駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

自律的に発生する規律

2012年08月26日 | 小験

    

 当医院は従業員数8名(常勤4名、パート4名)の典型的な零細企業である。医学部では企業経営のノウハウは全く教えない。総合病院の部長から思うところがあり、突然個人医院の経営者になったのだが、診療以外の能力はゼロに等しく、性格的にも無愛想で協調性に乏しく、医局の先輩は大丈夫かなと心配していたらしい。

 それでも、初年度こそ赤字であったが、二年目からは徐々に患者数が増加し、住民に支持され安定した医院経営が出来てきている。実は経営と言っても、私は診察や検査料金がいくらかさえ知らず(薬価はある程度分かっている)、診療オンリーの院長で保険請求は事務に任せっきりでやっている。給与と休診日だけは私が決めているが、あとは月一回のミーティングで問題点をみんなで話し合って対策を講じている。

 勿論、経済的には順調でも職員間のトラブルは時々あり、辞めていただいた方も居る。職員間の不協和音はストレスで辛いのだが、なんというかいつの間にか暗黙のルールが出来上がり、この十年は時々さざ波が立つ程度で楽しくやれている。

 就業規則はあるが、それは雛形を成文化しただけの型通りのもので、それを参照して話し合ったことはなく、日常の細かい就業作法は自然発生的に出来てきた。それは以外に従業員に甘くなく結構厳しいきちんとしたもので不思議な気がする。どうも、見ていると厳しめの方が彼女達は働きやすいらしい。それとこれは本当に感謝しているのだが、院長を大事にしてくれるようになった。これは私が歳を取ったからというのでなく、そうすると組織が円満円滑に動くと感じ取っているためのように思う。

 

 

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羽生強し

2012年08月25日 | 趣味

        

 羽生王位が藤井九段の挑戦を一蹴した。四勝一敗の数字は圧勝と言ってよく、向こうが透けて見える薄い紙一重でも歴然とした差を物語る。

 藤井はこの数年成績が振るわず一流棋士とは呼びにくい状況にあったが、最近は王位戦の挑戦者にも名乗り出たし、NHKの将棋講座講師にも採用され、復活の兆しがあった。羽生には大山的な芽を摘むような深謀はないと思うが、今回の勝負は歴然とした力の差を見せつけるもので藤井には相当こたえたと思う。羽生の一敗は藤井には悪いが、羽生が実験的に藤井の作戦に嵌ってみた要素があったと思う。あとは全て接戦のようで、羽生が間合いを見切っており、藤井の繰り出すアッパーカットや渾身の袈裟切り裾払い、全て数ミリ届かず空を切らされた。

 まあ、こんなことをヘボが書いては噴飯ものだが、羽生が最後まで読んでいたのではなく、見極めていたのだろうと思う。より遠くがより先が見える者が強く、勝者となるのだろう。

 

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助け舟?

2012年08月24日 | 政治経済

    

 消費税増税と原発再稼働という庶民感覚を逆なでする強行突破の逆風の中に竹島という思わぬ横風が吹いてきた。どうもこれが船の針路を阻むのではなく、助けるような雲行きになってきている。

 野田首相は既得権寄りの自民党よりも保守的な鎧が透けて見え、やることには賛同しがたいところが多いが、やりぬく胆力には一目置かねばならないと思うようになった。結局、善悪優劣は比較の問題で、今政界を見渡して彼に匹敵する政治的能力がある人が居ないように見える。

 お人好し非力の谷垣さんは野田さんの掻き立てた泥水で目を眩まされ、吠えるスピッツ石原幹事長はやかましいばかり、みんなの党の渡辺代表はとても身内の筋悪を抑えられそうになく、民主党内には野田さん以上の人は居ない。

  民主党の影の実力者を自認する?仙石氏も操っているようで、気が付けば糸は切れているのではないか。評価し過ぎかもしれないが、泥鰌したたかの印象がある。

 枠外の橋下と小沢にはマスコミが常軌を逸した畑の栄養を浴びせかけ、女性と小人の支持を阻害するだろう。

 常識外れ児戯を繰り出すイミョンバクは立ち往生に見えた泥鰌が息を吹き返す塩を送ってくれたのかもしれない。

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夏休みを休もう

2012年08月23日 | 身辺記

    

 夏休みというかお盆休みを三日間取った。休み明けは受診患者数が四、五日の間二割増しになる。これをこなすのが最近は骨になってきた。昨日は水曜で半日、患者数は通常に戻ったのだが、午後は介護保険の審査会と歯科受診で、帰宅が五時過ぎになってしまった。ゆっくりしたいが、延び延びになっていた机の周りの整理をした。日本医事新報も内科学会も日本医師会も内科臨床雑誌・・・も夏休みを取っていないようで、この二週間ばかりの間に届いたのが山積みになっていた。精読するわけではないが、一通り目を通さねばならない。こちらの遅れを挽回するのもしんどくなった。

 晴れれば農作業をし、雨が降れば読書をして過ごす悠々自適の晴耕雨読のような生活は望むべくもないが、せめて午前中に十数人の患者を診て、午後は一人か二人を往診して、それでお仕舞いの医業で暮らせたらと思う。現在はその五倍の患者さんを診て、審査や書類書きまでしている。おまけに脳力も体力も落ちてきているから、どうしても余裕がなくなってしまう。

 休んだ付けが回ってこないように、国中丸ごと夏休みにして呉れい。

 

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人身売買の心地

2012年08月22日 | 医療

    

 三か月待って看護師さんの補充が付かないので、ついに看護師紹介業者の電話に出てしまった。というのは当院を希望している看護師が居ると言っていますと取り次がれたからだ。ついそれはと思ったのが運のつき、背に腹は代えられず、年収二十%の紹介料を支払うことにして仮契約を結んだ。

 面接に現れた看護師に聞くと、ハローワークで当院が良さそうだと思ったが、ハローワークのミスで転勤あり(あるわけがない)となっていたので、二の足を踏んだという。ネットで親切そうな看護師紹介勧誘があったので、どんなものかなと登録したら、毎日電話攻勢でどこか思い当たる就職先はないかとしつこく聞いてきたのでつい当院を挙げたという。

 彼女は紹介業者が20%もの紹介料を取ることは知らなかったし、就職祝い金も聞いていないという。正直にこれこれの金額を業者に支払うことになると言うと「それって、人身売買じゃないですか」。・・・。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」。と頭を下げた。なんだか、狐に抓まれたような話だ。

 生き馬の眼を抜く世の中、僅か二十回ほどの電話で何十万円かの稼ぎがあるわけだ。恐らく紹介業者の一室では数人の女性が一人当たり数十人の登録看護師を担当し毎日電話を掛けまくっているのだろう。

 いやはや、釈然としないが、大いにあり得ることなのかもしれない。

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