元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「第21回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2024-08-10 06:39:31 | プア・オーディオへの招待
 アナログレコードの復権が顕著になってかなりの時間が経っているが、今回も各社から意欲的なレコードプレーヤーの提案が成されていた。その中で目立っていたのは、神奈川県茅ヶ崎市の精密切削加工部品のメーカーである由紀精密が発売したAP-01だ。定価は429万円とかなり高いが、その構造とエクステリアは独創性が高く、専門誌のアワードも獲得している。

 モーターからトーンアームまですべて自社開発。シンメトリーレイアウト糸ドライブや永久磁石による非接触軸受など、マニア心をくすぐる仕掛けがフィーチャーされている。他社製品との聴き比べは叶わなかったが、安定した動作とスクエアーな音出しは、本機の性能の高さが十分窺われるものだ。そして何より、一見オーディオ業界とは関係なさそうな分野のメーカーがこのようなモデルを手掛けたというのは、興味深くも心強いものがある。



 70年代に米国西海岸に創設された高音質レーベルのモービル・フィデリティ社が、ハードウェア分野に進出して展開するMoFi ElectronicsブランドのレコードプレーヤーMaster Deck(定価110万円)も魅力的なモデルだった。仕上げがキレイなのはもちろん、そのトレース能力は恐ろしく高い。普通のプレーヤーでは演奏困難な反りが酷いディスクでも、楽々ドライブしてしまう。シビアな調整と整えられた動作環境が必須の高級プレーヤーも悪くはないのだが、レコードの状態をあまり気にせずに済む、こういう機器も貴重なものだ。

 ジャズシンガーのMAYAによるトークショーをはじめ、会場ではいろいろな出し物が用意されていたが、そのおかげか女性の入場者も目立つようになってきたのは喜ばしいことだ。もちろん、総入場者数としてはまだコロナ禍前の賑わいには戻っていないと思うが、今後も続けて欲しい。しかし、会場のロケーションは再考の余地があるのではないか。



 近年福岡市では“天神ビッグバン”や“博多コネクテッド”と銘打った都市再開発計画が進んでいる。最終的には100棟以上のビルが建て替えられるとのことだが、現時点でも催し場に十分使えそうなスペースを備えた大型ビルがいくつか竣工済だ。当然のことながら使用料は安くはないと思うのだが、オーディオ関係のイベントが幅広い層の目に留まれば、中長期的には新たな需要の創出に繋がるのではないだろうか。

 取り敢えずは、来年からの開催時期は従来通りの春期に戻るらしい。もちろん、都合が付けば私も足を運ぶつもりである。

(この項おわり)
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「第21回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その1)

2024-08-09 06:36:01 | プア・オーディオへの招待
 去る2024年8月2日から4日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。例年このイベントは3月から5月の連休の間に実施されていたが、本年は会場がその時期に工事中だったとのことで、この盛夏の時期に開かれる運びになった。

 とはいえ、今まで経験したことが無いほどの酷暑の中、市内中心部から離れた会場まで行くのは、見学者にとってかなりの難行苦行だったのは間違いない。かくいう私も、家に帰り着いた時には疲労困憊状態である(熱中症の一歩手前だったのかも ^^;)。その意味でも、現場で汗をかいていた各メーカーや輸入代理店のスタッフたちには“お疲れ様でした!”と言いたい。



 印象に残った製品としてまず挙げたいのは、MARANTZの新作アンプMODEL M1である。見た目は幅22センチ弱で高さ8センチ強の、ただの黒い箱だ。ボリュームをはじめ、本体にはツマミらしきものは無い。だが、これは立派なプリメインアンプである。ただし“ワイヤレス・ストリーミング・アンプ”と銘打っているように、従来製品とは異なるコンセプトが採用されている。

 操作はスマートフォンあるいはタブレット端末にダウンロードされた専用アプリにより行なわれ、もちろんワイヤレスで動作する。DAC内蔵でネット上のハイレゾ音源を含むデジタルオーディオを楽しむことが可能。HDMI端子が搭載されているため、テレビとも接続が出来る。そして通常のRCA入力端子も配備されており、CDプレーヤーなどとの結線もカバーしている。

