紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

蕪村を観に行く。

2008-06-05 21:38:12 | アート
 雨で肌寒いほどの日であったが、遠出をした。れんくみさんのお誘いで信楽のミホ・ミュージアムで開催されている「与謝蕪村√トけめぐる創意=vに行くことが出来た。

 考えてみれば彼女とは十年来の付き合いなのに、二人で出かけたことはおろか、お茶したこともなかった。もう少し人数が多くてなら、お茶やご飯はご一緒したこともあるのだけれど。もう10年来の付き合いなのに(その半分ほどは、濃いメル友でもあるのに)初デート、初ドライブなのだ。

 蕪村は芭蕉のような緊密さや緊張感よりは、むしろおおらかで牧歌的なロマンチストな人のよう。人間的魅力に溢れ、ユーモラスに生きることに重きをおき、決していいことばかりじゃない人生の岐路を、それでも明るい方へ続く道を選択して行った、そんな人だったんじゃないか、と彼の画を観て思った。

 さらさらと筆で描かれた漫画のような人物画。水木しげるを凌駕するような、飄々とした脱力系の妖怪たちが次々と現われる巻物。銀箔の上に描かれ、蕪村が死ぬまで憧れた、けれど決して行くことの叶わなかった中国の山水を描いた最晩年の水墨画。しんしんと雪の降る家々の町並みの静寂や、富士山の麓の松並木の画などは、どんなに見ていても見飽きることはない。

 今回、蕪村の年譜を見て、彼があの伊藤若冲と同じ年に生まれている同時代人と知る。そういえば若冲のいくつかの画にも、蕪村とは全く画風が違うのだけれど、かわいらしい諧謔精神が垣間見えた。彼らの生きた時代にはアートに笑いを含むことが許容されていた寛容な時代だったのかも知れない。

 また蕪村の絵の明るくユーモラスなテイストは近江蕪村と言われた楳亭・金谷(2008年3月のブログ記事参照)に直伝され、懐かしくも素朴なロマンチシズムは池田遙邨や福田平八郎のリリカルさの中に受け継がれているような気もする。

 ところで、今回のミホ行きの大発見は、蕪村のあれこれだけではない! 

 ミュージアムと別棟、エントランスの入口に位置するレストランやショップがあるレセプション棟では、パンの販売も行われている。れんくみさんが「パン買いにいくし」というのに付いて行けば、それは美味しそうなクロワッサンを発見! しかも決して安くはないお値段なのに、スーパーの目玉商品のように「おひとりさま1個まで」という案内が付いているではないか! これは買わねば!

 あと、れんくみさん情報に寄れば、このパン屋さん?で実物はカウンター内で姿は見えないが、密かにインフォメーションされている「お豆腐」が、ものすごく美味しいそうである。今回私はおひとりさま1個のパンに気を取られスルーしてしまったが、H氏に「なんで買わんかったの!」と非常に残念がられた。

 ところで帰りの車でクロワッサンをちびちび食べてみたら、外側はサクサクで中はちぎるのが一苦労なほどしっかりと練られている。バターの芳醇な薫り、うっとりするような味わいだったので、半分はパイ生地好きのKちゃんへのお土産とする。最高級なクロワッサン。文句なく、いままで食べたクロワッサンのザ・ベスト! クロワッサン・キングの称号を与えたい。

 こんどまたミホ・ミュージアムに行くことがあれば、レセプション棟にも必ず立ち寄らなくては! パンとお豆腐を買いにね。