ノーベル賞受賞作家ゴールディングの代表作。舞台は近未来の戦争下。少年達が疎開のために乗り込んだ飛行機が敵軍の攻撃により墜落。彼らは南太平洋の無人島に漂着する・・・・なんていう設定からするとジュール・ベルヌの「十五少年漂流記」を思い出すが、この作品は「十五少年~」の悪意に満ちたパロディのようなダークな雰囲気を持ち合わせている。
理性的な者をリーダーとして、まとまろうとしたのも束の間、早々と人間性を喪失した連中との内ゲバが勃発し、悲惨な展開になってゆく。「人間が作り上げたシステムなど、極限状態になったり個々人が自助努力を怠ったりすれば、簡単に崩壊してしまうものだ」といった作者のシニカルな主張(考えてみれば、アタリマエの話)が見えてくるようだが、これを「子供をダシに使って描こう」とするあたり、相当に根性が悪い。さすが皮肉が大好きなイギリス人だ(笑)。
子供達をカタストロフに導く「獣」の存在を「社会不安」の象徴にしているところなど、いくぶん図式的な設定が鼻につかないでもないが、鮮やかな筆致は最後まで読者を離さない。中高生にこっそりと薦めたい本である。なお、ハリー・フック監督による映画化版も観ているが、派手さはないものの、手堅い出来であったと記憶している。
理性的な者をリーダーとして、まとまろうとしたのも束の間、早々と人間性を喪失した連中との内ゲバが勃発し、悲惨な展開になってゆく。「人間が作り上げたシステムなど、極限状態になったり個々人が自助努力を怠ったりすれば、簡単に崩壊してしまうものだ」といった作者のシニカルな主張(考えてみれば、アタリマエの話)が見えてくるようだが、これを「子供をダシに使って描こう」とするあたり、相当に根性が悪い。さすが皮肉が大好きなイギリス人だ(笑)。
子供達をカタストロフに導く「獣」の存在を「社会不安」の象徴にしているところなど、いくぶん図式的な設定が鼻につかないでもないが、鮮やかな筆致は最後まで読者を離さない。中高生にこっそりと薦めたい本である。なお、ハリー・フック監督による映画化版も観ているが、派手さはないものの、手堅い出来であったと記憶している。


