東京が涼しいなんて嘘っ八です。
田舎と同様夏日じゃないですか!
前回帰省前の夏日にも訪問した東京藝術大学美術館へ行きました。
東京藝大のキャンパスの移動販売車周辺も暑そうです。
けっこう流行っています。
前回は暑くて美術館に逃げ込みましたが、今回は目的地としてやって来ました。
チケット売り場脇の床にある、高橋由一のこの絵が3階入口に掛かっていました。
「教科書で見たことあるでしょ」のキャッチコピーと共に。
この展覧会は藝大の卒業生と教師の作品展ですが、彼は卒業生でも教師でもありません。
洋画の代表作品として学生に学ばせる為に藝大が購入したものです。
さて、私は前回2回通し券を買っているので、今回は支払い無しで入場します。
上部を切り取られて、短くなったチケットです。
今回は冒頭の「鮭」と黒田清輝の「婦人図(厨房)」が目玉でしょうか。
上村松園の「序の舞」の展示を期待していたのですが、只今修復中との事です。
全体として、第1回展の出品作品の半数が今回も展示されていて、満足度は低いです。
ただ、この小倉遊亀の「径」が今回も地下2階の入り口に掲示されていました。
当然ですが我が家の「額装絵葉書」とは全然違います。

第一、大きいし・・・。
やっぱりこの絵はこの季節のものです。
絵の前の椅子に30分ばかり座って眺めていました。
涼しいし・・・。
改めて鑑賞します(前回と殆ど一緒ですが、今回は愛犬に目が行きました)。
母と小さな娘と愛犬の歩く姿です。
三角の安定した構図の右に青を穿いて動きを出しています。
今時分の昼下がりでしょうか、その姿に影はありません。
陽射しを受けて実物より白く映る日傘と服と、母のサンダルと娘の靴が時間帯を教えています。
先頭を行く母の重心はまだ右足に残っていて、左足の親指がまだ反っている、着地の瞬間を捉えています。
娘の歩幅に気遣いながら歩む母の歩調に、頭上に両手で捧げた黄色い日傘に赤い信玄袋をぶら下げて、娘がついて行きます。
その後ろをまだ幼い愛犬がキリキリ歩みます。
柴犬のように見えて、首が長く腰回りが細いので、洋犬の血が入っているように思います。
雑種を飼っている処から、この親子は庶民階級と推察します。

母の手提げは竹と網製の籠です。
恐らく実物より大きく描いていて、白っぽい画面の中で、黒い籠が目を引きます。
籠の中には季節の草花が、まだ瑞々しいです。
お盆のお墓参りでしょうか?
オカッパに刈り上げられた娘の幼いうなじが健気です。
作者の対象に注ぐ愛が溢れたこの作品が好きです。
この季節に再度この絵を観られて満足です。