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クマガイソウ・1~開花

 ラン科アツモリソウ属の「クマガイソウ(熊谷草)」。この界隈では東京薬科大学“自然観察路”で見ていたが、いつか自生種を見たいと思っていた。
 クマガイソウは北海道から九州までの低山の“熊がいそうな”林内に生育し時に大きな群落を作る。花期は4~5月で扇形の大きな葉の中に特徴的な形の花を咲かせる。
 花はラン科特有の構造で花被片(萼片と花弁)は6枚になる。一番上の緑色は苞葉でその手前に背萼片が垂れ下がっている。その後方には2枚の側萼片が合着した1枚の合萼片(2枚にカウント)がある。左右に拡がるのが側花弁で下部の袋状のものが唇弁。側花弁の間に“人”字形の蕊柱があり前面は仮雄蕊でその裏側に葯が2個あり仮雄蕊の内側には雌蕊の柱頭がある。
 ポリネーターのマルハナバチなどの昆虫が蜜を探して唇弁の穴から侵入するがこの穴は一方通行で出られず、止む無く上部に細く開いた穴に向かう。その間に昆虫の背中に雄蕊の花粉を付け、別の花の穴に入って雌蕊に花粉を付けさせるという巧みな戦略を取っている。
 クマガイソウの名の由来は袋状の花を昔の武士が背負った母衣(ほろ)に見立てて、源平合戦で白い旗を掲げた源氏の熊谷直実(くまがいなおざね)の名を当てている。また同属の赤い花のアツモリソウは一の谷の戦いで熊谷直実に討たれた赤い旗を掲げた平家の平敦盛の名を当てている。
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コブクザクラ・2~若い果実

 野川公園の野原にある「コブクザクラ(子福桜)」。バラ科サクラ属の落葉高木でシナミザクラ(支那実桜)とジュウガツザクラ(十月桜)もしくはエドヒガン(江戸彼岸)などとの交雑種と考えられている。花一輪に雌蕊が2~3本あり、果実が2~3個出来ることから子宝に恵まれることに譬えて名付けられている。写真は若い果実で果柄の途中から2つに分かれている。片方は大きくなりそうだがもう片方は成長が止まっているように見える。この樹は高さ5~6メートルで枝を大きく拡げていたが、目の高さで見られる果実は写真のように途中で折れているが、片方が無くなって1個だけ残っているのがほとんどだった。
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ヤビツギンラン・1~東京都立大学

 東京都立大学の林縁で見られる「ヤビツギンラン(矢櫃銀蘭)」。ラン科キンラン属の多年草で唇弁の距が退化し花弁化したものでギンランの変種になる。ラン科植物は左右相称花になるが、ヤビツギンランの花被片はどれも同形の放射相称の花弁状に先祖返りしている。写真では距やその痕跡が見えず、花を拡げてみるとすべての花弁が同じ形状なのがわかる。その名前は神奈川県秦野市の“ヤビツ峠”で発見されたことに因んでいる。キンランにも6枚の花被片がすべて同形になるツクバキンランがあるがまだ見たことが無い。
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