
隣町の総合病院に脳梗塞で入院していたNさんが退院後私のところに通院したいと紹介状を持って来院された。幸い後遺症は軽く、僅かにラリルレロが不明瞭な程度で、日常生活にはほとんど支障がないそうだ。
紹介状の中に睡眠薬としてデエピゴという薬が入っていた。知らない薬品名で手持ちの薬便覧を調べても載っていない。インターネットで調べると第二のオレキシン受容体拮抗薬とあった。ははあベルソムラに次ぐ新薬かと電子カルテに打ち込んだが出てこない。ディピゴと入れても出てこない、困っているとNさん眠れますから要らないですよと言われた。「ああそうですか」と他の血圧や抗血小板薬薬を入力し診察を終えた。
何でデエピゴがないのか、新薬のせいだろうかと事務の女の子に紹介状を見せるとじっと一睨み、「先生デイピゴでなくデイビゴですよ」。えっ、遠近眼鏡を外しよく見ると確かにデイビゴだった。慌てて薬局に電話して、デイビゴを追加した。
何故インターネットではデイピゴ出てきたかというと、インターネットには類字語を挙げる機能があるため、デイピゴでデイビゴですねと拾ってくれていたのだ。ところが電子カルテにはそうした機能がないためピとビの違いで、そんな薬はないと呼び出せなかったのだ。これが一年前だったら、睡眠薬の勉強会や説明会そしてMRの訪問によって新薬デイビゴが耳に入っておりこうしたミスは起きなかったと思う。もちろん一番は視力低下(老眼)の影響がある。もっと言えば背後に脳力低下もありそうだ。
これは淡い黄色ながら、イエローカードだろう。少なからずショックを受けた。
しかし、老眼を棚に上げるとデイビゴよりもデイピゴの方が響きがよいと思う。老眼には濁点と半濁点の区別が難しい。自然響きのよい方の読み方を選んでしまう。