暑さが戻った東京です。
木陰に逃げました。
昼下がりの太陽が照り付けます。
強い陽射しが濃い影を落とす木陰の先で、看板が光っています。
涼を求めて東京芸大美術館へ逃げ込みます。
奇抜なタイトルですが、この学校には大コレクションがあります。
(この展覧会は2回に分けて開催されます。入場料は1回800円ですが、この2回券を買うと、1300円とお得です。チケットの下が1回目、上が2回目券です。)
岡倉天心を初めとする教授陣の作品だけでなく、村上隆等々の卒業作品が全て保管されているのですから、その数たるや膨「大」であり、中身は「パンドラの箱」なのでしょう。
チケット売り場横には、美術の教科書で見た、高橋由一の「鮭」があります。当然、この絵も展示されていました。
この立ち位置マークは何!?不明です。
芸大は、もう一度観たい作品を沢山保有しています。
黒田清輝の「湖畔」や「智」「感」「情」の三部作であったり、上村松園の「序の舞」であったりします。
この季節に観たいのは、小倉遊亀の「径(みち)」です。
やっぱり展示されていました!
数年振りに遭えました。
母と小さな娘と愛犬の歩く姿です。
三角の安定した構図の右に青を穿いて動きを出しています。
今時分の昼下がりでしょうか、その姿に影はありません。
陽射しを受けて実物より白く映る日傘と服と、母のサンダルと娘の靴が時間帯を教えています。
先頭を行く母の重心はまだ右足に残っていて、左足の親指がまだ反っている、着地の瞬間を捉えています。
娘の歩幅に気遣いながら歩む母の歩調に、頭上に両手で捧げた黄色い日傘に赤い信玄袋をぶら下げて、娘がついて行きます。その後ろを愛犬が歩みます。
母の手提げは竹と網製の籠です。
恐らく実物より大きく描いていて、白っぽい画面の中で、黒い籠が目を引きます。
籠の中には季節の草花が、まだ瑞々しいです。
お盆のお墓参りでしょうか?
オカッパに刈り上げられた娘の幼いうなじが健気です。
作者の対象に注ぐ愛が溢れたこの作品が好きです。
帰りにこのポストカードを買ってしまいました。
暑中見舞いは誰に出しましょう?