MR(Medical Representative、医療情報提供者)という仕事がある。これは私が医者になった半世紀前と今では仕事内容が大きく変わっている。昔はMRの仕事は接待が主で、処方権を持つ医者にいかに食い込んで自社製品を使って貰うかが彼らの腕の見せ所だったのだが、医師と患者の関係、情報開示、ネットの普及、女性進出、接待費の激減・・に依ってまともな医療情報提供が仕事になってきた。そして医薬の知識が必須となりMR試験というものも導入された。元々接待して貰うのがさほど好きでなかったせいもあるが、今の形態の方が格段に優れていると思う。
二年半前院長を辞してからMRとは会わなくなった。製薬会社協賛の勉強会にも出席しなくなった(コロナで激減)。新院長は院内の勉強会も止めてしまった。そうすると新しい薬の情報が不足する。勿論、新薬の情報は医学雑誌から入ってくるのだが、知識だけで使ってみようとはならない。自社製品売り込みのバイアスはあってもMRという人間に対面で情報を得ると使ってみようかなと気持ちになるのだ。人間の心理の不思議である種の信用や誘導がないと新しいものに食指が動かない。リモートワークには画面を通した対話会談はあるようだが、信頼信用の感覚ではどうなんだろう。