 本機の価格は15万4千円で、ハイエンド機器ばかりが並ぶ当イベントの出品物の中では珍しく安価だ。ただし駆動力はけっこうあり、英国B&W社の高価格スピーカー801 D4 Signature(定価847万円)を朗々と鳴らしていた。メーカー担当者の話によると、MODEL M1は重厚長大なオーディオ機器を敬遠しがちな若年層をもターゲットに据えた商品らしい。市場の反応が注目される。



 東京都日野市に居を構えるガレージメーカー、SFORZATO社のネットワークプレーヤーDSP-Columba(定価180万円)も存在感を発揮していた。もっとも、インパクトが大きかったのは機器自体のクォリティではなく、同機が奏でるストリーミングサービスの音質である。

 かねてより、私はこのストリーミングサービスというのを信用していなかった。たぶん他の年配のオーディオファンもそうではないだろうか。何となく“圧縮音源ではないのか”とか“CDなどのフィジカルのメディアには後れを取るに決まっている”とかいう先入観があり、利用に踏み切れない向きも多いと思われる。だが、DSP-Columbaが提供する音(ソースはAmazon Music)は従来型メディアと遜色の無いレベルにまで高められており、これならば自室にCDライブラリーを揃える必要性はこれから小さくなるのではと思わせる。いずれにしろ、この分野のイノベーションは侮れない。

(この項つづく)
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北九州市のオーディオフェアに行ってみた。

2023-11-17 06:17:56 | プア・オーディオへの招待
 去る11月10日から12日にかけて北九州市のJR小倉駅の近くにあるアジア太平洋インポートマートで開催された、第37回九州オーディオ&ビジュアルフェアに行ってみた。このイベントにはコロナ禍の前より何回も足を運んでいたが、思い起こせば近年は11月末から12月にかけて開催されていたものだ。今回はそれほど気温が低くならない時期に実施してくれたのは有り難い。私もトシのせいか、寒さが身にしみる時分に遠出はしたくないのだ(笑)。

 さて、このフェアで一番印象に残ったモデルは、米ワシントン州に居を構える冷却装置のメーカーKoolance社が2013年に創立したオーディオブランド、KLAUDiOの新作アナログプレーヤーMagnezarである。前年の同イベントに出品されたESOTERICのレコードプレーヤーGrandioso T1の超弩級ぶりにも驚かされたものだか、今回はそれを上回るインパクトだ。



 永久磁石により重量級プラッター浮遊させ、モーターと接触させずに余計な振動をシャットアウトしているのはGrandioso T1と同じだが、Magnezarはさらにディスクとターンテーブルを完全に一体化させる“クランプ・システム”と称する仕掛けが施されている。これは従来から存在していた吸着式スタビライザーとは別次元のシロモノで、内外周両方で強引に力づくで押さえつけようというものだ。外周部では4kg、内周部でも2kgという負荷が掛かり、ディスク全体を限りなく水平に保持する。

 もちろん、キャビネットやターンテーブルは高剛性。見た目の圧力もかなりのものだ。なお、本モデルは今年(2023年)海外の展示会に出品されたばかりで、まだ価格が決まっていないという。いずれにしろ、値段も超弩級になるのは予想できる(苦笑)。とはいえ、こういう機器を間近で見られただけでも有意義だったと言えよう。



 他にもいろいろなモデルをメーカーの担当者や業界筋のジャーナリストの解説付きで試聴することができたが、その中でスタッフが発した言葉には感心した。それは“ソフトは宝だ”というものだ。ここでいう“ソフト”とは、ネット上で配信される“データ”のことではない。リスナーが身銭を切って買い求めたCDやレコードなどのフィジカルな媒体を意味する。

 もっとも、ネット配信もタダではないケースは多々ある。特に高音質なコンテンツならば値が張るだろう。しかし、フィジカルなメディアを手元に置いて大切に扱うってことは、ネット上の音楽データの管理とは別の話。ソースを“物”として見做せば、自然とそれを再生するシステムの選定と使いこなしにも気を遣いたくなるというものだ。

 余談だが、この会場のすぐ近くにはサッカーJリーグ三部に属するギラヴァンツ北九州のホームスタジアムであるミクニワールドスタジアム北九州がある。だからというわけでもないのだが、会場周辺にはギラヴァンツのポスターが少なからず貼られていた。しかしながら、同チームはリーグ最下位に沈んでいる。同じ福岡県内にあるアビスパ福岡がJ1で健闘しているだけに、何とか来シーズンからは奮起して欲しいものである。
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“ポタフェス2023”に行ってきた。

