あしたのブログ!趣味や日々の報告ページ

このページを活用し趣味や日々のことなどを中心に報告しています。

ホレス・シルヴァーのピース

2024-10-15 | JAZZ
今年のノーベル平和賞は、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に決まりました。
この朗報を聞いて、ホレス・シルヴァーのPeaceを聴きました。

「BLOWIN' THE BLUES AWAY」 Blue Note BLP 4017

Blue Mitchell (tp) Junior Cook (ts) Horace Silver (p)
Eugene Taylor (b)  Louis Hayes (ds)
録音 1959年8月30日

このアルバムでの演奏が初演となる「Peace」は3曲目に収録されていて、前半はブルー・ミッチェルのトランペットがテーマとアドリブで先発し、後半はその流れを継いでホレス・シルヴァーに渡されます。
シルバーは、後半のソロで倍テンポで変化を付けています。
ブルー・ミッチェル、ジュニア・クックを従えたホレス・シルバー・クインテットは7枚のアルバムを残していて、これはその中の2枚目に当たりますが、タイトル曲や「Sister Sadie」といった佳曲も含まれていることから良く聴く1枚です。


もう1枚はチコ・フリーマン・カルテットによるバラード集で、オリジナル盤はIndia Navigationからのものですが、70年代に流行ったロフト・ジャズ関連のアルバムの大半を処分してしまったことから、最近高録音盤として再発されたことを機会に改めて購入しました。
2曲目に収録されている「Peace」は、ゆったりしたテンポの中で、膨よかなテナーの音が素晴らしいし、セシル・マクビーのベースがそれをサポートして良い雰囲気を作っていて、1曲目の「Autumn In New York」から3曲目の「A Child Is Born」の演奏を聴いていると、本当に「Peace」を感じることができます。

「SPIRIT SENSITIVE」 Analogue Productions APJ 151

Chico Freeman (ts) John Hicks (p) Cecil Mcbee (b) Billy Hart (ds)
録音 1978年10月

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JAZZ IN JAPAN

2024-10-13 | JAZZ
続いても秋吉敏子を冠したアルバムで、こちらもレナード・フェザーが監修しています。

「JAZZ IN JAPAN」 VEE JAY VJS-2505
  
1. Kisarazu Jinku
2. Lament
3. The Shout
4. Israel
5. Land of Peace
6. Walkin'
7. Santa Barbara
秋吉敏子 (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 
宮沢昭 (ts) 松本英彦 (ts) 岡崎広志 (as) 鈴木重男 (as) 原田忠幸 (bs)
森寿男 (tp) 竹村茂 (tp) 伏見哲夫 (tp) 日野皓正 (tp)
鈴木弘 (tb) 松本文彦 (tb) 片岡輝彦 (tb) 青木武 (tb)
録音 1964年7月16日

このアルバムは、第一回世界ジャズ・フェスティヴァルで来日した秋吉敏子、ポール・チェンバース、ジミー・コブを筆頭に、日本のトップ・ミュージシャンを集めてTBS(東京放送)のスタジオで録音されたもので、石原康行さんもディレクターとして参加しています。
最初の東京オリンピックが開催された1964年の7月10日~16日にかけてA、B、Cのグループに分かれて全国で演奏会が開催され、この時はマイルス・デイビス(クインテット)の初来日でもありました。

アルバム・ジャケットの中には、各曲のアレンジャーとソリストが書かれており、これを読みながら各々の演奏を聴きました。
1曲目の木更津甚句は秋吉敏子のアレンジによるもので、秋吉のピアノ・ソロによるテーマに続いてピアノ・トリオになりますが、5/4拍子による独特のリズム感の中で鈴木重男のアルト・サックスが大きくフューチャーされており、後半はオーケストラによる壮大な演奏へと続きフィニッシュとなります。
J.J.Johnsonのオリジナルである「Lament」はピアノ・トリオによる演奏で、遅めのテンポで情緒的な秋吉のソロが堪能できるし、ポール・チェンバースのロング・ソロも聴くことができます。
12小節のブルース「The Shout」は、チャーリー・マリアーノの作品で、最初はオーケストラをバックに原田忠幸のバリトン・サックスがフューチャーされますが、後半はバウンスするリズムに乗ってピアノ、ドラムスがソロ取った後、テーマに戻っています。

