第60回はドン・フリードマンの「サークル・ワルツ」です。
幼少時代から音楽好きであったフリードマンは、両親が望んでいたコンサート・ピアニストにはならず、1956年、21歳でウエストコーストのジャズの世界に入っています。
当時、ウエストで活躍していた多くの著名なミュージシャンとの共演を果たした後、58年にニューヨークへ進出、ここでもドナルド・バード~ペッパー・アダムスのバンドに在籍したり、チャールズ・ミンガスやスコット・ラファロと共演しており、中間派からフリー・ジャズまで幅広い活動を行っていました。
しかし、ジャズだけでは生活できず、カクテル・ラウンジやダンス・バンドでの演奏も行いながら、作曲法をディヴィッド・サイモンについて学んでいます。
彼は親日家の一人でもあり、64年のハービー・マンのグループの一員として初来日、その後も訪日し、レコーディングも行なっています。
今回愛聴盤に挙げたアルバムは、リヴァーサイド・レーベルに吹き込んだ4作の中の2番目のもので、彼の代表作でもあります。
「CIRCLE WALTZ」 RIVERSIDE RLP 431
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1. CIRCLE WALTZ
2. SEA’S BREEZE
3. I HEAE A RHAPSODY
4. IN YOUR OWN SWEET WAY
5. LOVES PARTING
6. SO IN LOVE
7. MODES PIVOTING
DON FRIEDMAN(p) CHUCK ISRAELS(b) PETE LA ROCA(ds)
録音 1962年5月14日 NY
このアルバムは、フリードマンのオリジナル4曲、それにスタンダードと他のミュージシャンンのオリジナル3曲から構成されていて、春の陽気にぴったりの爽やかな演奏集です。
アブストラクトな感触を持つタイトル曲は、構成もクラッシックからの影響を色濃く匂わせています。
デビュー当時は、ビル・エヴァンスの対抗馬として評価されていたのに、いつのまにかエヴァンスの影響を受けたピアニストとのレッテルを貼られてしまいましたが、ここで聴かれるピアノ・タッチ、リリシズムはエヴァンスとは明らかに異なります。
フリードマンは、エヴァンス・トリオで名声を得たスコット・ラファロと半年間一緒に生活していたこともあり、チャック・イスラエルのバッキングがラファロの再演の様に聴こえるところからも、そのような形容になったのかも知れません。
なお2010年には、初盤からおよそ38年ぶりに「サークル・ワルツ」を演奏したアルバム(CD) が、日本のブロデューサー(伊藤八十八)により、「サークル・ワルツ21C」(21世紀の意?)として発売され、この曲を再演しています。
ジャケット内に、この曲の楽譜が入っていました。
「CIRCLE WALTZ 21C」 Village Music VRCL 18847
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DON FRIEDMAN(p) GEORGE MRAZ(b) LEWIS NASH(ds)
録音 2010年3月31日 NY
1曲目に配置されている「スプリング・ソング」は彼のオリジナルで、ピアノの鍵盤をフルに使った演奏は、75歳とは思えない力強いプレイです。
比較して聴くこちらの「サークル・ワルツ」は、新技術による録音にも助けられ、先の初演を越えたような美しい響きで楽しませてくれます。
このCDでは、タイトル曲をレコードでいうならばB面頭である6番目に配置したことが、プロデューサーの考えを物語っています。
そして、私の好みのドラマーであるルイス・ナッシュ、
4曲目の「エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ」ではサンバのリズムを刻むスティックが、7曲目の「イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー」では得意なブラシを使ってアップ・テンポの曲を盛り立てています。
8曲目はセロニアス・モンクのオリジナル曲「ルビー・マイ・ディア」ですが、モンクのゴツゴツした演奏とは対照的に、非常にスムースな演奏に終始しています。
ここで聴かれるスタンダードの数々は、他のプレーヤーにはない解釈で、聴き応えがあります。