2010年も終盤になり、まことに勝手ながらここで2010年の個人的な映画ベストテンを発表したいと思う(^^;)。
日本映画の部
第一位 おとうと
第二位 川の底からこんにちは
第三位 オカンの嫁入り
第四位 キャタピラー
第五位 告白
第六位 ケンタとジュンとカヨちゃんの国
第七位 おにいちゃんのハナビ
第八位 海炭市叙景
第九位 書道ガールズ!! わたしたちの甲子園
第十位 REDLINE
外国映画の部
第一位 瞳の奥の秘密
第二位 パリ20区、僕たちのクラス
第三位 第9地区
第四位 キャピタリズム マネーは踊る
第五位 マイレージ、マイライフ
第六位 (500)日のサマー
第七位 ハート・ロッカー
第八位 オーケストラ!
第九位 息もできない
第十位 フローズン・リバー
邦画の傾向で印象的だったのが、疲弊する地方経済や惨めで寂しい庶民、特に不遇な若者を扱ったものが目立つこと。若いのに将来に何の希望も持てず、その日その日を乗り切るのに精一杯で、向上心なんかどこかに置いてきたような感じだ。後ろ向きで閉塞感が立ちこめる社会情勢を、ようやく映画も反映させるようになってきたことは納得出来る。政府はこんな状況に対して何の手も打っていないようであるし、おそらく今後も暗くて苦い青春群像がスクリーン上で映し出されることだろう。
対して、取って付けたような時代劇の乱造には呆れるばかり。数年前からの団塊世代のリタイアに伴い、映画会社がシニア層の顧客の掘り起こしに取り掛かったことは分かるが、どれもこれも話にならない出来だ。どうせこの世代には、映画館に通い詰めて本格的な作品に接してきた者はそれほど多くはない。大半がお茶の間でテレビの時代劇を楽しんできたクチである。だからテレビ的なチマチマとした画面をスクリーンで見せられても、観る側の多くは何の違和感も覚えないのだろう。
就職難やリストラで悩んでいる現役世代と、小金を貯め込んで“我関せず”とばかりに自分のことしか考えない団塊世代。映画作りの面でも、この憂鬱な“二重構造”はこれからも続いていくのかもしれない。
なお、以下の通り各賞も選んでみた。まずは邦画の部。
監督:山田洋次(おとうと)
脚本:呉美保(オカンの嫁入り)
主演男優:浅野忠信(酔いがさめたら、うちに帰ろう。)
主演女優:寺島しのぶ(キャタピラー)
音楽:富田勲(おとうと)
撮影:リー・ビンビン(ノルウェイの森)
新人:錦戸亮(ちょんまげぷりん)、水原希子(ノルウェイの森)、石井裕也監督(川の底からこんにちは)
次は洋画の部。
監督:ファン・ホゼ・カンパネッラ(瞳の奥の秘密)
脚本:ニール・ブロムカンプ、テリー・タッチェル(第9地区)
主演男優:ジェフ・ブリッジス(クレイジー・ハート)
主演女優:ヨランド・モロー(セラフィーヌの庭)
音楽:ハンス・ジマー(インセプション)
撮影:フェリックス・モンティ(瞳の奥の秘密)
新人:アナ・ケンドリック(マイレージ、マイライフ)、クリスティーナ・アギレラ(バーレスク)、ダンカン・ジョーンズ監督(月に囚われた男)、ニール・ブロムカンプ監督(第9地区)
ついでに、ワーストテンも選んでみる(笑)。
邦画ワースト
1.悪人
2.ソラニン
以上2本は世相を映し出したような2010年のトレンドである“ダメな若者”を描いているが、ベストテンに入れた作品群に比べると描き方が甘い。問題意識の欠如であろう。
3.ロストクライム 閃光
4.行きずりの街
5.桜田門外ノ変
質的にほとんど全滅状態の時代劇を、この映画に代表させてもらった。“上から目線”の作劇と安っぽい画面。観ていて萎えるばかり。
6.人間失格
7.さらば愛しの大統領
8.孤高のメス
9.借りぐらしのアリエッティ
10.ゴールデンスランバー
洋画ワースト
1.しあわせの隠れ場所
別に本作が特別に出来が悪いというわけではない。単なる“凡作”だが、この程度の演技で大賞をもらえた主演女優に対しては、愉快ならざる気分を抱いてしまう。
2.NINE
3.ゾンビランド
4.ソルト
5.プレシャス
6.ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
いかに苦労して公開にこぎつけたかを前面に出すような宣伝は、どうして今まで公開されなかったのかをも考慮して、実施に移すかどうかを考えるべきだろう。
7.アンナと過ごした4日間
8.カティンの森
9.戦場でワルツを
いずれも、作家性の押し付けが鬱陶しい。
10.マチェーテ
おちゃらけ映画を撮るときは、手加減は無用。それが徹底していないから、ワーストに入ってしまうのだ(爆)。
さて、2010年における“企画賞”は、何といっても東宝系の劇場で実施した「午前十時の映画祭」である。要するに有名な映画のリバイバル特集なのだが、スクリーンで観たことのない層や、若い頃に接したけどもう一度観たいと思っているオールドファンを集めてなかなか盛況だったようだ。
原則として朝一番のみの公開。そして週替わりで番組が変わっていくあたりも、マーケティング面でよく考えられていた。まるで昔の名画座の雰囲気だ。
やはり映画は映画館で観るものなのだ。シニア層を狙った御為ごかしの時代劇ブームよりも、昔の映画を銀幕に再現してもらった方が素直に嬉しい。2011年も継続するらしいが、ぜひとも他の配給系でもやって欲しいと思う。
日本映画の部
第一位 おとうと
第二位 川の底からこんにちは
第三位 オカンの嫁入り
第四位 キャタピラー
第五位 告白
第六位 ケンタとジュンとカヨちゃんの国
第七位 おにいちゃんのハナビ
第八位 海炭市叙景
第九位 書道ガールズ!! わたしたちの甲子園
第十位 REDLINE
外国映画の部
第一位 瞳の奥の秘密
第二位 パリ20区、僕たちのクラス
第三位 第9地区
第四位 キャピタリズム マネーは踊る
第五位 マイレージ、マイライフ
第六位 (500)日のサマー
第七位 ハート・ロッカー
第八位 オーケストラ!
