紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

絶妙なタイトル

2007-02-21 22:53:14 | 読書
 月曜の新聞広告を見て、火曜日に注文し、水曜日(本日)に入手した本の著者は「いしいひさいち氏」である。我家では「いしいひさいち師」とお呼びしても間違いないくらい、絶大な尊敬を集めている。家庭内カルトである。

 その本はタイトルを一目みて即購入決定となった。そのタイトル。それは髷ものになれなかった時代もの(現代政治史?)『近くて遠山の金さん』である。「金」にはもちろん「キム」とルビが振ってある。説明の余地もないが「金正日」の「金(キム)」である。

 それにしても「いしい師」のタイトルはいつも秀逸で、タイトルを一目見た瞬間、まるで恋に落ちたように本を引っ掴み、迷う事なくレジに向かってしまうのだ。人心を惑わす術に長けているのである。もう思うがままに、まるで鯉の群が人の気配を察して押し寄せエサをねだるように、自由自在に財布の口を開けさすのである。

 例えば夫・H氏が新婚の頃、一目惚れして大人買いしたいしい師の「ドーナツブックスいしいひさいち選集」(双葉社)のシリーズには、巻毎にテキトーにタイトルが付けられている。そのタイトルは、すべて有名な文学作品のパロディになっているのだ。

 しかし原典を知らなければ「なんのこっちゃ」なので、ミステリーの知識が皆無なH氏は、私が受けまくった「まだらの干物」の面白さがわからない。ドストエフスキーを未読の私には、彼がお気に入りの「椎茸食べた人々」の真の笑いの意味を理解していないような気がする。

 「健康と平和」、「いかにも葡萄」、「馬力の太鼓」などのタイトルも好きだが、我家で投票すれば、「フラダンスの犬」が票を集めそうな気がする。
 夫婦間で「どれがええやろ?」と協議した結果、内容とのギャップも含めて「出前とその弟子」が『ドーナツブックス』の栄えあるナンバー1を勝ち取った。文句なく審査委員の意見の一致をみたのだ。

 「出家」を「出前」に置き換えた時点でいしい師は、燦然と輝く笑いの神様の微笑みをかいま見たのではないか、と思わせる絶妙なタイトルである。合掌