「Israel」は、少し早めのテンポでオーケストラとピアノ・トリオが交互に登場してくる演奏で、オークストラの部分では鈴木重男のアルト・サックスがソロを取りますが、秋吉とポール・チェンバースのソロが素晴らしいです。
「Land of Peace」はレナード・フェザー自身が提供している12小節のブルースで、ライナー・ノートによるとハロルド・ランドの為に書いた曲だそうですが、ここではオーケストラをバックに宮沢昭、松本英彦が共にテナー・サックスで、またポール・チェンバース、秋吉敏子が順次ソロを取りますが、秋吉はソロの後半になると演奏に併せて声を発していることからも、自身の演奏に対して悦に入っているように思います。
「 Walkin'」は、オーケストレーションによるテーマの後、宮沢昭(ts)、松本英彦(ss)、秋吉敏子とソロが続いた後、後半ではピアノを始めとしたリズム陣3人による4小節交換もあり、聴きごたえ十分の演奏となっています。
アップ・テンポで演奏される「Santa Barbara」は、オーケストラによるテーマ演奏を経て、伏見哲夫(tp)以下、次々とソリストが登場するという展開で、最終曲に相応しい演奏となっています。

このアルバムは、ピアノ・トリオとソロを取る奏者、並びにオーケストラが上手くバランスして収録されており、ポール・チェンバースのベースの響き音が素晴らしいです。
また、若き日の日野皓正が1,3,4,7で参加しているようですが、最後の曲でソロが披露されている様に思われます。

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秋吉敏子の想い出のレコード

2024-10-06 | JAZZ
1970年頃、渋谷日本楽器店が正月明けにバーゲンを開催していた時期があり、廃盤も同時に店頭に出ていました。
当時のオリジナル盤は高価で中々手が出しにくかったのですが、このレコードはその時にやっとの思いで購入したもので、これまで大事に聴き続けてきました。

「United Notions」 MetroJazz E1001
  
1. Broadway
2. Sukiyaki
3. Swingin' Till the Girls Come Home
4. United Notions
5. Civilized Folk
6. Strike Up the Band
7. Jane
秋吉敏子 (p) Nat Adderley (cor) Doc Severinsen (tp)  Bobby Jaspar (ts, fl, bs)
Rolf Kühn (as, cl) René Thomas (g) John Drew (b) Bert Dale (ds)
録音 1958年6月13日

このアルバムは、ジャズ評論家のレナード・フェザーの企画によって、秋吉敏子がボストンのバークリー音楽院に在籍していた時代に各国の若手を集めて録音されたもので、サブタイトルは「TOSHIKO and her INTERNATIONAL JAZZ SEXTET」となっていますが、彼女が演奏全体を支配してる訳では無く、テーマ部分のアレンジを除けば各人がソロを受け渡していく方法で演奏が進行しています。

冒頭に秋吉を筆頭に参加者自身による自己紹介が収録されていて、作詞・作曲ともにヘンリー・ウッド、テディ・マクレエ、ビル・ブリットの共作による「Broadway」から演奏がスタートします。
彼女はアルバム・タイトルでもある「United Notions」を提供していて、テーマ・アレンジの後はルネ・トーマス (g) ⇒ ボビー・ジャスパー(bs) ⇒ ロルフ・キューン (cl) ⇒ ダグ・スベリンセン (tp) ⇒ ジョン・ドリュー (b) ⇒ 秋吉 (p)の順でソロが受け渡されますが、強いタッチでリズミックに鍵盤を叩く彼女の演奏が印象的な1曲となっています。
彼女は、この曲の他に「Strike Up the Band」でロング・ソロを弾いていますが、いずれの曲も各人のソロは充実していて、聞き応えのある演奏集となっています。

