(英題:THE MONK AND THE GUN)脚本も手掛けたパオ・チョニン・ドルジの演出は、長編監督デビュー作「ブータン 山の教室」(2019年)よりもかなり手慣れてきた感じで、起承転結はキッチリと整備され、凝ったストーリー展開も違和感が無い。各キャストの動かし方は堂に入っており、娯楽映画としてのスタイルは練り上げられていると言って良いだろう。しかし、それが映画自体の存在感に貢献しているかというと、少し微妙ではある。
2006年。第5代国王のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュクが退位し、民主化へと舵を切ったブータンでは、総選挙の実施を見据えて各地で模擬選挙が行われることになる。周囲を山に囲まれたウラの村も例外ではなかったが、この地で敬われている高僧は、なぜか次の満月までに銃を2丁用意するよう若い僧に指示するのだった。銃なんか見たこともない若い僧は、調達するため仕方なく山を下りる。
一方、アメリカからアンティークの銃コレクターのロナルドが“幻の銃”を求めてやって来て、村全体を巻き込んでちょっとした騒ぎになる。しかも、ロナルドは銃密売の疑いで当局側からもマークされており、事態は先の読めない様相を呈してくる。僧職にある者と銃というミスマッチ感、ガンマニアのアメリカ人とガイド、さらには警察当局といった多彩なモチーフを並べ、それらが混濁しないように進めていく段取りには欠点らしきものは見えない。どうして高僧が銃を所望したのかが明かされる終盤の処理も、誰でも納得出来るようなものだ。
しかしながら、民主主義に対する疑義をあからさまに表明するような姿勢は、賛否が分かれるのではないだろうか。国王はクーデター等でポストを失ったわけではなく、真に国の民主的な発展を願っての勇退であった。それだけ国民を信頼していたということだろうが、あいにく有権者の意識はまるで追いついていない。
映画はそのあたりをシニカルに描こうとするが、かといって王政が継続するのも何かと懸念材料が多くなる可能性がある。そういうことを考えると、果たしてこの監督が題材として取り上げるのが適当だったのか、疑問に思えてくる。前作の延長線上であと何本か手掛けても良かったのではないか。とはいえ、キャストは皆好演だし、ヒマラヤの風景はすこぶる美しい。不要な刺激や緊張を伴わない肌触りの良い作劇なので、幅広くアピール出来る内容ではある。
2006年。第5代国王のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュクが退位し、民主化へと舵を切ったブータンでは、総選挙の実施を見据えて各地で模擬選挙が行われることになる。周囲を山に囲まれたウラの村も例外ではなかったが、この地で敬われている高僧は、なぜか次の満月までに銃を2丁用意するよう若い僧に指示するのだった。銃なんか見たこともない若い僧は、調達するため仕方なく山を下りる。
一方、アメリカからアンティークの銃コレクターのロナルドが“幻の銃”を求めてやって来て、村全体を巻き込んでちょっとした騒ぎになる。しかも、ロナルドは銃密売の疑いで当局側からもマークされており、事態は先の読めない様相を呈してくる。僧職にある者と銃というミスマッチ感、ガンマニアのアメリカ人とガイド、さらには警察当局といった多彩なモチーフを並べ、それらが混濁しないように進めていく段取りには欠点らしきものは見えない。どうして高僧が銃を所望したのかが明かされる終盤の処理も、誰でも納得出来るようなものだ。
しかしながら、民主主義に対する疑義をあからさまに表明するような姿勢は、賛否が分かれるのではないだろうか。国王はクーデター等でポストを失ったわけではなく、真に国の民主的な発展を願っての勇退であった。それだけ国民を信頼していたということだろうが、あいにく有権者の意識はまるで追いついていない。
映画はそのあたりをシニカルに描こうとするが、かといって王政が継続するのも何かと懸念材料が多くなる可能性がある。そういうことを考えると、果たしてこの監督が題材として取り上げるのが適当だったのか、疑問に思えてくる。前作の延長線上であと何本か手掛けても良かったのではないか。とはいえ、キャストは皆好演だし、ヒマラヤの風景はすこぶる美しい。不要な刺激や緊張を伴わない肌触りの良い作劇なので、幅広くアピール出来る内容ではある。