本を読んだ。
★無所属の時間で生きる
著者:城山三郎
出版社: 新潮社
この本のタイトル「無所属の時間で生きる」は、以前、新聞の書評欄で読んだ事があり、気に留めていた。本屋さんでもよく目にしていたので、今回、ひょいと手にして、読んでみた。といっても実は、城山さんの文章をまとめて読むのは初めてである。
とっつきにくいような先入観で今まで避けていたが、かなり読みやすい、というより、とても素直に自分の普段の思いをさらけ出した文章である。あのテレビに出ていた顔が好爺(失礼ですが)として思い出される。
「無所属の時間に生きる」という意味は非常によくわかる。組織に頼らず、筆一本で生き、生活を支えた向こう意気の強さは時々見えるものの、むしろ多くは、不安と焦燥と、そして、支えてくれた多くの仲間への感謝の気持ちが綴られている。「無所属」だからこそできたこと、考えたこと。そしてさらに、老いてゆく時間の中で、充実した豊かな時間の過ごし方として、「無所属の時間を生きる」という境地を述べている。
さらに城山さんは、生きる時間の残り少なくなった自分に言い聞かせる。
一日に一つでも、爽快だ、愉快だと思えることがあれば、それで「この日、この私は、生きた」と自ら慰めることができるのではないか。つまり、これは私の造語なのだが、「一日一快」でよしとしなければ。それでも、どう見ても快いことがないというならば、奥の手がある。「珊瑚の時間」つまり、晩餐後に、寝そべって好きな本を読む事である。短時間でもよい、好きな時間だけ読み、眠りに落ちる。
自分の時間を大切にしたいと想う。