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ジュニア・マンスの最初のリーダー・アルバム

2024-09-15 | JAZZ
ソウルフルでファンキーなピアニストであるジュニア・マンスには愛聴盤が幾つかあり、過去にジャズランド・レーベルの中からSOULFUL PIANOを取り上げています。
今回掲載したのもその中の1枚で、サイドメンを含めて100枚を超えるレコーディングの中での初リーダー作品です。

「JUNIOR」 Verve MGV - 8319
  
1. A Smooth One
2. Miss Jackie's Delight
3. Whisper Not
4. Love For Sale
5. Lilacs In The Rain
6. Small Fly
7. Jubilation
8. Birk's Works
9. Blues For Beverlee
10. Junior's Tune
Junior Mance (p) Ray Brown (b) Lex Humphries (ds)
録音 1959年4月9日

収録されている各曲を聴いてみると、
2小節毎のリフで構成されている「A Smooth One」は、アタックが鋭い32小節のテーマから両手をフルに使ってのプレイとなり、後半はダイナミックに演奏を盛り上げています。
2曲目の「Miss Jackie's Delight」は、ベーシストであるジーン・ライトの作曲だけあって、レイ・ブラウンの強靱なベース・ワークが演奏を仕切っていて、続く「Whisper Not」においても、レイ・ブラウンの4つを刻む安定したベース・ランニングが力強く、ピアノはそれに乗って小気味良いプレイを聴かせてくれます。
アップ・テンポによる「Love For Sale」は、レックス・ハンフリーズの合いの手を入れるブラシのビートが効果を上げており、バラードの「 Lilacs In The Rain」は、高音部を中心としたプレイの中で装飾音やトレモロを使って美しく仕上げています。

レコードのB面に移って、「Small Fly」は、粋なメロディをスイングする演奏が心地よく、続くジュニア・マンスのオリジナルである「Jubiration」はゴスペル調の曲で、ブラウンのベースが演奏をきちっと締めて上手く纏めています。
続くガレスピーの「Birk's Works」もまたファンキーな曲ですが、ここでは豪快にスイングするピアノ・プレイが聞きものです。
スロー・テンポで演奏される「Blues For Beverlee」は、ジュニア・マンスの愛妻の名前を付けたブルースで、レイ・ブラウンの3コーラスに渡るベース・ソロが素晴らしく、最終曲の「Junior's Tune」は、エンディングに相応しくミディアム・テンポで小気味よく、さらっと仕上げています。

このアルバムは、ジュニア・マンスのソウルフルで且つブルース・フィーリングを漂わせながらの演奏集ですが、泥臭くなく洗練されていて聴いた後も清々しさが残ります。
そして、ここでは正確で強靭なベース・プレイで演奏をがっちりと支えているレイ・ブラウンと、随所でアクセントを付けながら演奏全体を引き締めているレックス・ハンフリーのドラミングが印象に残ります。

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1972年のビル・エヴァンス・トリオ

2024-09-08 | JAZZ
これはオランダでのビル・エヴァンス・トリオによるライブ録音ですが、1972年のエヴァンスにはオフィシャルの録音が無く、この音源についてもこれまではCDでしか聴くことができませんでした。
それが今年に入って近日中に発売されると発表があったものの、その後に発売時期未定のアナウンスもありましたが、ここにきてアナログ専門レーベルから発売されました。

「MOMENTUM」 Music On Vinyl MOVLP 3742
  
Disc 1
1. Re: Person I Knew
2. Elsa
3. Turn Out The Stars
4. Gloria’s Step
5. Emily
6. Quiet Now
Disc 2
1. My Romance
2. Sugar Plum
3. The Two Lonely People
4. Who Can I Turn To
5. What Are You Doing The Rest Of Your Life
6. Nardis
Bill Evans (p) Eddie Gomez (b) Marty Morell (ds)
録音 1972年2月4日 

これはステレオ録音で、ビル・エヴァンスが右チャンネル、エディ・ゴメスが左チャンネルに位置し、マーティ・モレルは中央後方に定位していて、エヴァンスとゴメスのデュオにモレルがおまけで加わっているような音採りとなっていて、エヴァンスのピアノはクリアで冴え渡っていて、録音バランスのせいかゴメスのべースがやけに際立って聞こえます。

