朝からV写真館で就職活動用の証明写真のデータ修正。
はねている髪の毛や顔のニキビ、キズをスタンプツールで消す。
目の下のクマが濃い人は、それも薄く修正する。
やっかいなのは頭が傾いている人だ。
撮影のときに細心の注意を払っていても微妙に傾いている人がいる。
身体ごと傾いているのであれば、カンバスを回転させれば済む話だが、頭だけ傾いている場合は首から上だけを切りはなして回転させなければならない。
簡単にいうと、背景のレイヤーをコピーしそのレイヤーを回転させて頭をまっすぐにし、頭の部分だけレイヤーマスクを切って背景レイヤーと重ねればよい。
ただ首と頭のつながる部分がなかなかうまくいかない人もいるので、マスクを切る作業にはけっこう時間がかかる。
一日中その修正をやって、夜は北義昭ワークショップの2回目。
前回は露出を変えて撮った3枚の画像をHDRに統合するところまでやった。
今回はそのHDR画像を作品として追いこんでいく。
参加者がもってきたデータを北さんのPCに入れ、北さんは一人一人の画像をみんなのまえで見せながら作業をすすめる。
おもしろかったのは、あまりにも輝度差の大きい画像をHDRに統合すると、トーンジャンプをおこすだけでなく、つながりの悪い部分の色相が反転してしまうことだ。
素材となる3枚の画像の露出のばらし方はハイライト基準で1枚、シャドー基準で1枚、そしてその中間の露出で1枚撮る。
したがって輝度差の大きな風景だと±4~5EVくらい開く場合もあるだろうし、逆の場合は±1EVくらいで大丈夫なこともある。
もっといえば輝度差が5EV以内に収まるような風景だと、有効なダイナミックレンジが得られないのでHDRには統合できない。
さて、統合した画像をどのように追いこむかという本題に入る。
まずモノクロフィルターによって画像をモノクロ化する。
そのときに何色のフィルターをかけるかによってコントラストのつき方や中間調の見え方が変わるので、自分のイメージに近いカラーフィルターを選ぶ。
つぎにレベル補正の調整レイヤーをモノクロフィルターの下に入れ、シャドーとハイライトの明るさを決める。
このときオプションキーを押しながらシャドー(ハイライト)のスライダーを動かすと、画面全体がまっ白(まっ黒)になり、どの部分がつぶれた(とんだ)のかが目視できる。
それを見ながら自分のイメージに近づけていく。
そのつぎにトーンカーブの調整レイヤーをつくり、画像にコントラストをつけていく。
このときレベル補正の調整レイヤーの上に入れないと、先にやった黒と白の幅が変わってしまうので注意。
さらにレベル補正の調整レイヤーにもどり、グレーの濃度を決める。
これで一応の基本作業はおわりだが、全体のバランスを見ながら、重い部分は新たにレベル補正の調整レイヤーをつくりマスクを切っていく。
このマスクの切り方にもいろいろな方法があり、グラデーションツールを使ったり、なげなわツールやマグネット選択ツールを使う場合もあり、とてもここに書ききれない。
とにかく自分の納得いくところまで何回でもマスクを切って追いこんでいくのだ。
こうしてできあがった画像データをプリントするわけであるが、このプリント作業もまたたいへん。
あらかじめ10段階のグレースケールを使っておいて、まずその試し刷りプリントをつくる。
北さんはきょうのために20数種類のペーパーの試し刷りをつくってきて、そのちがいを見せてくれた。
ペーパーによって紙白の色がちがうだけでなく、黒や中間調の出方もちがうので、プリントのイメージもずいぶん変わって見える。
自分のほしいイメージを表現するのにどのペーパーがいいのかは、何度も試し刷りをして煮詰めていくのだそうだ。
しかもプリンタドライバの設定でインクの濃度も微妙に変えたりもするというから、もう果てしない作業だ。
アナログの暗室作業のさまざまなテクニックに匹敵するくらい、デジタル暗室も奥が深いことがわかるだろう。
で、追いこんだ画像がこれ→
21時半終了の予定が22時半まで延長して、北さんは自分の写真制作についての話をたっぷり聞かせてくれた。
その話がまたおもしろかったのだが、きょうはここまで。