Happyday of LUCKY

日々の気付きと感謝を忘れないように綴るページ

写真家紹介とミスターX

2011年07月15日 | Class
わたしの授業もきょうで1学期さいご。
サイドメニューとして、いろいろな写真家の紹介をしてきたが、それもきょうでおわりだ。
これまでに紹介した写真家のなまえを列挙するとつぎのとおり。

・セバスチャン・サルガド
・リー・フリードランダー
・土門拳
・細江英公
・本橋成一
・白鳥真太郎
・ダイアン・アーバス
・サイモン・ノーフォルク
・江成常夫
・篠山紀信
・長島義明

そしてきょうは、
・ロベール・ドアノー
・エリオット・アーウィット
・ハービー・山口
・牛腸茂雄
・ミスターX

上のなまえを見ると、写真史的にはかなり偏った選択であるのがわかるだろう。
なぜならわたしのお気に入りばかりだからだ。
わたしの授業は写真史ではないので、まあ、きれいなだけが写真ではなく、「こんなヘンな写真を撮ってもいいのですよ」という写真表現の幅広さが伝わればいい。
そして、こんな写真を撮るにはどんなカメラで、どんな技術が必要なのか、という写真技術の話につながっていけば、わたしの授業としては成功である。
だがライカを持ったからといって、サルガドのような写真は撮れないのが写真のむずかしいところだ。
矛盾するようなことをいうが、結局は写真は技術ではない。
でもそれをいってしまうと、わたしの授業は成り立たないので生徒さんには黙っておこう。

ところできょう紹介するミスターXってどんな写真家で、どんな写真を撮るのか。
それは上に紹介した写真家をリスペクトし、そこから自分だけのイメージを絞り出そうとしている一人の写真家だ。
おそらくきょう見せるのが最初でさいご、このブログにも載せないから、申しわけないけどそれを見る生徒さんとだけの話だ。
写真表現というのは自由であると同時に、痛みをともなうものだということを、ミスターXの写真から感じとってほしい。
さいごの授業ということで。



きょうは大型カメラで4×5のプロビア100Fを詰めて本番撮影。
カメラの扱いや人の動かし方を見てると、その人の性格というか資質が見えてしまう。
現像のあがりがたのしみだね。

いまさらシノゴをする意味はあるか

2011年07月08日 | Class
「シノゴ」と聞いてそれがカメラだとわかる人はもう少ないんじゃないか。
ゴシチとかバイテンなんて言ってもまず通じないだろう。
写真の現場でもこれらの言葉はすでに死語に近くて、建築写真を撮るカメラマン以外は今や聞いたこともない人が多いと思う。
若いカメラマンはデジカメから入ってるので、もうシノゴを知らないのである。



きょうの授業のテーマは大型ビューカメラ。
フィルムのサイズによって4×5(シノゴ)や5×7(ゴシチ)、8×10(バイテン)などと呼び方は変わるが、基本的な構造は同じだ。
レンズボードとピントグラスをジャバラでつないだだけのシンプルな構造は、まさにカメラの元祖カメラ・オブスキュラと同じである。
わたしの授業では毎年かならずこの大型カメラの実習をする。
残念ながらじっくりとやってる時間はないが、フィルムがあるうちはせめて一度は触らせておきたいと思ってやっている。
単に「触ったことがある」というだけでなく、大型カメラにはフレーミングの秘密があるので、本当は「ハマって」ほしいと思っている。

フレーミングの秘密とは言うまでもなく「アオリ操作」のことである。
ピント面をコントロールする、いわゆる光軸アオリは大型カメラの構造から来る副産物であって、本来の使い方は平行アオリだとわたしは考えている。
被写体に対してカメラ(つまりレンズボードとフィルム面)を平行に構えて、ライズ/フォールまたはシフトによってフレーミングするというのが大型カメラの基本操作だ。
この操作に習熟すると、アオリの利かないカメラを使うときも、つねにパースとピント面の意識が働くから、カメラをむやみにハイアングルやローアングルにしようとは思わない。
いつも被写体を自然なパースで撮るように、自分が平行移動しながら立ち位置を考えられるようになる。