1曲目の「Re: Person I Knew」は、リヴァーサイド盤の「Moonbeams」での演奏が一番好きですが、拍手に続いて静かにスタートするこのアルバムの演奏も良く、相方を務めるエディ・ゴメスは、リズムを刻まずピアノに対峙して会話するが如くプレイしていてこの美しいメロディの曲が素晴らしい仕上がりとなっています。
同じく、スコット・ラファロの「Gloria’s Step」も、正にゴメスが幅を利かせたソロを展開していて、まるでラファロに対抗しているような張り切りようのプレイを展開しており、マーティ・モレルのドラミングもソロも冴え渡っています。
エヴァンスのナンバーとしては過去から数多くの名演を残している「My Romance」は、テーマの前にピアノによる導入部があり、インテンポに入ってテーマを演奏した後は、マーティ・モレルのブラシを中心にしたドラム・ソロとエディ・ゴメスのベース・ソロが3度に渡って交互に続きますが、その後のエヴァンスのソロを挟んで再びドラム・ソロとなることから、この曲はマーティ・モレルが主役となっています。
「Sugar Plum」では、エヴァンスの高音部を生かしたソロと、それに対応したゴメスのスケールを中心とした音取りのバランスが見事で、後半でのベース・ソロも前の雰囲気を踏襲しています。
「The Two Lonely People」の演奏の主役はエディ・ゴメスで、ピチカットによる流れるようなスムースのソロが見事で、続く「Who Can I Turn To」も、ゴメスのソロ・スペースが大きく与えられていますが、後半では比較的早いテンポの中でエバンスがそれに負けじと張り切ったソロで応えています。
その中で「Emily」や「What Are You Doing The Rest Of Your Life」は、エヴァンスの端正なソロを聴くことができます。
最終曲の「Nardis」では、リヴァーサイドの名盤である「Explorations」でのスコット・ラファロの演奏を意識したかのようなゴメスのプレイが展開されますが、惜しむらくは、ゴメスのロング・ソロが終わって、エヴァンスに引き継いで、演奏が最高潮に達したところでフェイドアウトしてしまっているところで、恐らく録音テープの残量がそこまでだったのかと思われます。


なお、上記のオランダでのライブの2日後(2月6日)にはパリでのライブ盤(2枚)があり、こちらはモノラルによる好録音で、3者のバランスも良く、エディ・ゴメスのベースも強調されることなく、自然な音として収録されています。
冒頭に司会者のメンバー紹介があり、上記の蘭録音と同じく「Re:Person I Knew」でスタートします。

「LIVE IN PARIS 1972 Vol.1 & 2」 WOTRE MUSIC FC 107 & FC114
 

そしてこの年は、同じパリで12月17日のライブ盤も残されています。

「LIVE IN PARIS 1972 Vol.3」 WOTRE MUSIC FC 125


パリ録音の3枚のアルバムには、冒頭掲載のライブで演奏された12曲のうち「Naedis」を除く11曲が網羅されており、同じメンバーでの演奏を比較して聞いてみる楽しさもあります。

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Live From The Moonlight

2024-08-18 | JAZZ
チェット・ベイカーの同じ1985年録音盤からの2枚組レコードです。

「Live From The Moonlight」 Philology 214 W 10/11

1. Polka Dots And Moonbeams
2. Night Bird
3. Estate
4. Dee's Dilemma
5. How Deep Is The Ocean
6. My Foolish Heart
7. My Funny Valentine
Chet Baker (tp, vo) Michel Grailler (p) Massimo Moriconi (b)
録音 1985年11月24日

これは、伊マチェラータのムーンライト・クラブでのライブ録音で、過去にチェット・ベイカーのアルバムを取り上げた際に、札幌在住のデューク・Mさんから「良い内容なので聴いて見たら」と紹介されたことから探していたもので、CDはレコードより曲数が多く入っているのですが、たまたまレコードを入手出来たことからここで取り上げてみました。

