(原題:LICORICE PIZZA)奇妙で、取り留めもない映画だ。似たようなシャシンを過去に観たような気がしたが、それは同じポール・トーマス・アンダーソン監督の手による「ブギーナイツ」(97年)だったことを思い出した。ただし、70年代末から80年代にかけてのポルノ業界をスケッチ風に描くという、明確な方向性を打ち出していたあの映画と比べると、本作の散漫な印象はより強い。いわば作者の心象の映像化というべきものだろう。
1973年のロスアンジェルスのサンフェルナンド・バレー。高校生のゲイリー・ヴァレンタインは学校に通う傍ら、母親の経営する芸能事務所を手伝ったり、俳優としても活動したりと忙しい日々を送っていた。あるとき、生徒の写真を撮るために学校に来ていたフォト・スタジオの店員であるアラナ・ケインと知り合い、ゲイリーは恋に落ちてしまう。とはいえ、相手は10歳も年上だ。対等な関係になるのは難しいと分かっていながら、彼は新たな儲け話を持ち掛け、アラナをビジネス・パートナーに誘うなどの猛チャージを開始する。
まず、いくらゲイリーに商才があっても、高校生の分際でカタギのビジネスを容易に立ち上げられるとは信じがたい。しかも、取引先として“その筋”の顔役たちをいつの間にか取り込んでいるという都合の良さ。かと思えば、時間の経過が不明確で、知らぬ間に主人公たちは年を重ねている。
通常の恋愛ドラマと同様、2人の関係は決して順風満帆ではなく、劇中ではいろいろと波風が立つ。しかし、それらが映画を盛り上げるモチーフにはなっていない。ただ何となくすれ違ったり、誤解したり、しばらく逢えなかったりと、通り一遍の退屈な筋書きを重ねるだけでストーリーを高揚させることはない。もちろん、熱いパッションといったものも見当たらない。こんな調子で2時間14分も引っ張ってもらっては、ひたすら眠気との戦いに終始するばかりだ。
登場人物たちは作者とは世代が違うので、個人的なノスタルジーを追ったものではない。では何なのかというと、この時代に生きた若者たちはたぶんこういう風景を見ていたのだろうという、勝手な想像だろう。そのノリに付いていける観客ならば別だが、そうでなければ評価する余地はない。
ゲイリー役のクーパー・ホフマンはフィリップ・シーモア・ホフマンの息子でこれがデビュー作。体型と不貞不貞しさは父親譲りかと思うが、あまりスクリーン映えする素材ではない。ヒロインを演じるアラナ・ハイムは、あのハイム三姉妹の一人だ。しかも、姉二人だけではなく家族総出でキャスティングされているのにはウケた。そしてその点が、本作で興味を惹かれた唯一のモチーフである。
あとショーン・ペンやトム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパーも出ているが、実質的に“友情出演”の域を出ない。ジョニー・グリーンウッドの音楽はあまり印象に残らず、使われている既成曲も大して面白いとは思えない。いっそのことハイムに楽曲を担当させた方が良い結果になったかもしれない。
1973年のロスアンジェルスのサンフェルナンド・バレー。高校生のゲイリー・ヴァレンタインは学校に通う傍ら、母親の経営する芸能事務所を手伝ったり、俳優としても活動したりと忙しい日々を送っていた。あるとき、生徒の写真を撮るために学校に来ていたフォト・スタジオの店員であるアラナ・ケインと知り合い、ゲイリーは恋に落ちてしまう。とはいえ、相手は10歳も年上だ。対等な関係になるのは難しいと分かっていながら、彼は新たな儲け話を持ち掛け、アラナをビジネス・パートナーに誘うなどの猛チャージを開始する。
まず、いくらゲイリーに商才があっても、高校生の分際でカタギのビジネスを容易に立ち上げられるとは信じがたい。しかも、取引先として“その筋”の顔役たちをいつの間にか取り込んでいるという都合の良さ。かと思えば、時間の経過が不明確で、知らぬ間に主人公たちは年を重ねている。
通常の恋愛ドラマと同様、2人の関係は決して順風満帆ではなく、劇中ではいろいろと波風が立つ。しかし、それらが映画を盛り上げるモチーフにはなっていない。ただ何となくすれ違ったり、誤解したり、しばらく逢えなかったりと、通り一遍の退屈な筋書きを重ねるだけでストーリーを高揚させることはない。もちろん、熱いパッションといったものも見当たらない。こんな調子で2時間14分も引っ張ってもらっては、ひたすら眠気との戦いに終始するばかりだ。
登場人物たちは作者とは世代が違うので、個人的なノスタルジーを追ったものではない。では何なのかというと、この時代に生きた若者たちはたぶんこういう風景を見ていたのだろうという、勝手な想像だろう。そのノリに付いていける観客ならば別だが、そうでなければ評価する余地はない。
ゲイリー役のクーパー・ホフマンはフィリップ・シーモア・ホフマンの息子でこれがデビュー作。体型と不貞不貞しさは父親譲りかと思うが、あまりスクリーン映えする素材ではない。ヒロインを演じるアラナ・ハイムは、あのハイム三姉妹の一人だ。しかも、姉二人だけではなく家族総出でキャスティングされているのにはウケた。そしてその点が、本作で興味を惹かれた唯一のモチーフである。
あとショーン・ペンやトム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパーも出ているが、実質的に“友情出演”の域を出ない。ジョニー・グリーンウッドの音楽はあまり印象に残らず、使われている既成曲も大して面白いとは思えない。いっそのことハイムに楽曲を担当させた方が良い結果になったかもしれない。