美空ひばりは歌った。「勝つと思うな思えば負けよ」。では勝つと思わなければ勝てるのだろうか、どころがそうでないところが勝負の難しさというか謎なのである。
11日日曜日の将棋NHK杯戦は羽生二冠対畠山鎮七段だった。準決勝ともなれば優勝もちらつく、畠山七段には千載一遇のチャンスだ。しかも相手は最強羽生二冠、自然肩に力が入ってしまう。
試合前のインタビューで畠山七段は顔色が青ざめるほどの緊張感をみなぎらせながら、限界を超える力を出して戦うと答えたものだ。その言や良し、しかしながら最強の羽生二冠に、僅かなためらいが傷を広げ、力を出す間もなく完敗だった。金が踊らされる前に、持ち味通り踏み込んで、勝負すればよかった。僅かな隙を求めての駆け引きでは到底羽生の敵ではない。大差での投了となった。
持ち味通り、攻めての完敗なら、熱血漢の攻める鎮先生、無念でも忸怩たるものはなかっただろう。
羽生二冠の試合前のインタビュー、微かな緊張を見せながら攻める鎮七段に対して勢いのある将棋を指そうと思いますと答えていた。勝つと思ってはいないが勝たなくてもいいとは思っていないのが良く伝わってきた。
羽生は強いなあ。