わたしも大型カメラを経験するまでは上のような意識はまったくなかったから、この記事を読んで意味のわかる人はおそらく少ないだろう。
べつにわからなくても写真は撮れるのだけれど、何事も原点を知っているのと知らないのとでは、いまの在り方が少なからず変わってくると思う。
写真も同じだ。

影の出ないライティング

2011年07月01日 | Class
コマーシャル関係の撮影ではよく使う定番のライティングだが、見たことのない人にはちょっと想像できない「影の出ない」ライティングを紹介する。
その名は「フロント紗幕+トレペ」。
紗幕というのはレースのような薄い生地でできた大きな幕で、本来は演劇などの舞台装置として使われるものだ。
いつから写真スタジオで使われるようになったのかは不明だが、これを使うと非常に大きな面光源をつくることができるので、光がよく回って背景にほとんど影が出ない。
このライティングは数人のモデルを撮るときに、露出のムラが出にくいことも利点である。
モデル一人でも左右に動かして撮れるので、立ち位置の決まっている撮影よりもアクティブな絵が撮りやすい。



つくり方は簡単で、紗幕をポールに吊り下げてスタンドやポールキャットで固定し、そのうしろに同様にトレペを吊るす。
さらにそのうしろにカサバンをセットするだけ。
紗幕の大きさに合わせてカサを4灯にするか6灯にするかを判断する。
紗幕とトレペの距離は20センチくらい。
紗幕だけでも撮れるが、トレペを入れた方が光がディフューズされて、カサの形が出ない。
カメラマンは紗幕のまえに立つわけだが、モデルが自由に動けるのと同じで、カメラマンもバック紙が切れないかぎり比較的自由に動けるのがいい。
ストロボのモデリングだけでは暗いので上の写真のように、レフランプを点けておけばピント合わせがしやすい。



左は紗幕で撮ったもので、右はレフランプだけで撮ったもの。
影の出方がまったくちがうことに注目。
じつはこの紗幕、生地にもよるが360×360センチの大きさだと3~4万円はするシロモノだ。
学校の経費を安くあげるために、担任のN先生が白布を買ってきてミシンがけしてくださった力作である。
これを使えばきっとステキな写真が撮れるはずだ。

測距点は中央1点が基本

2011年06月10日 | Class
きょうのスタジオ実習は商品撮影によく使う基本的なライティングをやる。
料理などの比較的高さのない被写体の場合は、上から覗きこむようなハイアングルになるので、ディフューザーをテーブルエンドから斜めに張る。
ストロボのヘッドはそのうしろからやや逆光ぎみに当てる場合が多い。
こういうライティングだと手前に影が出るので、被写体とカメラの間に小さなレフ板を入れて、影を起こしてやるときれいな写真になる。
レフ板を近づけすぎると明暗のコントラストがなくなって、ベタッとした感じになるから、何度もトライアンドエラーでベストな位置を探す必要がある。

それからぬいぐるみなどの背の高い被写体を撮る場合は、ディフューザーをサイドに張り、真横かやや後方からライトを当てる。
この場合もライトと反対側に影が出るので、レフ板を置いて影の濃さをコントロールする必要がある。
文字で書くとなにか難しいことのように思われるが、じっさいにやってみるとそれほど難しくはない。
ふだん大きな面光源で撮ったことのない人は、このセッティングで撮るととてもきれいに撮れるので驚くだろう。

ポイントはストロボヘッドの光軸の向きとレフ板の立てる位置だ。
一発で決まることはないので、何回も微調整しながら最もイメージに合う方向と位置を決めていく。
ただしデジカメのモニタは小さいのであまりアテにしない方がいい。
おおよその目安として利用すればいいが、本来はPCの画面で大きな画像で見なければわからない。
とくに初心者用のデジカメのモニタはきれいに見えるように彩度もコントラストも高く設定されているから注意が必要。



