駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

七夕を過ぎて

2018年07月12日 | 人生

 

 過ぐる土曜日は七夕だった。今年は生憎の雨と言うより豪雨で、彦星と織姫の逢瀬は成らなかったようだ。たった年に一度の逢瀬が雨で流れては辛かろうと思うのだが、多分地球のどこかには星の見える七月七日もあっただろう。それに日月の感覚では一年なんぞほんの一瞬、何十万年も続くお付き合い、年に一度が二年三年に一度となっても、さほど間遠には感じられないかもしれない。

 十七、八年前まではいい年をして、七夕には笹の葉に願い事を書いた短冊を括りつけていた。不思議なことに願いが叶うことが多かった。それがあまりに酷い目にあって、願い事など虚しいものと止めてしまった。ご利益志向などと蔑むこともないのだろうが、はたと手が止まった。

 今は不合理不条理の世界にあって、人が抱く願いは儚くも尊いものかもしれないと思いなしているが、夏祭りも七夕も遠くに感じられるようになった。中学生の時読んだ芥川のトロッコに少年の頃の思い出が色褪せてゆくと書いてあった。そんなことはないだろう、何だか寂しいと感じたのを思い出す。凡人ではあるが芥川の倍以上生きて、少年の記憶がセピア色に変わるのは致し方ないと実感している。

 それでも、もし昔懐かしいアセチレンガスの臭いを嗅ぐことができれば、きっと鮮やかに十円玉を握りしめて出かけた水薬師や天神様の祭りの思い出が蘇るだろう。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 確度の高い予報がなぜ生かさ... | トップ | 日本は病気のようだ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アセチレンガス (黒幕子)
2018-07-12 11:00:49
 夏祭りだけでなく私の育った近くのお寺で毎月8日は夜店の出る日でした。綿菓子 ハッカパイプ 夏は金魚すくいが大好きでした。あのアセチレンガスの匂いは独特ですね。嫌でしたけど懐かしいです。
返信する
そうでしたか (arz2bee)
2018-07-12 15:44:56
毎月の夜店はありませんでしたが、年五数回は夜店の出る祭りや催しがあったと記憶します。綿菓子は好きでしたが、金魚すくいは下手で二三回やったあとは見物専門でした。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

人生」カテゴリの最新記事