くだんのニコンZ9であるが、約半年使った感想をすこし。
いろんなユーチューバーやブロガーが言ってると思うが、まず、電子ビューファインダーの見えがいい。わたしの個体はやや青みが強い気もするが、タイムラグはまったく感じなくて、レフ機のそれと遜色ない。それよりも覗きながら露出がリニアに見えるので、撮影後の確認がほとんど必要ないのがよい。ただクリップオンのストロボを使うと、ファインダー像が一定の明るさに固定されてしまうので、オフにした状態で露出を決める必要がある。わたしはファンクションボタン3にストロボのオン・オフを当てていて、それを押しながら(つまりオフにしながら)露出を確認している。ことばで書くとややこしそうだが実際はかんたんな操作で、慣れればだれにでもできる。
つぎに優れているのはピントの合焦精度である。とくに動きものの精度が非常によい。コンティニュアスモードで被写体を追いかけていると、まるでムービーを操作しているがごとくピントが合い続ける。そのファインダー画像を見ながら、「ここだ」いうところでシャッターを押すだけで、確実にピントの合った画を写すことができる。その正確さは本当におどろくばかり。打率でいうと1000枚撮ってだいたい990枚くらいは合っている。ピントの外れた10枚のうち、手前の被写体に引っ張られて前ピンになってしまったカットが5枚くらい、あとの5枚はシャッターを切る瞬間にズームリングを回してしまってピントが外れた、いわば人為的ミス。
さらに秀逸なのは縦位置にかまえたときにタテ方向にチルトするモニタだ。これは証明写真のようなポートレイト撮影のときに威力を発揮する。ファインダー内ではなかなかわかりにくい身体の傾きが、大きなモニタだと気がつきやすい。また縦位置での物撮りのときにも有効で、大きくフレームを決めたのち拡大ボタン(+)でピントを追い込むといった使い方もよくする。レフ機だと試し撮りして画像を再生しピントを確認するという作業を数回繰り返さねばならないが、ミラーレス機だと試し撮りする必要すらない(じっさいはするけど)。
しかしながら不安材料がないわけではない。屋外での撮影で頻繁にシャッターを切っていると、ボディが熱くなってきて「HOT CARD」という警告が何度も出た。その度に電源をオフにしてやりすごすのだが、つぎつぎにシャッターを切らねばならない場面(たとえば炎天下での運動会とか)では肝が冷える思いで撮影している。いまのところシャッターが切れなくなる事態は起きていないが、Z5やZ6Ⅱでは切れなくなった経験がある。ミラーレス機が熱に弱いというのは宿命のようで、タイトな撮影現場ではすぐにサブ機を出せるよう準備しておく必要がある。気持ちわるいのでニコンのサービスで点検したが、エラーの履歴は残っているものの「HOT CARD」という警告は再現されず(そりゃそうだろう)、「ようすを見てください」と言われるのみでどうしようもない。
あと、これはZ9の機能とは関係のない話であるが、われわれカメラマンの世界はせまいもので、わたしがZ9を買ったというウワサはすぐに広まってしまった。現場で久しぶりに会うカメラマンにも伝わっていて、ちょっと触らせてという人までいる。まあしかし、おかげで音楽会やダンスの審査会の仕事が舞い込んでくるという、うれしいオマケもある(音楽会などはレフ機のシャッター音を嫌うクライアントが多いのです)。半年使ってほぼ減価償却できたかな。