2023-09-15 06:09:13 | プア・オーディオへの招待
 去る9月10日(日)、福岡市中央区天神のアクロス福岡にて開催された“ポータブルオーディオフェスティバル(通称:ポタフェス)2023福岡”に行ってみた。このイベントはDAPやスマートホン等に繋ぐ小型の音響デバイス、主にヘッドフォンとイヤホン類の展示会である。とはいえ、その日は別に用事があったので、会場にいたのは1時間あまりだ。しかも、各ブースは入場者でほぼ満席だったので試聴出来た機器はほんの数点である。それでも出品されているアイテムには印象的なものがあったので、いくつかリポートしたい。

 広島市にあるカイザーサウンド(有)が展開するRosenkranzブランドは個性的なスピーカーやアンプの送り手として知られているが、近年イヤホンもリリースするようになったことを今回の展示会で初めて知った。今回聴いたのはそのハイエンドモデルで、何と100万円だという。音質は確かに良く、欠点が見つからない。しかし、これが果たして100万円の価値があるのかどうかは(比べる物が無いという意味で)不明だ。次に聴いたのがこのモデルのノウハウを活かしてコストダウンしたという5万円のローエンド製品だが、これは優れものだと感じた。もちろん上級クラスほどの凄みは無いが、滑らかで端正な音を奏でてくれる。価格を考えればお買い得で、実際かなり売れているとのことだ。



 英国のROCK JAW AUDIO社が提供するワイヤレスイヤホンは、高度の電気伝導性を持つカーボンナノチューブを振動板に採用した意欲作だという。ただし、驚いたのはその音だ。実に柔らかくてノーブルな展開。刺激的な音を一切出さない。まさしくこれは、HARBETHSPENDORといったイギリスの老舗のスピーカーメーカーと同系統のサウンドである。まさかイヤホンにもそのテイストが反映されているとは思わなかった。オーディオ伝統国の奥は深い。

 高級ヘッドフォンをリリースするHIFIMANは米国に本拠を置くメーカーだが、発祥は中国らしく、どうやらCEOも中国系のようだ。だからというわけでもないだろうが、製品を実際聴いた感じは謳い文句のスタジオモニターライクというより、開放的で屈託無くストレスフリーで楽しませるタイプ。ただし、決して大味ではなく細部の表現力にも優れている。価格は20万円台後半と強気だが、それだけの価値はあると思う。



 我が国のハイエンド型ヘッドフォンの作り手として昔から知られるSTAXも製品を展示していた。お馴染みの静電型イヤースピーカーとヘッドフォンアンプとのペアで、自然な音場とキメ細かい音像表現を実現。価格はかなり高いが、さすが“クラシックを聴けるヘッドフォン”として1960年代から長い間ビジネスを展開していただけのことはある。今後とも末永く製造を続けて欲しい。

 前回福岡でこのイベントが開催されたのは2019年だが、今回も入場客は若年層(女子も含む)が中心。しかし、私のようなオッサンも散見される(笑)。デカいシステムで音楽を聴くことの困難性に今さらながら年配層も直面し始めたのか、あるいはポータブルオーディオの分野が質量共に充実していることに気付いたのか、実相は明らかではない。しかし、幅広いユーザーにアピールしていること自体は好ましい。また当地で開催された際には、足を運ぶつもりである。
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「第20回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2023-04-01 06:21:06 | プア・オーディオへの招待
 オーディオシステムの音の方向性を最も大きく左右するのがスピーカーであることは論を待たないが、トールボーイ型などのフロアスタンディング・タイプと、ブックシェルフ型などのコンパクトなモデルは、果たしてどちらが良いのか、改めて考えてみた。・・・・などと書くと“そんなのはケースバイケースで考えれば良い話で、一概に決めつけるようなことではない。まあ、フルオーケストラを聴くならばフロア型が有利なのは確かだが”というような正論が返ってくるのだろうが、事はそう単純ではない。

