(原題:FROM HERE TO ETERNITY )1953年作品。邦題は“ここよりとわに”と読む。1954年の第26回米アカデミー賞で作品賞など8部門を獲得したシャシンとのことだが、正直ピンと来ない内容だ。監督が西部劇の傑作「真昼の決闘」(1952年)を手掛けたフレッド・ジンネマンながら、明らかに気合いが入っていない。とはいえ、当時は“この程度”の作品がウケたのだろうという、資料的な意味はあると思う。
1941年、ハワイのホノルル陸軍基地に配属された二等兵のプルーイットは、かつては軍主催のボクシング大会で好成績を収めた実力者だが、試合中の事故がトラウマになってそれ以来リングには上がっていない。そんな彼を中隊長はボクシング部に入れようとするが、プルーイットは拒否し反抗的な態度を隠さないようになってくる。ある日、プルーイットはクラブで知り合ったロリーンと恋仲になる。一方、人望が厚いウォーデン曹長は中隊長の妻カレンと不倫関係にあった。そして運命の12月8日が近付いてくる。
いくら日本との開戦が明確に予想出来ていないとはいえ、この陸軍基地の雰囲気は緩すぎないだろうか。浮気話だの歓楽街でのアバンチュールだの、随分と気楽なものだ。しかも、それらが深く描き込まれているわけでもない。感情移入出来る登場人物が見当たらず、各人が好き勝手に振る舞っているだけだ。こんな連中がどうなろうと、観ている側は知ったことではない。
もちろんプルーイットと同僚たちが送る軍隊生活は楽ではないが、過酷とは言えない。剣呑な話はあるものの、それは仲間内のもめ事であり、軍属に関するシビアな事柄でもないのである。その点、同じく軍隊を舞台にしたテイラー・ハックフォード監督の「愛と青春の旅だち」(82年)の方が断然訴求力が大きい。
ただし、キャストは万全。ウォーデン役のバート・ランカスターは、やっぱり何をやっても絵になる。プルーイット役のモンゴメリー・クリフトの存在感は言うまでもないし、同僚マッジオに扮するフランク・シナトラは意外なコメディ・リリーフ担当だ。カレンを演じるデボラ・カーとロリーン役のドナ・リードは、本当にキレイである。封切り時には、この顔ぶれを見ているだけで満足する観客も少なくなかっただろう。