第九位 息もできない
第十位 フローズン・リバー
邦画の傾向で印象的だったのが、疲弊する地方経済や惨めで寂しい庶民、特に不遇な若者を扱ったものが目立つこと。若いのに将来に何の希望も持てず、その日その日を乗り切るのに精一杯で、向上心なんかどこかに置いてきたような感じだ。後ろ向きで閉塞感が立ちこめる社会情勢を、ようやく映画も反映させるようになってきたことは納得出来る。政府はこんな状況に対して何の手も打っていないようであるし、おそらく今後も暗くて苦い青春群像がスクリーン上で映し出されることだろう。
対して、取って付けたような時代劇の乱造には呆れるばかり。数年前からの団塊世代のリタイアに伴い、映画会社がシニア層の顧客の掘り起こしに取り掛かったことは分かるが、どれもこれも話にならない出来だ。どうせこの世代には、映画館に通い詰めて本格的な作品に接してきた者はそれほど多くはない。大半がお茶の間でテレビの時代劇を楽しんできたクチである。だからテレビ的なチマチマとした画面をスクリーンで見せられても、観る側の多くは何の違和感も覚えないのだろう。
就職難やリストラで悩んでいる現役世代と、小金を貯め込んで“我関せず”とばかりに自分のことしか考えない団塊世代。映画作りの面でも、この憂鬱な“二重構造”はこれからも続いていくのかもしれない。
なお、以下の通り各賞も選んでみた。まずは邦画の部。
監督:山田洋次(おとうと)
脚本:呉美保(オカンの嫁入り)
主演男優:浅野忠信(酔いがさめたら、うちに帰ろう。)
主演女優:寺島しのぶ(キャタピラー)
音楽:富田勲(おとうと)
撮影:リー・ビンビン(ノルウェイの森)
新人:錦戸亮(ちょんまげぷりん)、水原希子(ノルウェイの森)、石井裕也監督(川の底からこんにちは)
次は洋画の部。
監督:ファン・ホゼ・カンパネッラ(瞳の奥の秘密)
脚本:ニール・ブロムカンプ、テリー・タッチェル(第9地区)
主演男優:ジェフ・ブリッジス(クレイジー・ハート)
主演女優:ヨランド・モロー(セラフィーヌの庭)
音楽:ハンス・ジマー(インセプション)
撮影:フェリックス・モンティ(瞳の奥の秘密)
新人:アナ・ケンドリック(マイレージ、マイライフ)、クリスティーナ・アギレラ(バーレスク)、ダンカン・ジョーンズ監督(月に囚われた男)、ニール・ブロムカンプ監督(第9地区)
ついでに、ワーストテンも選んでみる(笑)。
邦画ワースト
1.悪人
2.ソラニン
以上2本は世相を映し出したような2010年のトレンドである“ダメな若者”を描いているが、ベストテンに入れた作品群に比べると描き方が甘い。問題意識の欠如であろう。
3.ロストクライム 閃光
4.行きずりの街
5.桜田門外ノ変
質的にほとんど全滅状態の時代劇を、この映画に代表させてもらった。“上から目線”の作劇と安っぽい画面。観ていて萎えるばかり。
6.人間失格
7.さらば愛しの大統領
8.孤高のメス
9.借りぐらしのアリエッティ
10.ゴールデンスランバー
洋画ワースト
1.しあわせの隠れ場所
別に本作が特別に出来が悪いというわけではない。単なる“凡作”だが、この程度の演技で大賞をもらえた主演女優に対しては、愉快ならざる気分を抱いてしまう。
2.NINE
3.ゾンビランド
4.ソルト
5.プレシャス
6.ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
いかに苦労して公開にこぎつけたかを前面に出すような宣伝は、どうして今まで公開されなかったのかをも考慮して、実施に移すかどうかを考えるべきだろう。
7.アンナと過ごした4日間
8.カティンの森
9.戦場でワルツを
いずれも、作家性の押し付けが鬱陶しい。
10.マチェーテ
おちゃらけ映画を撮るときは、手加減は無用。それが徹底していないから、ワーストに入ってしまうのだ(爆)。
さて、2010年における“企画賞”は、何といっても東宝系の劇場で実施した「午前十時の映画祭」である。要するに有名な映画のリバイバル特集なのだが、スクリーンで観たことのない層や、若い頃に接したけどもう一度観たいと思っているオールドファンを集めてなかなか盛況だったようだ。
原則として朝一番のみの公開。そして週替わりで番組が変わっていくあたりも、マーケティング面でよく考えられていた。まるで昔の名画座の雰囲気だ。
やはり映画は映画館で観るものなのだ。シニア層を狙った御為ごかしの時代劇ブームよりも、昔の映画を銀幕に再現してもらった方が素直に嬉しい。2011年も継続するらしいが、ぜひとも他の配給系でもやって欲しいと思う。