わたしの予想を裏切って、ニコンはまだD400を発表しない。
もう年内の発売は絶望的だ。
ちょうど3年まえの今ごろ、I大学の撮影期間中に予約していたD300を喜んで買いに行ったことを覚えている。
今回は残念ながらそうはならないだろう。
しかしよく考えてみれば、3年に1台新しいカメラを買うというのは費用対効果の低い仕事のやり方だ。
フィルムカメラの時代は10年くらい使うのはあたりまえだったのに。
10年まえのカメラでも出てくる絵はなにも変わらないし、むしろ使い慣れた機械の方が仕事はしやすいから、新しいモデルに対してはプロは懐疑的・保守的であった。
I大学でいっしょに撮っているカメラマンに、フィルム時代にどんなカメラを使っていたのか聞いてみた。
キヤノン党のJさんはA-1にFDレンズだった。
そういえば高校時代に写真部の友だちが持っていたなあ。
AEはシャッタースピード優先か絞り優先かという議論が巷間かしましかったけど、このA-1はどちらのAEも使えるようになった画期的なカメラだった。
鉛の含有量が高い硝材でつくられていたFDレンズの描写はシャープで素晴らしかったし、どのレンズもカラーバランスが同じなのが当時としては驚異的であった。
キヤノンの良心が感じられるころのカメラとレンズ群だ。
ニコン使いのKさんはFAやFM2、FE2を使っていた。
FAの画期的なところは多分割測光による露出制御である。
ニコンカメラの信頼性はハードの堅牢性とソフトの正確性によるものだが、このFAが先駆となったといっても過言ではない。
FM2に関しては、これはもうニコンというより日本のカメラの名機に挙げていいだろう。
このカメラほどシンプルで丈夫で使いやすいカメラはない。
これ1台あればアフリカのジャングルでも北極のブリザードのなかでも撮影できそうだ。
総じてニコンのカメラは頑丈だというイメージは、こういう中級機でも手を抜かずに造りこんでいるところから発せられるのだと思う。
当時まだアマチュアであったわたしはいろいろなメーカーのカメラを使っていた。
キヤノン、オリンパス、ペンタックス、ミノルタ、コンタックス、ヤシカ、富士フィルム。
(ニコンを使っていないのはヘリコイドの回転方向が逆であったから)
山のようにあったこれらのカメラはもう1台もない。
いま手もとにあるカメラは、プロになってから買ったライカとニコンだけだ。
いまだにフィルムカメラをつくり続けているメーカーだけが残ったのは当然というべきか。
ああ、久しぶりにフィルムで撮りたくなった。