信用収縮が怒涛のごとくように世界を駆け巡っています。
銀行の持つ信用創造機能。
これは、銀行に就職すると、必ず最初の新人研修で学ぶ用語です。
例えば、1百万円の預金を預かり、その資金を貸出金に充て、その融資された資金が回りまわって銀行に預金され、それを再び貸出金に充てる。
この循環によって、当初の預金額の数十倍、数百倍の資金が市中に出回ることになります。これを信用創造といいます。
今回の金融クライシスでは、高レバレッジ、すなわち借入金を多用して投資効率を極限化していた投資銀行がサブプライム業務でつまづきました。
いま彼らは、株式、ファンド、不動産投資などに投入していた多額の資金を一斉に回収して、その資金の大半を借入金返済に充てています。
そして、商業銀行は、投資マネーが引揚げられて業況が急速に悪化している不動産、商品市場に関わるファンドや一般事業者から、貸出金を回収すべく全力をあげています。
銀行間の資金調達もひどく細ってしまっているので、ひとたび返済を受けた金融機関は、貸出金を積極的に増やそうというような環境ではありません。
回収した資金を銀行が再び貸出金に充てればよいのですが、証券化商品や不動産担保融資で痛手を被った銀行は、必要な自己資本比率を維持するための方策の一つとして、リスク資産である貸出金の圧縮に懸命です。
こんな背景もあって、銀行が返済を受けたところで資金の循環が途切れる。
従って、信用創造の逆の現象である信用収縮が発生し、世の中から流動性資金が急激に減少していくのです。
同じような感覚、つまり流動性資金が砂に吸い込まれていくような不気味な空気を、かつて感じたことがあります。
それは、邦銀の融資企画部門に私が勤務していた、1997年に山一證券が破綻する過程でのことでした。
このところ、「投資先を失って行き場の無くなった資金は、一体どこに行くのか」というような記事も見かけますが、借入金が背景となっていない「真水」の資金は、大した金額にはならないような気がします。
さて、こんな事をボンヤリと考えていたところに、今年の春に地方銀行に就職した、野球部OBのSくんから、金融法務を学ぶ参考書を推薦して欲しいというメールが届きました。
ラグビー早慶戦を一緒に応援に行ったり、食事に行ったりと、在学中のSくんとは楽しい思い出が沢山あります。
彼は、銀行マンとして歩み始めたばかり。
しばらくは、書物からの知識と実務が頭の中で結びつかずに苦労するでしょう。
しかし、へこたれずに勉強していると、『あっ、これは以前に本に書いてあった事柄で説明がつくぞ』『この会社の事業計画は、業界全体の趨勢と違う方向を向いているような気がするなあ』などと思う時、書物から得た「知識」が実務における「知恵」に昇華する瞬間が必ず到来します。
そうなってくると、日経新聞の国際関係の記事と、日経には無縁かと思っていた目の前の中小企業の活動が、有機的、あるいは動的に結びついて見えるようになったりしてきます。
その日が来ることを信じて、Sくんには頑張ってもらいたいと思います。
銀行の持つ信用創造機能。
これは、銀行に就職すると、必ず最初の新人研修で学ぶ用語です。
例えば、1百万円の預金を預かり、その資金を貸出金に充て、その融資された資金が回りまわって銀行に預金され、それを再び貸出金に充てる。
この循環によって、当初の預金額の数十倍、数百倍の資金が市中に出回ることになります。これを信用創造といいます。
今回の金融クライシスでは、高レバレッジ、すなわち借入金を多用して投資効率を極限化していた投資銀行がサブプライム業務でつまづきました。
いま彼らは、株式、ファンド、不動産投資などに投入していた多額の資金を一斉に回収して、その資金の大半を借入金返済に充てています。
そして、商業銀行は、投資マネーが引揚げられて業況が急速に悪化している不動産、商品市場に関わるファンドや一般事業者から、貸出金を回収すべく全力をあげています。
銀行間の資金調達もひどく細ってしまっているので、ひとたび返済を受けた金融機関は、貸出金を積極的に増やそうというような環境ではありません。
回収した資金を銀行が再び貸出金に充てればよいのですが、証券化商品や不動産担保融資で痛手を被った銀行は、必要な自己資本比率を維持するための方策の一つとして、リスク資産である貸出金の圧縮に懸命です。
こんな背景もあって、銀行が返済を受けたところで資金の循環が途切れる。
従って、信用創造の逆の現象である信用収縮が発生し、世の中から流動性資金が急激に減少していくのです。
同じような感覚、つまり流動性資金が砂に吸い込まれていくような不気味な空気を、かつて感じたことがあります。
それは、邦銀の融資企画部門に私が勤務していた、1997年に山一證券が破綻する過程でのことでした。
このところ、「投資先を失って行き場の無くなった資金は、一体どこに行くのか」というような記事も見かけますが、借入金が背景となっていない「真水」の資金は、大した金額にはならないような気がします。
さて、こんな事をボンヤリと考えていたところに、今年の春に地方銀行に就職した、野球部OBのSくんから、金融法務を学ぶ参考書を推薦して欲しいというメールが届きました。
ラグビー早慶戦を一緒に応援に行ったり、食事に行ったりと、在学中のSくんとは楽しい思い出が沢山あります。
彼は、銀行マンとして歩み始めたばかり。
しばらくは、書物からの知識と実務が頭の中で結びつかずに苦労するでしょう。
しかし、へこたれずに勉強していると、『あっ、これは以前に本に書いてあった事柄で説明がつくぞ』『この会社の事業計画は、業界全体の趨勢と違う方向を向いているような気がするなあ』などと思う時、書物から得た「知識」が実務における「知恵」に昇華する瞬間が必ず到来します。
そうなってくると、日経新聞の国際関係の記事と、日経には無縁かと思っていた目の前の中小企業の活動が、有機的、あるいは動的に結びついて見えるようになったりしてきます。
その日が来ることを信じて、Sくんには頑張ってもらいたいと思います。