今回まず紹介したいのが、東日本大震災チャリティ・アルバムである「SONGS FOR JAPAN」だ。世界4大レコード会社(ソニー、ユニバーサル、ワーナー、EMI)がタッグを組み、レーベルの枠を超えて、世界のトップ・ミュージシャンたちの楽曲を集結させた2枚組。前にネット配信されて評判を呼んだ音源だが、今回市販CDとしてリリースされた。本ディスクの収益は、アメリカのソニー・ミュージックエンタテインメントを通じて義援金として日本赤十字社へ寄付される。
日本のためにこういう企画を立ち上げてくれたことは有り難いし、日の丸をあしらったジャケットも泣かせる。ただそれ以上に、本作が極めてコストパフォーマンスの高い商品であることに注目したい。ボブ・ディランからレディー・ガガまで新旧取り混ぜた多彩な顔ぶれが揃い、しかも各ディスク70分を超える長時間収録。これが1,500円で買えるのだから、音楽好きとしては喜ばずにはいられない。また圧縮音源であるネット配信に比べれば、CDの音質面でのアドバンテージも見逃せない。まさに一家に一枚の必携盤だ。
特にこのCDは、普段あまり海外のポップスを聴かない層にお奨めしたい。我々洋楽ファンにとってはお馴染みのビッグネームでも、邦楽オンリーのリスナーには縁遠いと思われるアーティストの作品も多数収録されている。チャリティ目的ということで、広範囲な消費者の購入の動機付けにも繋がるだろう。是非ともこのディスクを手にして、気に入ったサウンドを見付けて欲しい。
ロンドン出身の新進女性シンガーソングライター、イライザ・ドゥーリトルのデビュー・アルバム「イライザ・ドゥーリトル」は、その斬新な音造りで異彩を放っている。60,70年代のポップス、ソウル、オールディーズを基調に、レゲエやジャズ、ブルースなどのテイストを取り入れ、全体として独自のレトロな脱力系サウンドにまとめ上げるという、ありそうでなかなか無いことをやってのけている。
どのナンバーにも“刺激的”な部分はなく、コーラスや手拍子、口笛なども挿入された緩くてフワフワした世界が展開されるが、よく聴くとメロディ・ラインは計算され尽くしたように巧みだ。アレンジも凝っていて、いつまでも聴いていたいような明るい空気感を醸し出す。声の質も歌詞の内容もけっこうチャーミングだ。昨今はリリー・アレンやエイミー・ワインハウス、ダフィーなど英国出身の女性ミュージシャンの活躍が目立っているが、ドゥーリトルは21歳という若さと特異な音楽性で、屹立した存在感を発揮していると言える。今後の活躍に期待したい。
ハービー・シュワルツ・トリオの「トゥ・レイト・ナウ」は、ONKYOが提供する「MASTER OF SOUND」シリーズの第一弾で、録音は88年(今回が初CD化)。ハービー・シュワルツのベース、ビル・チャーラップのピアノ、トッド・ストレイトのドラムスという構成。人気ピアニストのチャーラップの初レコーディング作品でもある。スタンダード中心の選曲だが、技巧面では定評のあるメンバーが揃っているだけに、演奏は聴き応えがある。特にハービー・Sの流麗なパフォーマンスは、聴き手をとらえて放さない。
本作の一番の売り物は、サウンドデザインである。マスターテープからハイビット・ハイサンプリングによってデジタル変換し、その上で精細なマスタリングが施されており、極めて音の鮮度が高い。特に空間の再現性には卓越したものがあり、まるでニューヨークのクラブにいるような臨場感を味わうことが出来る。近年の旧譜のリマスターの成功例としてはビートルズの一連のアルバムなどがあるが、このディスクのように埋もれていた旧い録音を現在でも通用するような音のクォリティに仕上げる際にも有効な方法論であると思う。この調子でディスコグラフィを充実させて欲しいものだ。
日本のためにこういう企画を立ち上げてくれたことは有り難いし、日の丸をあしらったジャケットも泣かせる。ただそれ以上に、本作が極めてコストパフォーマンスの高い商品であることに注目したい。ボブ・ディランからレディー・ガガまで新旧取り混ぜた多彩な顔ぶれが揃い、しかも各ディスク70分を超える長時間収録。これが1,500円で買えるのだから、音楽好きとしては喜ばずにはいられない。また圧縮音源であるネット配信に比べれば、CDの音質面でのアドバンテージも見逃せない。まさに一家に一枚の必携盤だ。
特にこのCDは、普段あまり海外のポップスを聴かない層にお奨めしたい。我々洋楽ファンにとってはお馴染みのビッグネームでも、邦楽オンリーのリスナーには縁遠いと思われるアーティストの作品も多数収録されている。チャリティ目的ということで、広範囲な消費者の購入の動機付けにも繋がるだろう。是非ともこのディスクを手にして、気に入ったサウンドを見付けて欲しい。
ロンドン出身の新進女性シンガーソングライター、イライザ・ドゥーリトルのデビュー・アルバム「イライザ・ドゥーリトル」は、その斬新な音造りで異彩を放っている。60,70年代のポップス、ソウル、オールディーズを基調に、レゲエやジャズ、ブルースなどのテイストを取り入れ、全体として独自のレトロな脱力系サウンドにまとめ上げるという、ありそうでなかなか無いことをやってのけている。
どのナンバーにも“刺激的”な部分はなく、コーラスや手拍子、口笛なども挿入された緩くてフワフワした世界が展開されるが、よく聴くとメロディ・ラインは計算され尽くしたように巧みだ。アレンジも凝っていて、いつまでも聴いていたいような明るい空気感を醸し出す。声の質も歌詞の内容もけっこうチャーミングだ。昨今はリリー・アレンやエイミー・ワインハウス、ダフィーなど英国出身の女性ミュージシャンの活躍が目立っているが、ドゥーリトルは21歳という若さと特異な音楽性で、屹立した存在感を発揮していると言える。今後の活躍に期待したい。
ハービー・シュワルツ・トリオの「トゥ・レイト・ナウ」は、ONKYOが提供する「MASTER OF SOUND」シリーズの第一弾で、録音は88年(今回が初CD化)。ハービー・シュワルツのベース、ビル・チャーラップのピアノ、トッド・ストレイトのドラムスという構成。人気ピアニストのチャーラップの初レコーディング作品でもある。スタンダード中心の選曲だが、技巧面では定評のあるメンバーが揃っているだけに、演奏は聴き応えがある。特にハービー・Sの流麗なパフォーマンスは、聴き手をとらえて放さない。
本作の一番の売り物は、サウンドデザインである。マスターテープからハイビット・ハイサンプリングによってデジタル変換し、その上で精細なマスタリングが施されており、極めて音の鮮度が高い。特に空間の再現性には卓越したものがあり、まるでニューヨークのクラブにいるような臨場感を味わうことが出来る。近年の旧譜のリマスターの成功例としてはビートルズの一連のアルバムなどがあるが、このディスクのように埋もれていた旧い録音を現在でも通用するような音のクォリティに仕上げる際にも有効な方法論であると思う。この調子でディスコグラフィを充実させて欲しいものだ。