月曜日に喉の痛みが取れないと若い女性が受診した。金曜の夜から喉が痛く、ものが食べにくいと言う。熱は無く鼻水が出て今朝から少し咳も出てきたそうだ。土曜日に耳鼻科で薬を貰って飲んでいるが良くならないと言う。診察すると喉が中等度に発赤しているだけでリンパ腺も腫れていないし胸の音もきれいだ。
「風邪ですよ。耳鼻科で薬を貰っているのに何でまた来たの」と聞くとセカンドオピニオンだという。エー風邪でセカンドオピニオンですかと思ったのが顔になんとなく出たらしく、薬手帳を見せてくれ、実は薬局で薬が出過ぎだと言われたと言う。ちょっと出過ぎたことを言う薬局だと思いながら処方を見ると第三世代のセフェム系抗生剤消炎剤鎮痛剤鎮咳去痰剤胃薬が出ている。確かにこれでもかの全方位処方で出過ぎの感じがする。私に出来ることと言えば、この抗生剤は飲む必要はありません。スープやお茶などを多めに飲んで、この鎮痛剤は頓用で無く二日間は一日三回飲んでくださいと注意するぐらいだ。
途端に納得した様子で、当院からの薬はなくお帰りになった。たぶん今頃は回復しているはずだ。車は急に止まれないのと同じで風邪を一日で治す薬はない。同業者に厳しく当たるのは良くないとされているが、ちょっと周りを見回して思い浮かべればどのような仕事でも力に差があり客との相性がある。
ご注意申し上げたいのは資格免許はこれから専門家として修行をするのを許可する許可証で能力の保証ではないことだ。もう一つ医療では急性の病気は身体を休めれば八割方は自力で回復するので、誰が見ても大きな差は出にくいということだ。勿論、人間には相性があるので非常に優秀有能な専門家でも、自分とは合わないことはある。
いづれにしても自分に合って良い仕事良いものを提供してくれるプロを選び見付けるのは本人の分担で、運の良さ悪さは半ばご自分の目利きに掛かっていると申し上げたい。