裕福な義父(母は亡くなっていて、主人公と義父は彼女を今でも深く愛しています)と、ニューヨークの高級ホテル(リッツ)に無期限で暮らす十九歳の美術学校生が主人公です。
美術学校の夏休みに、名前(ド・ドミエ=スミス、フランス育ちでフランス語が達者なのでフランス人を装っています)や年齢や経歴を偽って、カナダのモントリオール(ケベック州なのでフランス語圏です)にある通信制の美術学校の夏学期の講師として採用されます。
その学校は、他には東洋人(名前は日本人っぽくないですが、少なくとも夫は日本人。当時の裕福な白人のご多分に漏れず、東洋人に対する偏見が書かれています)の夫妻だけが指導している、学校というよりは私塾という感じのスケールです。
そこで、添削指導(たいがいは全く絵の才能がない生徒です)をしているうちに、絵の才能にあふれる尼僧の生徒に出くわし、年齢欄が空欄だったこともあって、若者らしいとんでもない妄想(彼女は十七歳の美少女で、まだ尼僧になる正式の誓いを立てておらず、直接会えば自分と恋愛関係に陥るだろう)を抱きますが、当然そんな空想は儚く破綻(彼が添削と共に送ったラブレターが修道院長の目に触れて彼女は退学し、さらには美術学校自体が正式に認可を受けていなかったので閉鎖されてしまいます)して、主人公はニューヨークに戻って元のように周囲にいる女の子たちを漁って、夏休みの残りを過ごします。
若者特有の自意識過剰とたぐいまれな妄想力がいかんなく発揮されていて、軽薄で鼻持ちならないながらもどこか憎めない、若者の一つの典型を描き出しています。
題名にある「青の時代」は、もちろん作品にも出てくる(主人公が友人だと吹聴しています)パブロ・ピカソにちなんでいます。