誰にも馴染みの店はあると思う。たまたま入って気に入った、相性が良かったのでというのが、多いだろうか。私は新しい店を探検するのが好きで、探して見つける場合が多い。中で三分の一くらいは人づてに良いと聞いて、やっぱりよかったというのが入っている。口コミの情報は結構参考になる。そこへ行くとネットの情報はあまり参考にならない。先日のカレー屋はネットの評価はよかったが、私にはがっかりだった。食べ物屋ではないが、歯医者と床屋は十年ほど前から勧められた所を利用しているが、良い所を教えてもらったと感謝している。以前の所と雲泥の違いと言えば言い過ぎかもしれないが、特に歯の方は最初からここに来ていればとちょっと後悔している。
昨日は馴染みの寿司屋に行ってきた。この店は以前は職人を何人も使った駅前の大きな店だったのだが、親爺さんが時代を鋭く読んで?六年前に店をたたみ、百メートルばかり離れた場所に息子と二人だけで八席の小体な店を開店したのだ。完全な家族経営で、お値段も七掛けくらいに安くなり、味はむしろ上がった気がする。以前の店には二回ほど行ったきりで、特に贔屓きにしていたわけではないが、新しい店には月に一回ほど顔を出している。
先客は一人だけで、なんだか寒いのとオリンピックのせいでこの所暇なんですよと、この頃は息子に任せきりの親父さんが話しかけてきた。ここのお茶は最初はややぬるく僅かに薄くて飲みやすく、だんだん熱く濃くなって行く。いつも三杯ほどお代わりをするんだが、微妙な心遣いに感心する。寿司も細かい神経が行き届いており、本当に美味しい。白身の旨さをここで教えられたと思う。