84年作品。数々の快作をモノにした藤田敏八監督作にしては、随分と気勢の上がらないシャシンだ。企画担当が、明らかに“親の七光り”で芸能界入りしたと思われる(当時は若造の)三船史郎。そして脚本が藤田と内田栄一、神波史男の共同執筆という、それぞれは有能ながら他人とのコラボレーションで成果をあげるとは思えない者達のシナリオ作成であるせいか、作劇自体が全然スムーズではない。
フィリピン人とのハーフであるジョーが属している島袋一家は、沖縄を根城にしているヤクザ組織である。大手の琉球連合から破門されたのを機に、警察署長立会いのもとに解散声明を出すが、ある夜ジョーの弟分である寛敏が琉球連合那覇派に殺されてしまう。復讐としてジョーは、琉球連合の理事長である金城を射殺する。
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逃亡を続けるジョーは、かつて刑務所で知り合った上勢頭と再会する。ジョーは彼の手引きでフィリピンに脱出。現地で幅を利かせているヤクザの手伝いをするようになるが、ジョーを追って琉球連合のヒットマン達もマニラにやってくる。
そもそも、タイトルにある“奇跡”らしきものがどこにも見当たらないのは噴飯物である。主人公は成り行きで罪を犯し、逃亡の果てに予想通りの結末を迎えるというストーリーには、何の工夫も無い。原作は佐木隆三による実録物だが(私は未読)、話の運び方に起伏が無いのは、果たして原作のせいなのだろうか。133分という長めの上映時間は、このネタに相応しいとも思えない。
主演は時任三郎だが、たぶん“顔が濃い”という理由だけで選ばれたとしか思えない(爆)。そもそも彼は演技がそれほど上手くなく、存在感で見せる役者だと思うが、本作にはその御膳立てが不足している。ヒロイン役の藤谷美和子も精彩を欠き、ルポライターに扮する清水健太郎は何しに出てきたのか分からない。
なお、本来この題材は先に映画化権を獲得した東映が製作する予定だったらしい。監督は深作欣二で主演が松田優作という、見るからに映画ファンの食指が動きそうな企画であったが、脚本を読んだ松田優作が乗り気にならずに取りやめになったという。その際に沖縄やフィリピンでのシナリオハンティングに使われた費用が約2千万円にも達したらしく、当然これも無駄になってしまった。あの頃はまだまだ役者の主張が通る体制だったのだろうが、実に残念な話である。
フィリピン人とのハーフであるジョーが属している島袋一家は、沖縄を根城にしているヤクザ組織である。大手の琉球連合から破門されたのを機に、警察署長立会いのもとに解散声明を出すが、ある夜ジョーの弟分である寛敏が琉球連合那覇派に殺されてしまう。復讐としてジョーは、琉球連合の理事長である金城を射殺する。
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逃亡を続けるジョーは、かつて刑務所で知り合った上勢頭と再会する。ジョーは彼の手引きでフィリピンに脱出。現地で幅を利かせているヤクザの手伝いをするようになるが、ジョーを追って琉球連合のヒットマン達もマニラにやってくる。
そもそも、タイトルにある“奇跡”らしきものがどこにも見当たらないのは噴飯物である。主人公は成り行きで罪を犯し、逃亡の果てに予想通りの結末を迎えるというストーリーには、何の工夫も無い。原作は佐木隆三による実録物だが(私は未読)、話の運び方に起伏が無いのは、果たして原作のせいなのだろうか。133分という長めの上映時間は、このネタに相応しいとも思えない。
主演は時任三郎だが、たぶん“顔が濃い”という理由だけで選ばれたとしか思えない(爆)。そもそも彼は演技がそれほど上手くなく、存在感で見せる役者だと思うが、本作にはその御膳立てが不足している。ヒロイン役の藤谷美和子も精彩を欠き、ルポライターに扮する清水健太郎は何しに出てきたのか分からない。
なお、本来この題材は先に映画化権を獲得した東映が製作する予定だったらしい。監督は深作欣二で主演が松田優作という、見るからに映画ファンの食指が動きそうな企画であったが、脚本を読んだ松田優作が乗り気にならずに取りやめになったという。その際に沖縄やフィリピンでのシナリオハンティングに使われた費用が約2千万円にも達したらしく、当然これも無駄になってしまった。あの頃はまだまだ役者の主張が通る体制だったのだろうが、実に残念な話である。