私が竜巻を見たのは、2003年7月のことだった。
例によってフブスグル湖で調査をしていた時だった。
はるか上空の雲が突然激しい勢いで回転を始めた。
誰かが「竜巻だ」と叫んだ。
ずいぶん高いところだったので危険はなかったが、それでも身がすくむ思いがした。
やがて大粒の雹が降ってきた。
上下の温度差があれば竜巻は簡単に発生する。
45℃くらいの差だろうか。
モンゴルの地表温度は10度くらいだが上空の寒気はマイナス40度くらいあり、上昇気流が発生するのだろう。
日本の場合は、地表温度が高い。
マイナス20度くらいの寒気が上空に来れば、竜巻ができてしまう。
しかも高度が低いから危険だ。
そう言えば、今回モンゴルに行って、親しかった三人が新たに他界している事を知った。
いかにもモンゴル人らしい友人がいなくなるのは淋しいことだ。
ガンバのお父さんは、かつてナショナルジオグラフィックの表紙になった。
モンゴルの英雄の一人だ。
表彰式に立ち会ったこともある。
この時彼にメダルをつけていた人がハトガル村の村長だった。
私に馬をプレゼントしてくれた人でもある。
この人もなくなっていた。
左端の男性はスフバータル号の船員で、モンゴル相撲の力士だった人だ。
彼は湖でおぼれた人を助けに行って死んでしまった。
まだ若いのに、残念な話だ。
長く生きると、友人を失うことがつらくなる。
さて日本の竜巻の話を聞くと、モンゴルを思い出す。
これからますます気候はおかしくなるのだろう。
着目は日本海の水温上昇だ。
閉鎖的な水域に暖水が入り込むと、ドンドン暖かくなるようだ。
そのうち、戦争も災害も区別がつかなくなるような時代が来るのかもしれない。