 例えば、管弦楽曲を主に聴くユーザーの前にほぼ同じ価格で同一メーカーのフロア型とコンパクト型が並んでいたら、どちらを選ぶ方が賢明なのか。結論から書くと、オーケストラを鳴らすから無条件でフロア型を選ぶというのは、実は少しも賢明ではないのだ。だだっ広い応接間にシステムを置くのならばともかく、六畳間や八畳間程度ではフロア型のスケール感を十分な音圧で堪能するのは難しい。それよりも音色や音像の再現性などの音質自体を重視した方が良い結果につながる。



 どうして以上のようなことを考えたかというと、フェア会場では同一メーカーであまり価格差のないフロア型とコンパクト型を聴き比べる機会があったからだ。大抵の場合、各ブランドは複数のシリーズを用意している。ここで言うフロア型というのは下位シリーズの最上位機、コンパクト型は上位シリーズのローエンドモデルだ。結果は一目瞭然ならぬ一聴瞭然で、スケール感こそフロア型に分があるが、音質は上位シリーズのコンパクト型の圧勝である。

 シリーズが違えば設計コンセプトや使用部材のグレードも異なるわけで、上位シリーズは下位モデルでもその姿勢は一貫している。スピーカーをサイズだけで選ぶと決して幸せにはなれないのだという、いわば当たり前のことを再認識した。もっとも、音質よりも見た目の存在感(≒圧迫感)を重視するユーザーもいることは承知しているし、外野がそんな個的な趣味嗜好を否定する筋合いは無いことは確かだ。

 さて、ハッキリ言って今回のフェアもコロナ禍の前ほどの客足は戻っていないと感じた。福田雅光によるイベントも、以前は客席がぎっしりと埋まって入場できない者も少なからずいたほどだが、今はそうでもない。これは何回も書いていることで読者諸氏諸嬢から“いい加減にしろ!”というお叱りを受けるかもしれないが、もうちょっと集客を狙った方が良い。



 主催者側としては、交通の便が悪い福岡国際会議場を使わざるを得ない事情があるのかもしれないし、収支面では問題ない可能性もあるが、さらなる盛り上がりを期待したいのが正直なところだ。マーケティングの手法としてはいろいろと考えられるし、それが無理ならば専門の業者に運営を外注しても良い。とにかく、相変わらず小金を持っていそうな団塊世代ばかりを相手にしていては先が見えている。若い層や女性客を取り込むような姿勢を見せてほしい。

 とはいえ、開催してくれたこと自体は有難い。気が付けば、私は主催元のマックスオーディオからは音楽ソフトこそ何回も購入しているが、機器を買ったことは無い(苦笑)。直近にはオーディオシステムをグレードアップする予定は無いのだが、もしもそのタイミングが来たら、このショップも購入先の候補にしようかと思う。

(この項おわり)
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「第20回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その1)

2023-03-31 06:22:46 | プア・オーディオへの招待
 去る3月24日から26日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。今年は20回という節目であることもあり、コロナ禍で長らく実施していなかったオーディオ評論家の福田雅光の司会による“オーディオアクセサリーの聴き比べ大会”が開催された。

 今回のネタは仮想アースとクリーン電源装置である。結論から先に言えば、これらのアクセサリーを使用することによるメリットはあると思う。聴感上のS/N比や音場の見通しなどが、非使用時に比べてアップしているのが見て取れる。ただし、敢えてこれらを導入する価値があるかどうかは、意見が分かれるところだ。なぜなら、いずれも財布には優しくないからだ。



 たとえば、クリーン電源装置の代表モデルであるACCUPHASEのPS-1250の価格は税込で88万円もする。この金額を文字通り“アクセサリー費用扱い”でポンと出せるハイエンドユーザーだけが購入の対象にするような性格の商品だ。大半のユーザーは、それだけの予算があるならばスピーカーやアンプなどの主要コンポーネントのグレードアップに回すだろう。

 さて、2022年11月に北九州市で開催されたオーディオフェアで紹介されていたESOTERICの超弩級レコードプレーヤーGrandioso T1(定価700万円)が今回も展示されていたが、関係者の説明によると、実はこの機器にはユニークな機能が付与されているらしい。それは、モーターとターンテーブルを接触させずに駆動させるマグネドライブ・システムを採用しているこのモデル、モーターとターンテーブルの“距離”を調節してトルク(回転力)を弱めることも出来るのだという。

