教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

「こんなこともあろうかと」と言ってみた

2011-02-06 00:05:09 | 科学
ドラマやアニメの世界では、おしなべて科学者や技術屋の扱いが悪い。
それは↓このようにかつて書いたことがある。

アニメでは技術屋のあつかいが酷い件
http://blog.goo.ne.jp/beamtetrode350b/d/20090213

そんなだから、日本では科学者というと、銃夢のノヴァみたいな頭のイカれて倫理の破綻したジジイのマッドサイエンティストみたいな、そういう極めて強いマイナスイメージでしか扱われない。

しかし!

尊敬できる科学者や技術屋が全く登場しないわけでもない。
わずかだが、素晴らしき科学の徒も中にはいるのだ。

たとえば・・・
BLAME!のシボ主任科学者。
空想科学エジソンの機械系エンジニア・ミロ。
そして、宇宙戦艦ヤマトの技師長・真田志郎。
・・・そういう人たち。

彼らはかっこいい。
決して派手に戦うスーパーヒーロー的な大活劇を専門とするわけでも何でもないが、しかし時として脳筋スーパーヒーローよりもさらにかっこよく輝くことも稀ではない。

そう、
「こんなこともあろうかと」
という真田技師長の言葉が全てを物語っているのではなかろうか。



さて。
「こんなこともあろうかと」
というセリフ。

これをリアルで使う機会などあるのだろうか?

ある。
リアルに技術屋であるわたしはリアルに何度か使ったことがある。

一般に、企業における開発とは、[構想]→[設計&実験]→[試作]→[製品]という順番で作られることが多い。
最近はシミュレータを駆使することで試作や実験の経費と時間と手間をなるべく省くようにするのがトレンドだが、それでも概ねこんな感じになっている。
実験は、ほぼ全体となる試作で使う予定の細々とした機能ブロックごとの動作や性能を検証するためにモノを作ることが目的となる。
もちろん、基本的に試作で使う予定のモノしか実験には組み込まれない。

製品を作るときはたいがいギチギチにモノを詰め込んであまったスペースなどほとんどないように作られるし、もし場所があまるならその分だけ小さく作るできである。
しかし実験系はそうではない。
発注や寸法の単位の都合上、スペースが微妙にあまることも少なくない。

そういう時はどうするか?

時間がなくて元気もなければ、それはあまったままで放置される。
しかし余裕があれば、そこは技術屋がその時の気分で勝手気ままに好きなものをブチこんでおく。

場所があまっているのだから誰も文句は言わない。
あえて言うとすれば、
「どうせそんなもの使わないし、役にたたないよ。あまってるから勝手に使ってもかまわんけど、なんでそんなもの入れたんだい?」
というくらいである。

時には、みんなが
「これでいけるはずだ!」
と考えている事柄なのだが、実は自分だけ内心で
「ちょっと心配だから、しくじった時にリカバリできるように小細工しておくか」
というようなモノがそこに載せられる。



さてさて。

設計は済んだ。
実験も滞りなく結果を出した。
試作を作ってみた。

あら、性能が出ない。
さあ困った。

世の中、たいがいそういうモノだ。

その時、設計にかかわった皆があわてふためく(というのはちょっと大げさかもしれないが)。
そういう時は自分の出番である。
ちょっと心配だったからしくじった時にリカバリできるように小細工してあったではないか。
ついにそれが日の目を見るときなのだ。

俺「フフッ」
皆「どうした?」
俺「それはご心配なく」
皆「待て、性能が出ないんだから大変なことなんだぞ」
俺「こんなこともあろうかと!」
皆「!?」
俺「あまったところに入れておいたこいつを動かしてやれば、バッチリうまくいきますよ」
皆「おおっ!」

ということになるわけだ。
実際そうなったことも何度かある。



たとえば・・・
実験で作ったプリント基板のあまったスペースにパターンで分布定数のフィルタを作っておいたことがある。
その当時は製品ではプリント基板内に分布定数のフィルタなど埋め込む予定はなかったし、それがなくても性能が出るように設計されていた。
皆がそんなものいらねぇと言ったのだが、場所があまったんだから好きに使わせろと言ってそこに押し込んでおいた。

プリント基板が上がってきたとき、フィルタを実測してシミュレーションとフィッティングをとっておいた。
そこでも皆がそんなもの使わないと思っていたし、わたし自身も使う機会などありはしないと思っていた。

次に試作のフェーズにうつる。
ほぼ全部を組み込んだ試作が完成した。
しかし、システムインテグレーション上の都合で性能がやや未達成なところがあった。

そんなときだった。
「こんなこともあろうかと!」
と言ったのは。

「性能がやや未達成な分はここにフィルタを埋め込めば解決します。
 既に実験もしてありシミュレーションとフィッティングもとってあります。
 もう1度実験版や試作版をつくりなおす必要もなく、次の製品版を作るときに一発でピタリと合ったフィルタを作ってみせます。
 だからご心配なく!」

そして見事にその通りになったのだった。



きっと、はやぶさのイオンエンジンの制御回路を作ったエンジニアも同じことを言ったろう。

A「やべえ! 4つもあったイオンエンジン全部壊れてもうた! もう地球に帰れねえ!」
B「まだだ!」
A「まだだって、あんた、もう全部動かないんだぞ!」
B「こんなこともあろうかと!」
A「!?」
B「隣の中和器を起動させるんだ! 電流をそこに迂回させられるよう、ダイオードをつけておいたんだ!」
A「おおっ!」

な~んて按配だ。






追伸:
まあ実際には、どちらかってぇと
「こんなこともあろうかと!」
って言う機会よりは、
「やべえ、予想外のところで失敗してるじゃねえか!」
ってアタマかかえる機会のほうが圧倒的に多いんだけどさ(笑)。