(原題:MARVEL'S THE AVENGERS )とても楽しめた。余計な講釈は抜きにして、単純明快路線に専念しているのが潔い。基本的にはケネス・ブラナー監督の「マイティ・ソー」の続編という形を取り、雷神ソーに追われて異次元宇宙から地球にやってきた邪神ロキと“ヒーロー戦隊アベンジャーズ”とのバトルを描くのだが、そのアベンジャーズの面々とはアイアンマンやハルクをはじめとする“マーベル・シネマティック・ユニバース”のオールスターキャストである。
通常、何人もの濃い連中をまとめて主人公として扱う場合、それぞれのプロフィール紹介に相当な時間を費やす必要があるのだが、今回は“皆おなじみのキャラクターだから、そのへんはサッと流していこう”みたいなノリで端折っているのが痛快だ。しかも“元ネタを知っていないと全く楽しめない”という不親切なところもない。たとえそれぞれの登場人物が活躍する“前作”を観ていなくても、ドラマ運びには支障がない程度のフォローをキチンと入れている。
集まったヒーロー達は最初まるで協調性がないところが描かれるが、強い奴らが集まれば往々にしてそんなものであり、別に“このメンバーだからチームワークがなかなか成立しないのだ”といった限定的な話には持って行かない。いろいろと反目し合うけど、やがて力を合わせて強大な敵に立ち向かうという、ドラマの目的に寄り道せずに突き進む迷いの無さが心地良く感じる。
脚本も担当しているジョス・ウェドン監督の仕事ぶりは堅実そのものだ。メンバーの得意技を一目瞭然に提示し、各人しっかりと見せ場を用意している。特定の登場人物に必要以上に肩入れせず、それどころかアベンジャーズ以外の善玉キャラの扱いにもしっかりと目を配り、不自然な部分を極力無くしていこうという姿勢は見上げたものである。
アクション場面については申し分ない。おそらくはサマーシーズンに公開されるヒーロー物の中ではベストであろう。観る者を退屈させないように次から次に見せ場が用意されているのは当然ながら、地上で戦うメンバーと“飛び道具”主体の連中とを(テンポの面で)巧みに描き分け、活劇場面にメリハリを付けているのが嬉しい。
ロバート・ダウニー・Jr.やスカーレット・ヨハンソン、サミュエル・L・ジャクソンやジェレミー・レナー等、各キャストも実に楽しそうに演じている。アラン・シルヴェストリの音楽も快調だ。ラスト・クレジット後の“お楽しみシーン”も含めて、満足度の高い一編である。辛い浮き世を(一時でも)忘れるにはもってこい。娯楽映画はかくありたい。