ライブでの演奏とあって、全ての曲が10分以上の演奏となっていますが、少しもダレることなく聴き通すことができます。
収録されている7曲の内、6曲が良く知られた曲で、「Estate」のような珍しい曲も取り上げていて、美しいメロディをイマジネーションたっぷりに、しかも淡々とラッパを吹いており、続くミッシェル・グレイラーのピアノと、マッシモ・モリコーニのベース・ソロもチェットのソロの雰囲気を保ったまま17分を超える演奏が続きます。
この日のチェットは、コンディションも良さそうで、エンリコ・ピエラヌンツイの「Night Bird」を始めとして、ジミー・ヒースの「Dee's Dilemma」、それにスタンダードの「How Deep Is The Ocean」等は、ラッパの鳴りも良く、流れるようなスムースなソロを披露しています。

チェットのヴォーカルは「My Foolish Heart」と「My Funny Valentine」の2曲で聴くことが出来ますが、演奏主体の内容となっていることから歌の出番は少なく、オン・マイクでブレスも生々しく聞こえます。
「My Foolish Heart」の演奏終了後にはチェットがメンバー紹介する声も入っていて、「My Funny Valentine」は歌の途中で収録が終わってしまうという残念なところもありますが、充実した素晴らしい内容でした。

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チェット・ベイカーのデュオ・ライブ

2024-08-11 | JAZZ
1985年のデュオ・ライブを収録したチェット・ベイカーのアルバムが、アナログ・レコードで発売されました。

「There'll Never Be Another You」 Timeless MOVLP 3743

1. Beatrice
2. There’ll Never Be Another You
3. Leaving
4. My Foolish Heart
Chet Baker (tp, vo, p) Philip Catherrine (g)
録音 1985年10月25日

1988年に亡くなったチェット・ベイカーですが、この年の演奏は数多くの音源が残っていて、このアルバムもその中の1枚です。
ここではギタリストのフィリップ・キャサリンを相手にトランペットと歌で好演しており、一部でチェットがピアノを弾く(但し片手でのシングルトーンのようですが)おまけもついています。
また、ライブ(クロアチア共和国の首都、ザグレブ)ということから各曲の演奏時間も長いですが、キャサリンのスリルあるギター演奏もあって楽しめる内容となっています。

チェット・ベイカーのインスト・バージョンの2曲について、
サム・リバースが愛妻に捧げて書いた「Beatrice」は、魅力的なメロディの曲で、チェットは冒頭でミス・ストーンがあるも、しっかりした音でテーマを吹き、後に続くキャサリンのシングル・トーンによるアドリブが素晴らしく、続いてのチェットの弾くピアノに対してキャサリンはギターのベースラインで追従しており、最後はチェットがパラパラとスケールを吹いてテーマに戻っています。
「Leaving」は、チェットとキャサリンの対話形式の演奏からスタートし、最初はゆったりしたテンポで演奏が進みますが、徐々にテンポが速くなった後、キャサリンの単独ソロになると再びゆったりしたテンポに戻り、フリー・リズムの中で自由奔放なソロを披露し、更に後半になるとチェットがピアノで参加してきて、ここでも2人の対話形式のソロが展開されています。

一方のヴォーカル・バージョンについて、
「There’ll Never Be Another You」は、冒頭から歌とスキャットで快調に走るチェットのバックで、4小節に対して8つを刻みながらコードを使った伴奏が粋でかっこよく、後半は2人のいずれもスケールをベースにしたアドリブで好演しています。
「My Foolish Heart」は、冒頭からチェットの歌で、続いてラッパで弱々しくメロディを吹くという何とも切ない演奏の後は、キャサリンのアルペジオも交えたギター・ソロへと続き、チェットのピアノ・プレイの後ろではサックスの音も聞こえて来て、一時は3人の演奏となっています。

全体を通しての感想ですが、チェット・ベイカーが弾くピアノが付け足しの様に聞こえる反面、フィリップ・キャサリンの超絶ギターのプレイが大いに楽しめる内容となっています。
チェット・ベイカーの晩年において、1985年の録音アルバムは好演しているものが多く、これもその中の1枚です。

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トーマス・スタンコの新譜

2024-07-28 | JAZZ
ポーランドのトランペッターであるトーマス・スタンコのECMからの新しいアルバムを聴きました。
新譜とはいえ、彼は2018年7月に享年76で他界しており、凡そ20年前の独ミュンヘンでのライブ音源です。