ところでデジカメに限らずオートフォーカスのカメラはピントを合わせる測距点というものがある。
最近のおせっかいなカメラは測距点が自動で選ばれるように初期設定されているものが多い。
これで商品撮影はムリだ。
被写界深度を考えてピントの合わせる場所を慎重に選ばなければならないからだ。
わたしたちプロカメラマンは精度の高い中央の1点だけを使ってピントを合わせている。
被写体によって測距点を替えることもあるが、あくまでも自分の意志でどこに合わせるかを選ぶことが大切である。
まちがっても自動選択で合わせてはいけない。
というか、物撮りはふつうオートフォーカスは使いません。

で、測距点を中央1点にする方法を個人個人に教えていったのだが、キヤノンのEOS7Dだけはどうしてもうまくいかない。
EOSは右肩のボタンを押して、シャッターボタンの近くにあるメイン電子ダイヤルをどちらかに回せば替わるはずなのに何度やってもできない。
そうこうするうちにほかの生徒がメニューからある設定を変えなければ、測距点は動かないことを教えてもらう。
なんとややこしや。



それからソニーのデジカメを使っている生徒が「先生、ストロボが同調しません」というので見てみる。
まずソニーはシンクロターミナルの付いていないカメラが多いので、シューアダプタが必要なのだが、アクセサリーシューがほかのどのメーカーとも形がちがうので、専用のシューアダプタがないとシンクロコードがつなげない。
たまたまもう一人ソニーを使っている生徒がそれを持っていたので、借りてシャッターを切ってみた。
だがモニタは真っ黒で明らかにストロボの発光とシャッターのタイミングが同調していない。
ソニーを使っているもう一人の生徒はきちんと同調して写るのに、これはなぜ写らない?
後幕シンクロの設定を変えたり、長時間露光にしたり、いろいろ試してみたが結局わからずじまい。
来週、説明書を持ってきてもらうことにしたが、はたして解決するのやら。

デジカメってメーカーによっても機種によっても設定や操作がちがうので、全員に教えるのはホントたいへんだ。
フィルムカメラの時代がなつかしい・・・



[きょうの夕食]
・トマトリゾット

昼から急に熱が出てきて、からだのあちこちが痛い。
妻は職場の人と飲みに、息子はバイトに行ったので、食べやすいものを適当につくる。
あしたまでに熱が下がるか。

スタジオで学ぶことの意味

2011年06月03日 | Class
写真学校で学ぶことの意義の一つは、スタジオを使えることだ。
ふつうの写真愛好家であったわたしは、この学校に入ってスタジオ撮影のたのしさを知った。
すなわち、それまで光といえば太陽がすべてだったのに、大型ストロボによって自分で光をつくることを学んだのだ。
さらにそのスタジオでの経験が屋外での撮影にも反映され、太陽を一つの光源として捉えられるようになった。
それによって写真表現の幅が広がり、アマチュアのころとはまったくちがった写真が撮れるようになった。



きょうはそのスタジオで大型ストロボを使った授業をする。
すでにほかの先生の授業で大型ストロボを使っているそうなので、使い方の説明は復習のような形で簡単にすます。
だが、きのうまでの修学旅行の疲れが残っているせいか、いつもの調子がまったく出ない。
大切なポイントを何度もいい忘れて、補足説明のようなことばかりしてしまう。
ああ、最悪。



授業の後半は3グループに分かれて、じっさいに撮影する。
大型ストロボの撮影ではシンクロコードをつないだカメラでしか撮影できないので、ほかの人はモデルをやったりアシスタントをしながら撮影している人をフォロー。
生徒たちを見ていると、写真を撮るってこんなに楽しいのかというくらい、じつに楽しそうだ。
そんな様子を見てるわたしも楽しいのだが、同時にいろいろ気になる点も見えてくる。
それはまた来週の授業で生徒たちに伝えようと思う。

とにかくできるかぎり自主研修の時間にスタジオに入って、自分の光を見つけることが上達の近道だ。