 どうしてそんな機能があるのかというと、トルクを故意に低下させることによりBGM的なソフトな音にするためらしい。通常、トルクなんて大きければ大きいほど音質がアップして好都合だと思われるが、あえてローファイをセレクト可能にするあたり、このブランドはある意味ユーザー思いなのかもしれない。そういえば新製品のプリアンプGrandioso C1X solo(定価200万円)は、音をフェードアウトする際のレベル設定が出来るという。果たしてその機能が必要なのかは不明だが、特性追及一辺倒ではない姿勢を示そうとしているあたりは興味深い。



 ACCUPHASEのブースで面白かったのが、同社が引き受けた機器の修理案件が紹介されていたことだ。このメーカーはどんなに古いモデルでも原則修理を引き受けてくれるのでユーザーからの信頼度も高いが、中には困ったケースもあるらしい。アンプのケースを開けてみると埃が山のように積もっていて、何とか除去してユーザーに返却したものの、間を置かず同じ症状で再修理の依頼が舞い込んだという。つまりは、凄まじく不潔な環境で使用されていたということで、そんな状況で高級オーディオ機器を使うなと言いたい。

 また、適度に温かいアンプの上部パネルが飼い猫の寝床になってしまい、そのままオシッコを漏らして(笑)アンプが動作不能になった例もあるとか。猫の小便は金属を錆び付かせる効果が高いとかで、かなりの部品が使い物にならなくなる。驚いたことに、このような事例は同社だけで年間10件以上発生するらしく、最近のペットブームはオーディオファンにとっては大きな不安要因になりつつあるようだ。

(この項つづく)
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音楽ストリーミングサービスの導入を検討してみる。

2023-01-20 06:20:45 | プア・オーディオへの招待
 去る1月13日、音楽配信サイトe-onkyoの運営元であるXandrie(ザンドリエ) Japanは、2023年度後半にストリーミングサービスをフランス発のハイレゾ音楽配信キャリアQobuz(クーバス)へ移行することを発表した。実現すれば、国内外の約9000万曲がハイレゾ仕様で商品ラインナップとなるという。

 元よりXandrieはQobuzの関連会社であり、今回明らかにした施策は2021年から準備していたらしい。もう一つの世界的サブスクリプション大手TIDAL(タイダル)の日本での正式サービス開始が未定である現在、音楽ファンにとっては耳寄りなニュースになりそうだ。しかもJ-POPの音源も豊富なe-onkyoとの提携は、上手くいけば多くの国内ユーザーを獲得できるかもしれない。



 今のところ、ハッキリとした運用開始時期は確定しておらず、新たな料金体系も明示されていないが、条件次第では私も導入を検討したいと思っている。理由は、最近パッケージメディアの収納スペース確保が厳しくなってきたからだ。LPレコードはあと数十枚しか増やせないし、CD保管棚も満杯になりつつある。あまり聴かないディスクは適宜処分するとしても、いずれは限界に達する。対してストリーミングサービスを利用すれば、その心配は無い。

 もっとも、私は以前ハイレゾ音源のネット配信についてネガティヴな意見を表明したことがあったが(苦笑)、あれは10年近く前の話。あれからPCオーディオに関するイノベーションは進んだらしく、総合音楽再生ソフトもRoonのような優れモノがリリースされてきた。取り入れるだけの環境は揃ってきたと言える。

 しかしながら、導入にはまとまった資金は必要だ。まず、パソコンはもう一台欲しい(在宅勤務用の予備機を兼ねる)。DACの更改も必要になってくるかもしれないし、Roonのライセンス料もバカにならないだろう。調子に乗ってスピーカー等の買い替えまで考えるようになったら、泥沼にハマりそうである。物事、そう上手くはいかないものだ(^^;)。
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北九州市のオーディオフェアに行ってきた。

2022-12-02 06:26:25 | プア・オーディオへの招待
 去る11月25日から27日にかけて北九州市のJR小倉駅の近くにあるアジア太平洋インポートマートで開催された、第36回九州オーディオ&ビジュアルフェアに行ってみた。このイベントに足を運ぶのは(コロナ禍もあって)4年ぶりだったが、とりあえずは実施してくれただけでも有り難い。