「September Night」 ECM 2650
  
1. Hermento’s Mood
2. Song For Sarah
3. Euforia
4. Elegant Piece
5. Kaetano
6. Theatrical
Tomasz Stanko (tp) Marcin Wasilewski (p) Slawomir Kurkiewicz (b) Michal Miskiewicz (ds)
録音 2004年9月9日

トーマス・スタンコのアルバムは、過去に70年代のトーマス・スタンコ・カルテットとして取り上げていて、この時は全てピアノ・レスでしたが、今回はピアニストであるマルチン・ボシレフスキ・トリオとのセッションです。
トーマス・スタンコのトランペットの音色は、アート・ファーマーのようにソフトでありながらも独特の音色を持っており、それは「Song For Sarah」のような美しいバラード演奏に表われています。
また、ピアニストのマルチン・ボシレフスキは、いかにもヨーロッパ的な音色であり、スタンコのラッパに上手く溶け合っています。
その中で、「Euforia」はベースのソロにドラムスが絡むところからスタートし、このアルバムの中では4人による一番力強いプレイで、スタンコらしさが良く出た演奏となっています。

なお、このアルバムのエンジニアは、ステファーノ・アメリオで、ECMのサウンドが彼の手によってどのように響くかも興味がありましたが、以前掲載したアレッサンドロ・ガラティの新譜を踏襲している音作りのように感じました。
しかし、このレコードの唯一の不満は、片面の収録時間が21~25分あるにもかかわらず、音溝の刻まれていないデッドワックス部が幅広く取られていることから、もう少し盤面を広く使ってカッティングしていたら、より素晴らしい音が再生出来たのではと思わざるを得ません。

 


このアルバムを聴いた後、手元にあったマルチン・ボシレフスキ・トリオ(シンプル・アコースティック・トリオ)の2枚のCDも久しぶりに聴き直してみました。

「Habanera」(MW712-2)    「Simple Acoustic Trio」(Z091)
 

「Habanera」は1999年9月の録音ですが、当時は日本でヨーロッパのジャズ・ピアノ・トリオが流行っていた時期でした。
また、「Simple Acoustic Trio」は、1996年にスペインで開催された「20th GETXO INTERNATIONAL JAZZ FESTIVAL」の模様を収録しており、2枚のCDには「Habanera Excentrica」が共に入っています。
よって、改めてこの曲の演奏を比較してみましたが、ハバネラの方はベースとドラムスの2人による眺めの演奏があり、幻想的なイントロからスタートしており、ライブの方は、ベースがまるでギターのような音色でハバネラのリズムを奏で、それに乗ってピアノが力強いメロディを奏でていました。

そして、ハバネラの方はトーマス・スタンコの作曲による「Green Sky」が美しいバラードで、全曲を通して美メロによるヨーロッパのジャスを感じさせていました。
一方のライブの方は、同じポーランド出身の医者で、作曲も行い更にジャズ・ピアニストでもあるクシシュトフ・コメダの曲を3曲取り上げていて演奏にも現代的な息吹を吹き込んでおり、また、カーラ・ブレイの「King Korn」では、ゴツゴツした特徴あるメロディをベースと対話しながらの演奏していて、これも一聴の価値ある内容となっていました。

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ソニー・ロリンズ・トリオ(1967年)

2024-07-14 | JAZZ
ソニー・ロリンズの1967年(5月)の貴重な音源、
IMPULS時代の最終アルバムである「East Broadway Run Down」(1966年)と、Milestoneの「Next Album」(1972年)の間を埋める演奏集で、このアルバムは2020年秋のBLACK FRIDAYで発売されたものですが、ドラマーのハン・ベニンクをリサーチしていたところ、これが目に留まったので、聴いて見たいと思い探してみました。
レコードは3枚組で、同じメンバーによるピアノレス・トリオからなり、オランダでのスタジオ録音とライブ・レコーディングが収録されています。

