駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

アップルパイの一切れ

2008年08月20日 | 世の中
 アメリカ北部のルート**沿いのレストランには大抵デザートにアップルパイがある。何度か食べてみた。素朴な味で最初の数口はおいしいが、かなりのボリュームで食べ終わる頃にはちょっと持て余すことが多かった。このアップルパイ、北中部アメリカでは単なる焼き菓子以上の存在で、帰郷した謹厳な男が相好を崩して手づかみで食らいつくようなイメージがある。レシペから纏わる話まで書けば立派にアメリカを語る本になるだろう。
 素人の私にも分かる経済の例え話にパイの分け前理論がある。労働者の収入を一切れのパイに例え、分け前を増やすには八切りのパイを六切りにするよりも、八つ切りのままでパイそのものを大きくする方が、現実的で実現しやすい、というような話だったと思う。これは人間通?の町医者には非常にわかりやすい。というのは極めて粗く云えば人間は欲望というエネルギーで動いており、相応の見返りが無いと力を出さないので、生産性を上げる有能な者はそれなりに遇した方が、結局みんなが潤うというわけだ。現実にはうまくゆかなかったコルホーズなどを見れば成る程と思わせる理論だが、有能と云うより狡賢い輩も大きな一切れを頬張っているようで、物事は簡単ではない。
 とまれ、この頃どうも際限なくパイを大きくするのは問題があるのがわかってきた。大きくなると不味くなるだけでなく毒性が出てくるのである。それとパイなど食べたことの無い人々まで俺にも一口と手を出してくるようになった。どうもこの理論は破綻を来していると素人目には見える。ではどう説明するか、どうすればよいかは皆目分からないが、人間を読み込んだ理論や方策でないと駄目だと町医者は診ている。
 もっともこの人間という存在は非線形どころか、魂の持ち主で誠に理不尽ときているから、読み込むのは容易ではなかろう。

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