 まず印象に残ったのは、ESOTERICが創立35周年を記念してリリースしたレコードプレーヤーのGrandioso T1である。ESOTERICはTEACのハイエンドブランドで、一般人が気軽に手を出せるような値付けはされていない。この機種も700万円という高額商品だ。しかしながら、無視できない画期的な技術が採用されている。



 マグネシステム・ドライブと呼ばれる新開発の駆動方式は、モーターとターンテーブルが接触していない。磁力によって重量級プラッターを回転させている。そのため、モーターの振動がターンテーブルには一切伝わらないという。結果として、聴感上のS/N比(信号に対する雑音の比率)を限りなく低く抑えることが可能になったとのことだ。

 正直言って、これほどの価格帯で本機が他社製品と比べてどの程度音質的な優位性を確保しているのかは不明だ。しかし、原理的にモーターからのノイズをキャンセル出来るのならば、サウンド面でのアドバンテージは十分確保されていると思う。願わくばこのテクノロジーを普及価格帯にも反映させて欲しい(まあ、たとえ展開できても一般ピープルにとっては十分な高価格にはなるのだろうが ^^;)。



 国内高級ブランドの雄ACCUPHASE社の、創立50周年記念モデル一式も展示されていた。どれもハイエンド機ながら、コンスタントに製品を発表し続けている姿勢は評価すべきだろう。特に純A級モノフォニック・パワーアンプのA-300など、この仕様ならばコストパフォーマンスは高いとも言えるのだ。

 余談だが、同じ時期に近くでKPF(北九州ポップカルチャーフェスティバル)なるイベントが実施されており、オーディオフェアと同フロア(別ルーム)が更衣室兼控室になっていた。そのためロビーはアニメのコスプレをした若い女子でごった返しており、オッサンの私としては大いに面食らった(笑)。ただ、オーディオフェア側としても高級オーディオシステムでアニソンをガンガン鳴らして若い衆の興味を誘うぐらいのことはやった方が良かったと思う。もちろん最近の若い者に値の張る機器を買わせるのは難しいだろうが、趣味のオーディオという存在を知らしめるだけでも価値がある。
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「第19回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その2)

2022-04-03 06:10:28 | プア・オーディオへの招待
 スコットランド中南部ラナークシャ―地域に本社を置くFYNE AUDIO社は、2017年創業の新興スピーカーメーカー。注目すべきはその開発スタッフの中に、元TANNOY社のチーフ・ディレクターがいることだ。英国TANNOY社のスピーカーといえば、米国JBL社と共に古くから高級舶来品の代名詞であった。しかしながら近年は多彩な輸入製品に押され、独特の音色を好む一部のファンだけのブランドになった感がある。その意味で、TANNOYを“卒業”したエンジニアがどういう音作りをしたのか、とても興味があった。

 試聴できたのは、小型スピーカーのF500。ピアノグロス仕上げのバージョンで価格は23万円という、このフェアでは場違いなほど安価なモデルだ(笑)。高さが30センチ強のブックシェルフ・タイプだが、作りは高級感がある。しかも、本国生産だ。同軸2ウェイというユニットはTANNOYのモデルと通じるものがあるが、音の出方はかなり違う。



 かなり密度が高いサウンドだ。高音から低音まで、キッチリと出ている。特筆すべきは低域の豊かさで、サイズを感じさせないほどスケールの大きな展開が見られる。音色は明るいが、強いクセは無く、幅広いジャンルをこなせそうだ。少なくともTANNOYとはまったく異なるコンセプトで、誰にでも奨められる。そして何といっても、犯罪的なほど高いプライスタグが付いていないのは良心的だ。

 協同電子エンジニアリングが展開するPhasemationブランドは、フォノアンプの分野では定評があり、私もそのエントリークラスの製品を愛用しているが、このフェアではフォノ・イコライザーの聴き比べという面白い試みを披露していた。なお、フォノアンプというのはレコード再生に欠かせないアタッチメントで、昔はアンプに内蔵しているのが常だったが、近年は独立したコンポーネントとして幅広く認知されている。

 同社の各価格帯の製品によって音がどれほど違うのかをデモしていたが、これがまあ驚くほど差が大きい。システム自体のグレードが完全に異なって聴こえるほどの激変ぶりだ。やはり、構成物によってサウンドが千変万化するというのがアナログの醍醐味なのだろう。この趣味性の高さは、デジタル音源とはひと味もふた味も違っており、廃れることは無いと確信できる。