「ROLLINS IN HOLLAND」KKJ 10002
  
  
1. Blue Room
2. Four
3. Love Walked In
4. Tune Up
Sonny Rollins (ts) Ruud Jacobs (b) Han Bennink (ds)
スタジオ録音 1967年5月5日

1. Sonnymoon for Two
2. Love Walked In
3. Three Little Words
4. They Can't Take That Away From Me
5. Sonnymoon for Two
6. On Green Dolphin Street
7. There Will Never Be Another You
8. Love Walked In
9. Four
Sonny Rollins (ts) Ruud Jacobs (b) Han Bennink (ds)
ライブ録音 1967年5月3日

このアルバムのレーベルは、多くのビル・エヴァンスの発掘音源でも知られているResonanseで、オランダ出身の2人のリズム陣を従えてのもので、演奏は勿論のこと、スタジオでステレオ収録されている最初の4曲が素晴らしいです。
というのも、ロリンズを中央に、左寄りにベース、右寄りにドラムスが配置されていて、豪快で膨よかなロリンズのサックス音がしっかり収録されているからで、往年のロリンズは本当に素晴らしく、このスタジオ録音はその再現演奏となっています。

そのスタジオ録音ですが、ゆったりとしたテンポで、一聴してロリンズと分かるサックス音と、ハン・ベニンクのブラッシュ・ワークが素晴らしい「Blue Room」の演奏からスタートします。
続いて、アップ・テンポでルード・ヤコブスのランニング・ベースが大きくフューチャーされる「Four」に移り、後半ではロリンズとベニンクの4バースを経てテーマに戻っています。
「Love Walked In」はミディアムで、朗々と歌い上げるロリンズの演奏をたっぷり聴くことが出来るし、「Four」は3人の夫々ソロ・スペースが割り当てられていて、特にベニンクはドラムスを駆使して力演しています。

一方のライブは全てモノラル録音で、スタジオ録音に比べて音質は落ちますが、こちらもロリンズのパフォーマンスは素晴らしく、彼のオリジナル曲の断片や、ナット・アダレィの「ワーク・ソング」などを織り交ぜながら、様々なフレーズが淀みなく湧き出てきています。
なお、このアルバムでドラマーを務めているハン・ベニンクは、1960年代後半以降、ヨーロッパの前衛シーンでの活動が注目を集めますが、この収録はその一歩手前の演奏で、これも貴重な一コマとなっています。


アルバムには、演奏時のフォトを多く含んだ英文解説と和訳の冊子が付いているので、フォトの3枚を掲載しましたが、これを眺めながらだと、この演奏集を更に興味深く聴くことができます。

   

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中本マリのライブに行ってきました。

2024-07-12 | JAZZ
昨夜(7月11日)、富士吉田市のジャズ・ハウス「ON LAVA」で開催された『中本マリと福井ともみ』のデュオ・ライブに行ってきました。
ライブの後、凡そ100㎞離れた自宅まで戻ったことから帰宅が遅くなったので、今日の掲載になりました。

  

開演は午後7時で、6時30分開場ということだったので、6時40分頃行ったところ、整理券は21番目で既に大勢のお客さんが席に着いていました。(開演時には、40名ほどになりました)
室内の壁には、中本マリのアルバムが6枚と、正面にはTBMの「マリ・ナカモトⅢ」が飾ってありました。
何か1つ飲食のオーダーをということで、車の運転があることからコーヒーとフライド・ポテトをオーダーしました。



当夜は2部構成で、各々7曲(後半はアンコールを入れて8曲)を披露してくれました。
歌い始める前に各々の曲目紹介もあったのですが、聞き取れない所もあったので全曲とはいきませんでしたが、メモした部分だけをピックアップしました。

