ひょっとしたら、上田慎一郎監督は快作「カメラを止めるな!」(2017年)を手掛けただけの“一発屋”に終わるのではないかと思うほど、この新作のヴォルテージは低い。とにかく、話の組み立て方が安易に過ぎる。まあ、テレビの2時間ドラマとしてオンエアするのならば笑って済まされるのだろうが、劇場でカネを取って見せるレベルに達しているとは、とても言えない。
中野北税務署に勤める熊沢二郎は真面目だが気が弱く、上司や折衝先、家では妻子から軽く見られている。ある日彼は詐欺師の氷室マコトの巧妙な罠に引っかかり、大金を巻き上げられてしまう。親友で刑事の八木の助力を得て何とか氷室を探し出した熊沢だったが、逆に氷室は取引を持ち掛ける。それは熊沢が尻尾を掴めずに難儀している怪しげな実業家の橘大和に詐欺をはたらき、彼が脱税した10億円をかすめ取る代わりに、自身を見逃して欲しいというものだった。熊沢は躊躇いつつも、氷室と組むことを決意する。
設定だけ見れば面白そうなのだが、その段取りはかなり心許ない。まず熊沢は橘が運営する非合法のビリヤード場に乗り込んで接触を図るのだが、公務員がそんなアングラなスポットに入り込めるはずがない。橘あるいは周りの者が税務署に通報してしまえば、アッという間に熊沢はクビだ。さらには地面師詐欺まで持ち掛ける熊沢たちだが、海千山千の橘がそう簡単にだまされるわけがない。だいたい高額の取引を現金払いにするなんて有り得ないだろう。
熊沢の友人の八木が刑事だというのも御都合主義であり、さらに八木が警察内で“便宜を図る”ようなマネをするなど、無理筋の極みだ。よく考えてみれば、熊沢が税務署職員としてのスキルを十分活かしている場面は見当たらず、氷室の仲間たちも特技を披露している者は数人だ。これではチームプレイにならない。
終盤は上田作品らしくドンデン返しの連続にはなるが、どれも軽量級でカタルシスは希薄。もっと全体的に骨太なドラマを構築して、各キャラクターの造型もシッカリと重みのあるものにするべきだ。聞けば本作は2016年の韓国ドラマのリメイクらしいが、どうしてオリジナルで勝負しなかったのか疑問である。
熊沢に扮する内野聖陽をはじめ、岡田将生に川栄李奈、森川葵、真矢ミキ、皆川猿時、神野三鈴、吹越満、そして小澤征悦と多彩なキャストを集めているのに、脚本が弱体気味なので一向に盛り上がらない。さて、上田監督はこのままライト級の作家として世の中を調子良く渡っていくのか、あるいは心機一転で再び快打を飛ばすのか、生暖かく見守っていこうとは思う。
中野北税務署に勤める熊沢二郎は真面目だが気が弱く、上司や折衝先、家では妻子から軽く見られている。ある日彼は詐欺師の氷室マコトの巧妙な罠に引っかかり、大金を巻き上げられてしまう。親友で刑事の八木の助力を得て何とか氷室を探し出した熊沢だったが、逆に氷室は取引を持ち掛ける。それは熊沢が尻尾を掴めずに難儀している怪しげな実業家の橘大和に詐欺をはたらき、彼が脱税した10億円をかすめ取る代わりに、自身を見逃して欲しいというものだった。熊沢は躊躇いつつも、氷室と組むことを決意する。
設定だけ見れば面白そうなのだが、その段取りはかなり心許ない。まず熊沢は橘が運営する非合法のビリヤード場に乗り込んで接触を図るのだが、公務員がそんなアングラなスポットに入り込めるはずがない。橘あるいは周りの者が税務署に通報してしまえば、アッという間に熊沢はクビだ。さらには地面師詐欺まで持ち掛ける熊沢たちだが、海千山千の橘がそう簡単にだまされるわけがない。だいたい高額の取引を現金払いにするなんて有り得ないだろう。
熊沢の友人の八木が刑事だというのも御都合主義であり、さらに八木が警察内で“便宜を図る”ようなマネをするなど、無理筋の極みだ。よく考えてみれば、熊沢が税務署職員としてのスキルを十分活かしている場面は見当たらず、氷室の仲間たちも特技を披露している者は数人だ。これではチームプレイにならない。
終盤は上田作品らしくドンデン返しの連続にはなるが、どれも軽量級でカタルシスは希薄。もっと全体的に骨太なドラマを構築して、各キャラクターの造型もシッカリと重みのあるものにするべきだ。聞けば本作は2016年の韓国ドラマのリメイクらしいが、どうしてオリジナルで勝負しなかったのか疑問である。
熊沢に扮する内野聖陽をはじめ、岡田将生に川栄李奈、森川葵、真矢ミキ、皆川猿時、神野三鈴、吹越満、そして小澤征悦と多彩なキャストを集めているのに、脚本が弱体気味なので一向に盛り上がらない。さて、上田監督はこのままライト級の作家として世の中を調子良く渡っていくのか、あるいは心機一転で再び快打を飛ばすのか、生暖かく見守っていこうとは思う。