現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

宮沢賢治「サガレンと八月」校本 宮澤賢治全集第九巻所収

2018-09-10 09:30:38 | 作品論
 冒頭の部分のみの未完の非常に短い作品です。
 タネリが登場するので、一般的には「タネリはたしかに一日中噛んでゐたようだった」の先行作品とされるのが一般的なようです。
 しかし、この作品の優れた描写や表現は、他の作品と同様の高い水準を持っています。
 農林学校の助手、風、波(浪)、タネリ、タネリのおっかさん、くらげ、ギリヤークの犬神、三匹の白犬、てふざめなど、魅力的なキャラクターが目白押しで、ラストで犬神に蟹にされてしまったタネリがこれからどうなるのかと考えると、未完に終わってしまったことが残念でたまりません。
 
サガレンと八月
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作品評における思想性の欠如

2018-09-10 08:54:44 | 考察
 最近の児童文学の作品評では、作者の思想性に踏み込んで書いているものは、ほとんど皆無です。
 確かに、作者の政治的な立場や宗教などに対する批判は、作品の本質から外れてしまうかもしれません。
 しかし、その作品が、子どもたちや若い世代(子どもたちの親たちも含めて)の生存を脅かしたり、世の中の進歩を妨げたりするような場合は、その思想性を厳しく批判しなければならないのではないでしょうか。
 故なき誹謗や中傷はもちろん許されませんが、いたずらに作者サイドからの反論を恐れているのか、あたりさわりのない評論があまりにも多い現状は全く物足りません。
 批評において、作品の表面的な技法などを論じるのは枝葉末節であり、そこに語られている作者の思想性について述べなければ意味がないのではないかと思っています。

神、さもなくば残念。――2000年代アニメ思想批評
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作品社
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