ブルックリン出身の男女6人編成のバンド、ダーティー・プロジェクターズによる「ビッテ・オルカ」はちょっとした“衝撃”だった。これは彼らの5枚目のアルバムということだが、私は彼らのサウンドを聴くのは初めて。とにかく一度接したら忘れられないほどのインパクトがある。オルタナティヴやグランジ系のロックをベースとしていながらも、ヒップホップやリズム&ブルース、クラシックのテイストやトラッド・フォークの要素も取り入れ、しかもそれらが個別的に並べられるのではなく、有機的な厚みを持ってリスナーに迫ってくる。
異彩を放つのは全編を覆う女性コーラスで、ブルガリアン・ヴォイスのような清涼さを見せるかと思えば、変拍子の大きな触れ幅を伴ったエキセントリックな展開に突入するというような、聴く者の予想を良い意味で裏切り続けるハーモニーは息もつかせないほどスリリングだ。通常、このような凝ったサウンド・デザインの音源はスタジオ録音で真価が発揮されると思いがちだが、実はライヴの方がもっと凄いのだという。とにかく、着想と演奏能力でUSインディー・シーンをリードする逸材であることは間違いない。必聴だ。
次に紹介するのが、オレゴン州ポートランド在住のジャズ・ベーシスト兼ヴォーカリストのケイト・デイヴィスのファースト・アルバム「イントロデューシング」。アコースティック・ベースを弾きながら歌う女性ジャズ・ミュージシャンとしては以前紹介したニッキ・パロットがいるが、大人の色香で迫るパロットに対してこちらは二十歳前の若さ(レコーディング時は高校生だったらしい)。しかもジャケット写真からも分かるように、外見は完全なアイドル系。ところが、サウンド自体はけっこう本格派なのだ。
冒頭、いきなり速いテンポのベースのソロから始まる。ヴォーカルが挿入されるのがその後であり、いかにも“ルックスだけで売っているのではなく、テクニックも確かなのだ”という気負いが感じられる。実際に演奏技巧面では堅実だが、ヴォーカルはさらに良い。曲はスタンダード・ナンバー中心で、ベテランの深みは出せない代わりにストレートかつストイックに歌い上げており、若さ溢れるパフォーマンスは実に好ましい。また特筆すべきは録音の良さで、小細工のない清涼な音像が的確な距離感を伴って配置される。今のところ輸入盤でしか手に入らず、置いてある店も限られるが、聴いて損のない佳篇である。
デンマークのコペンハーゲンに住むジャズ・ピアニスト平林牧子が、自らのトリオを率いて吹き込んだ2枚目のアルバム「ハイド・アンド・シーク」は、雑誌「ジャズ批評」の2009年度のディスク大賞を獲得した話題作。実際に聴いてみると、期待に違わぬ密度の高さを感じることが出来る。メロディ・リズム共なかなか攻撃的で、聴き手に緊張感を与えるものの、決して突き放してはいない。フッと挿入される美しいメロディは素晴らしく効果的だし、鮮やかなハーモニーには圧倒される。
平林自身の実力もさることながら、ドラムスを担当している女流パーカッショニスト、マリリン・マズールの存在感も見逃せない。マズールはマイルス・デイヴィス・グループ等でのプレイで異彩を放っていたが、ここでも変幻自在のビート展開を次から次へと繰り出し、トリオの演奏に強い求心力を与えている。それから国内盤はHQCD仕様のためか、本当に音が良い。ちょっと聴いた感じではヌケが悪いように思われるが、やがてその広大な音場の表現性(特に奥行き)に驚くことになる。前述のケイト・デイヴィスのアルバムと同様、オーディオシステムのチェック用にも使える優秀録音盤だ。
異彩を放つのは全編を覆う女性コーラスで、ブルガリアン・ヴォイスのような清涼さを見せるかと思えば、変拍子の大きな触れ幅を伴ったエキセントリックな展開に突入するというような、聴く者の予想を良い意味で裏切り続けるハーモニーは息もつかせないほどスリリングだ。通常、このような凝ったサウンド・デザインの音源はスタジオ録音で真価が発揮されると思いがちだが、実はライヴの方がもっと凄いのだという。とにかく、着想と演奏能力でUSインディー・シーンをリードする逸材であることは間違いない。必聴だ。
次に紹介するのが、オレゴン州ポートランド在住のジャズ・ベーシスト兼ヴォーカリストのケイト・デイヴィスのファースト・アルバム「イントロデューシング」。アコースティック・ベースを弾きながら歌う女性ジャズ・ミュージシャンとしては以前紹介したニッキ・パロットがいるが、大人の色香で迫るパロットに対してこちらは二十歳前の若さ(レコーディング時は高校生だったらしい)。しかもジャケット写真からも分かるように、外見は完全なアイドル系。ところが、サウンド自体はけっこう本格派なのだ。
冒頭、いきなり速いテンポのベースのソロから始まる。ヴォーカルが挿入されるのがその後であり、いかにも“ルックスだけで売っているのではなく、テクニックも確かなのだ”という気負いが感じられる。実際に演奏技巧面では堅実だが、ヴォーカルはさらに良い。曲はスタンダード・ナンバー中心で、ベテランの深みは出せない代わりにストレートかつストイックに歌い上げており、若さ溢れるパフォーマンスは実に好ましい。また特筆すべきは録音の良さで、小細工のない清涼な音像が的確な距離感を伴って配置される。今のところ輸入盤でしか手に入らず、置いてある店も限られるが、聴いて損のない佳篇である。
デンマークのコペンハーゲンに住むジャズ・ピアニスト平林牧子が、自らのトリオを率いて吹き込んだ2枚目のアルバム「ハイド・アンド・シーク」は、雑誌「ジャズ批評」の2009年度のディスク大賞を獲得した話題作。実際に聴いてみると、期待に違わぬ密度の高さを感じることが出来る。メロディ・リズム共なかなか攻撃的で、聴き手に緊張感を与えるものの、決して突き放してはいない。フッと挿入される美しいメロディは素晴らしく効果的だし、鮮やかなハーモニーには圧倒される。
平林自身の実力もさることながら、ドラムスを担当している女流パーカッショニスト、マリリン・マズールの存在感も見逃せない。マズールはマイルス・デイヴィス・グループ等でのプレイで異彩を放っていたが、ここでも変幻自在のビート展開を次から次へと繰り出し、トリオの演奏に強い求心力を与えている。それから国内盤はHQCD仕様のためか、本当に音が良い。ちょっと聴いた感じではヌケが悪いように思われるが、やがてその広大な音場の表現性(特に奥行き)に驚くことになる。前述のケイト・デイヴィスのアルバムと同様、オーディオシステムのチェック用にも使える優秀録音盤だ。