第1部は、壁に掲載してあったアルバム「Love Touch」の最初に入っている追憶のテーマ「The Way We Were」からスタートしましたが、マイクとの間隔に微妙なズレがあったり、声出しも十分でなかったようで、レコーディングの歌に比べてまだまだという感じでした。
2曲目は「Give Me The Simple Life」で、この曲からは、ピアノと歌のマッチングも上手くいくように思えました。
3曲目は「Come Rain Or Come Shine」で、この歌の歌い方について説明があり、1音のみの同じ音程で続く曲なので歌詞に抑揚を付けて歌うのだそうで、最初の1コーラスは全くのフラットで、2コーラス目はその抑揚を付けてその差を披露してくれました。
4曲目は「Old Devil Moon」をラテン・リズムで、
5曲目は「You'd Be So Nice To Come Home To」を、少し遅いテンポによるパンチの効いた声で、
6曲目はブルースを、(曲目不明)
7曲目は、昨年6月に発売された自身のアルバム「Muse 1」から、「Don't Be Afraid Of Love」(愛を怖がらないで)を熱唱してくれました。

曲の間のトークの中で、40年前に八ヶ岳、南アルプス、富士山の見える小淵沢に家を建てて、4年前からそこに住んでいることや、デビュー当時から一緒にプレイしてきたベーシスト(米木康志)の病気療養への募金の呼びかけがありました。

凡そ20分の休憩を挟んで、第2部が始まりましたが、最初に歌ったのはホーギー・カーマイケルの「Georgia On My Mind」で、“Georgia”と歌い出した後、突然歌が止まり、マリさんが聴衆に向かって「この曲は“Georgia”と歌い出せば、“わぁー”と声が掛かるのに、ここで全く反応が無いのはどうしたことか」とアピールがあり、再びのトライでは聴衆を巻き込んで大いに盛り上がりました。
2曲目はキャロル・キングの「You've Got A Friend」(君の友だち)で、Georgiaの後だったことと、よく知られた曲でもあったことから、聴衆も声を出して歌ったりと、かなりの盛り上がりがありました。
3曲目は「Days Of Wine And Roses」(酒とバラの日々)で、最初のコーラスはゆったりとしたぺースで、ピアノも4小節毎におかずを入れる程度で、殆どアカペラ状態で気持ちよく歌い出していて、2コーラスからはイン・テンポになっての歌でした。
4曲目は、スティビー・ワンダーの「For Once In My Life」(たった一度の人生)で、
5曲目はブルースで、本来この曲は男性が歌った方が良いのだそうですが(曲目は不明)、かなりリキを入れての熱唱でした。
6曲目はポピュラーな曲でしたが、曲目が思い出せませんでした。
この曲を歌い終えたところで時刻は9時近くなり、「何か聴きたい曲はありますか」と、マリさんがアンコール前のリクエストをするというハプニングがあって候補は色々出ましたが、夏なのでボサノバを歌ってということから、急遽「Day By Day」をボサ・リズムで歌ってくれました。
最後は再びのアンコールとなった「All Of Me」を、大ハッスルした歌で、エンディングも決めて大いに盛り上がったところ終了となりました。

演奏中は、撮影、録音が禁止されていたので、演奏が終わった後のトークと記念撮影時に、何枚か写真を撮らせていただきました。




彼女には、2003年4月録音のスタンダードを中心に集めたデュオ・アルバムがありますが、それと比較すると今夜の歌は巧さと表現力が抜群に備わっていました。
そして、今年喜寿を迎えるのだそうで、ある先輩からジャズを50年やるとその後が本物になるといわれ、今が最も充実していると話しており、声は太くなりましたが相変わらずのハスキー・ヴォイスを至近距離で聴けたライブを大いに楽しんだ夜でした。


下の2枚のCDですが、
2003年4月の「NADECICO」は、今回と同じピアノ(3曲は中牟礼貞則のギター)を伴奏に歌っているデュオ・アルバムです。
また、2023年6月に発売され、自身のオリジナルを集めた最新アルバム「Muse 1」は、今回の会場で販売していたので、購入してサインをしていただきました。

 


[ 7月14日追記 ]
中本マリのライブ終了後に、ON LAVAのマスターからこのお店が掲載されている雑誌(JAZ.in 009)を紹介して頂きました。
帰り際でお客様でごった返していたので購入して読むことにしましたが、その本が先ほど自宅に届きました。

 

写真はモノクロで少し暗いですが、3ページに渡ってこのお店の様々な情報が掲載されています。
興味のある方は、是非ご覧ください。

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