読み終えたのは先ほどだが、今現在進行していることだけに、衝撃的な内容だった。
周知のように、イスラエルは独立以
来、常に周辺の国と戦って来たが、第一次インティファーダ(蜂起)以来、国の内部においても、アラブ・パレスチナ人勢力と激しく戦うことを余儀なくされている。対外的な情報面に関しては「モサド」が、国内の治安情報面に関しては「シン・ベット」が対応している。
この著者(モサブ)はイスラエルの抵抗二大勢力の内、特にイスラム主義で爆弾テロでなる「ハマス」の創設幹部の長男にして、ハマスの主なテロ活動を支えてきた人物だが、実はイスラエルの情報機関「シン・ベット」のスパイだったという、驚くべき告白である。しかも彼はイスラムからユダヤ教ではなく、なんとプロテスタントのクリスチャンに改宗するのである。アラブから見れば極悪非道の裏切り者、万死をもって償うべき背教者、世界中のイスラム教徒がつけ狙う敵となった。
しかし単なる裏切り者、スパイの話でないことも、この書を読んでいけばわかる。たとえば18歳の時、過酷な刑務所に送られる体験をするが、そこで見たものは同じ仲間のハマス同士で行われる凄惨なスパイ捜し、リンチだった。またインティファーダでも、指導者が先導して待ち構えるイスラエル軍に立ち向かわせるが、その目前でサッと指導者たちは引いて高見の見物をする。そのまま後に押されて前進する人々が撃たれ殺され、血と肉片となって飛び散る様を、指導者はボディガードに守られ安全に見るのである。