においには色々ある。先ず匂いと臭い。匂いはどちらかと言えば感じが良く心地良いもの、臭いはどうも不快で嫌なものを指す。最近よく見かけるのは加齢臭を消す広告だ。それほど加齢臭が問題になっているのだろうか、作られた話題の側面もありそうに思う。オフィスでバーコード頭で額に汗の・・課長が臭うと話題にされる女性には忍び寄るおばさん臭にお気を付けくださいと申し上げたい。
まあ、そうした実際のにおいでなく職業柄感じる癖態度傾向にも・・・臭などという表現がある。役人臭、教師臭など、その仕事に従事する人には申し訳ないが、仕事を離れてもは、あまり好ましいものとは受け取られていないということだろう。
あらゆる職種の人を診ている(上場企業の重役社長や高級官僚は居ない)。初診の時どんな仕事をしているか、直ぐには聞かない。時には重要な情報になるのだが、最初は先入観を持たず誰にでも同じように接したいというのが主な理由なのだが、上手に聞かないと不機嫌になる人も居るので後回しの方が良いという経験知もある。
・・・臭と言われるように、公務員や教師の方は診察半ばで、なんとなくとわかることが多かった。過去形にしたのは二十年というのはかなりの歳月で、最近は所謂役人臭や教師臭は薄らいできているからだ。勿論、長年勤めあげて退職後も県庁か市役所にお勤めでしたねと申し上げたくなる方もおられるのだが、昨今は勤めて四、五年の若い人や十数年の中堅に役人臭は薄らいでいる。まだ教師の方が、いくらか教師的なものを未だに漂わせているが、臭いから匂いへ変わりつつあるように思う。
尤も、仕事に就いてからでなく、女性教師風に言えば、学生の時からお役所向きだったわねという、元々の傾向は残っているかもしれない。
これはにおいとはちょっと違うのだが主に頭を使う仕事の人と主に身体を使う仕事の人は診察が終わる頃には鑑別が付くことが多い。
大人の症状の訴えにはさまざまな修飾があるから、いつの間にかいろいろ細かく観察する癖が付いてしまった。私も内科医臭を漂わせているだろうか?