脈が乱れる不整脈の中に脈が出鱈目に乱れる心房細動という病気がある。これは結構よくある病気で後期高齢者の男だと二十人に一人くらい居ると言われる(女は男の半分くらい)。脈が乱れるわけだから、当然心臓の働きは悪くなるが、日常生活ではさほど問題にならないことも多い。困るのは、脈が乱れるために血液の流れが乱され血液が淀み、血液が凝固して血栓(血の塊)を心臓内に作り、それが剥がれて脳に飛んで脳塞栓を起こすことだ。そうすると片麻痺になったり、運が悪ければ死んでしまう。ジャイアンツ監督だった長嶋や亡くなった小渕首相はこの病気だったと言われている。
この脳塞栓を防ぐために血を固まりにくくする治療法があり、ワーファリンという薬を飲むことになる。ワーファリンはビタミンK依存性の凝固因子をビタミンKを阻害することによって減少させて血を固まりにくくする。そのためにビタミンKを多く含んだ食品摂取が制限されてしまう。代表選手が納豆である。それとワーファリンはその効果を絶えず監視しなければいけないので、受診するたびに採血する煩雑さが伴う。
最近、このワーファリンと違う機序で血液を固まりにくくする薬が出てきた。この薬は頻回に血液検査をする必要もないし、納豆禁止ということもない。但し、とても高価なのだ。ワーファリンの20倍ぐらいする。
患者さんに高いけど納豆食べられるよと説明する。なっとうくうする人といままでのままでよいと言う人とが居る。関東と関西で売れ行きが違うか聞いてみたい。