな選択肢もあることを心にとめていただければと願っています。
……
赤ちゃんの家から引き取り、我が子として育ててきた あいだひささんのことについては、以前のブログでも紹介しました。この絵本に登場するなつかちゃんが、あいださんの最愛の娘さんのモデルでもあります。
幼稚園の先生から、「いちばんだいじなたからものをもってきてね。」と言われた、なつかちゃんとなかよしのたくやくん。二人は家で、たからものの見せ合いっこをします。なつかちゃんのたからものばこに、ピンクのぬのでだいじにくるまれたものがありました。なつかちゃんは「これ、なあに?」とママにたずねました。するとママは、「これはね、なつかが『どうじょ』ってママにくれたはじめてのプレゼント。ちっちゃな手でひろってママの手にのせてくれた小石よ。」と答えます。たくやくんもたくやくんのママにたずねたら、ママはピンクのしおりをつまみあげ、これがたくやくんが「どうぞ」ってくれた花びらの押し花だったと答えます。
たくやくんは、ママのおなかから生まれてきた赤ちゃんでした。たくやくんが生まれてきて家族になった日が、たくやくんのママの一番うれしい日でした。
なつかちゃんは、赤ちゃんの家からきた赤ちゃんでした。なつかちゃんがうちにやってきて家族になった日が、ママとハパの一番うれしい日で、それからは ずうっと毎日一緒にいることがとってもうれしいことでした。
二人とも、生まれてきたことを心から喜び 家族になることを待ち望んでいた、ママとパパが愛する子どもです。
なつかちゃんが、「ママのたからものは、この小石?」とたずねると、ママはこう言います。「ううん。もっともっといちばんのたからものは いま、ママのおひざのうえよ。」 もちろん、ママのひざの上にいるのは、なつかちゃんです。そういうと、ママはわらって とびきりやさしい ぎゅっ!をしてくれるのでした。
家族の始まりはさまざまであっても、互いに心から思いやり、愛し合って築き上げていくのが家族。あいださんの心を込めたメッセージが、温かくドンと心に届く絵本です。
血のつながりが家族をつくるのではなく、子どもをまんなかにした温かいつながりが家族をつくっていくのだということを、強く感じさせる絵本です。温かい家族の絆を感じさせる ほのぼのとした絵は、アメリカ在住の たかばやし まり さんが描いています。
◇絵本 「たからものは なあに」 作:あいだ ひさ 絵:たかばやし まり 偕成社:刊