 今回のフェアは前回同様、出品数が少ないのが気になったところだが、早くコロナ禍より前の状態に戻って欲しいことを願ってやまない。あとひとつ注文を付けるならば、福岡国際会議場は交通の便が悪いので、もっと駅に近い場所でやってほしい。そういえば、昔は別のオーディオフェアが福岡市中央区の天神地区で開催されていたが、そういうのが好ましい。

 蛇足だが、会場の近くにある長崎県対馬市のアンテナショップで今回も“お土産”を購入した(笑)。“対馬とんちゃん”と呼ばれる、醤油や味噌などをベースにした甘辛の焼肉ダレに漬けこんだ豚肉である。これが実に美味い。ご飯もビールも進む進む。対馬は海産物も豊富なので、次はそっち方面の食材を入手したいと思う。

(この項おわり)
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「第19回九州ハイエンドオーディオフェア」リポート(その1)

2022-04-02 06:10:10 | プア・オーディオへの招待
 去る3月25日から27日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。昨年(2021年)に引き続きコロナ禍が完全に収束していない時期にも関わらず、あえて実施してくれたのは評価したい。もちろん、コロナ禍前の賑やかさは戻ってはいないが、普段接することの出来ない機器を紹介してくれるだけでも有意義である。

 印象に残ったモデルを挙げたいが、まずインパクトが強かったのは、フランスのAudioNec社のスピーカー、EVO lineである。デモ機として実装されていたのは二番目に値段の安いEVO 2だが、それでも約600万円という超高額商品だ。しかしながら、その音は思わず耳を傾けてしまうほど清新で魅力的である。



 当製品の音の傾向を決定付けているのが、400Hzから20kHzまでの帯域再生を受け持つドライバーユニットである。特殊素材の振動板によるこのコンポーネントは、360度の指向性を持つ。したがって、音場は広大だ。特に横方向にどこまでも展開するサウンド空間の創出には舌を巻いた。音色はフランス製品らしい(?)蠱惑的な色気を含みつつ、圧倒的に明るいクリアネスを達成。もちろんジャンルを選ばない。このブランドは日本初上陸ということだが、これよりもっと高価なClassic lineというシリーズもあり、そっちの方も聴いてみたいものだ(もちろん、ほとんどの消費者には買えないのだが ^^;)。

 ドイツのFink teamも昨年日本に紹介されたばかりのスピーカーブランドだ。聴けたのは、KIM(キーム)というモデルである。形状は昔懐かしい大型ブックシェルフで、見た目は80年代に日本で一世を風靡した“598スピーカー”にも通じるところがあるが、値段は約180万円と、おいそれと手を出せないプライスタグが付いている。

 このスピーカーの音色は独特だ。例えて言うと“スモーキー”なのである。少しくすんだような、ソウルフルな(?)サウンドが楽しめる。透明度や解像度を追求したような音作りではなく、味わい深いテイストでリスナーを引き込もうという方向性が感じられる。もちろん、作り手たちは“ナチュラルなサウンドを提供した”という自負があるのだろうが、個人的にはキャラクターの濃い製品だと思った。この個性はジャズ系にマッチする。ただし、ジャズに特化したような米国JBL社の製品とは違い、独自の語り口で幅広いジャンルを網羅してくれそうだ。



 Wilson Audioといえば、74年に創設されたアメリカの著名なハイエンド大型スピーカーの作り手で、私も試聴会などで何度か接してその繊細かつ恰幅の良い音に感心したものだ。ところが今回同社は珍しくミニサイズのモデルを出してきた。それがTune Totである。高さが38cmほどの可愛い小型ブックシェルフだが、価格の方は188万円と、全然可愛くない(笑)。

 とはいえ小さいながら、しっかりとこのブランドの音を出すのは大したものだ。明るく屈託の無い鳴り方ながら、聴感上の物理特性はかなり詰められており、何を聴いても破綻することはない。低域のスケール感はサイズを考えれば随分と健闘しているし、堅牢な中高域は立体的なサウンドステージを再現している。この寸法のモデルを代表するハイ・クォリティの製品だと言えそうだ。

(この項つづく)
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