このイベントは「ハイエンド」と銘打っているだけあって、展示されているのは高額商品が中心だが、その中でも飛び抜けて高価なスピーカーが南アフリカのVIVID AUDIO社のG1 GIYAと、イスラエルのYG ACOUSTICS社のANAT IIIである。価格はいずれも700万円を超える。
実はG1 GIYAは数年前のフェアでも試聴したのだが、高い再生能力に感心したものの“心底スゴい”というレベルには達していなかった。低域と高域に不自然な“重さ”があり、これが音のヌケを阻害していると思ったものだ。しかし今回は米国CONSTELLATION AUDIO社の超弩級アンプで駆動したせいか、まことに堂々としたパフォーマンスを披露していた。
音場は上下左右と前後方向にどこまでも広がり、音像はソリッドで少しの乱れも無い。スピード感や解像度は最上級クラス。音色も明るく、朗々と響き渡る。欠点らしい欠点も無く、ある意味これが“オーディオの最終回答”と言えるかもしれない。ただし、大きすぎるサイズと奇態な外見は、いくら金持ち向けの商品といっても自宅に入れることに躊躇するケースも少なくないだろう。
ANAT IIIはスイスのDARTZEEL社の、これまた超弩級のアンプでドライヴされていたが、G1 GIYAとは別傾向ながらかなりの高音質を披露していた。とにかく聴感上の低歪率とクリアネスに圧倒される。まさに、雑味ゼロの清涼な世界がどこまでも広がっているという感じだ。それでいて無機質な部分はなく、いつまでも聴いていたい明朗さと躍動感を併せ持っている。
G1 GIYAが聴く者を力任せに引きつけるのに対して、ANAT IIIはじっくりと付き合える趣味性の高さが印象的なモデルだと思う。アルミ削り出しの振動板など、素材面でも興味深いものがある。デザインはユニークすぎるが、G1 GIYAほどの圧迫感はなく、一般家庭のリビングにも置けそうだ。
両機とも非常識なほど高い機器だが、係員の話によると、欧米ではこのクラスのスピーカーをホームシアター用として“気軽に”導入するユーザーもけっこういるらしい。ならばそういう者達はピュア・オーディオ用にはどんなスピーカーを使っているのだろうか。どうやら世の中には、我々のあずかり知らぬ世界が存在しているようだ(笑)。
英国TANNOY社のスピーカーは、米国JBL社の製品と並んで我が国では長らく“高級舶来スピーカー”の代名詞になっていたが、昔のオーディオマニアの多くがTANNOYをドライヴするのに使っていたアンプがLUXMANのモデルだった。よく考えて見ると、私はこの“TANNOYの上位モデルとLUXMANとの組み合わせ”を聴いたことがない。何しろ展示会などでは、TANNOYの輸入代理店であるTEACの上級ブランドESOTERICのアンプで駆動されるのが常だったのだ。
ところが今回は、特別に代理店の枠を超えて両者のコラボレーションが実現した。組み合わせたのは、TANNOYのCanterburyとLUXMANの真空管式セパレートアンプ(CL-38uとMQ-88u)である。一聴して、これは良い音だと思った。柔らかい音調だが、キレもコクもある。大きな奥行きを伴う音場に甘やかな余韻が漂う様子は、このコンビが大勢のマニアを魅了したことも納得出来る。とにかく、いつまでも聴いていたいサウンドだ。
Canterburyを含む同社のPRESTIGEシリーズは、AVシステムの付属物みたいなトールボーイ型とコンパクト型ばかりが幅を利かせるオーディオ用スピーカーの中にあって、昔ながらの家具調のエクステリアを堅持している点で異彩を放っており、所有する満足度も高いだろう。また、低出力の管球式アンプでも十分な音圧が得られるほど高能率である点も大きなメリットだ。アンプに過度な予算を投入しなくても済むということは、ユーザーにとって有り難いことなのである。
(この項つづく)
実はG1 GIYAは数年前のフェアでも試聴したのだが、高い再生能力に感心したものの“心底スゴい”というレベルには達していなかった。低域と高域に不自然な“重さ”があり、これが音のヌケを阻害していると思ったものだ。しかし今回は米国CONSTELLATION AUDIO社の超弩級アンプで駆動したせいか、まことに堂々としたパフォーマンスを披露していた。
音場は上下左右と前後方向にどこまでも広がり、音像はソリッドで少しの乱れも無い。スピード感や解像度は最上級クラス。音色も明るく、朗々と響き渡る。欠点らしい欠点も無く、ある意味これが“オーディオの最終回答”と言えるかもしれない。ただし、大きすぎるサイズと奇態な外見は、いくら金持ち向けの商品といっても自宅に入れることに躊躇するケースも少なくないだろう。
ANAT IIIはスイスのDARTZEEL社の、これまた超弩級のアンプでドライヴされていたが、G1 GIYAとは別傾向ながらかなりの高音質を披露していた。とにかく聴感上の低歪率とクリアネスに圧倒される。まさに、雑味ゼロの清涼な世界がどこまでも広がっているという感じだ。それでいて無機質な部分はなく、いつまでも聴いていたい明朗さと躍動感を併せ持っている。
G1 GIYAが聴く者を力任せに引きつけるのに対して、ANAT IIIはじっくりと付き合える趣味性の高さが印象的なモデルだと思う。アルミ削り出しの振動板など、素材面でも興味深いものがある。デザインはユニークすぎるが、G1 GIYAほどの圧迫感はなく、一般家庭のリビングにも置けそうだ。
両機とも非常識なほど高い機器だが、係員の話によると、欧米ではこのクラスのスピーカーをホームシアター用として“気軽に”導入するユーザーもけっこういるらしい。ならばそういう者達はピュア・オーディオ用にはどんなスピーカーを使っているのだろうか。どうやら世の中には、我々のあずかり知らぬ世界が存在しているようだ(笑)。
英国TANNOY社のスピーカーは、米国JBL社の製品と並んで我が国では長らく“高級舶来スピーカー”の代名詞になっていたが、昔のオーディオマニアの多くがTANNOYをドライヴするのに使っていたアンプがLUXMANのモデルだった。よく考えて見ると、私はこの“TANNOYの上位モデルとLUXMANとの組み合わせ”を聴いたことがない。何しろ展示会などでは、TANNOYの輸入代理店であるTEACの上級ブランドESOTERICのアンプで駆動されるのが常だったのだ。
ところが今回は、特別に代理店の枠を超えて両者のコラボレーションが実現した。組み合わせたのは、TANNOYのCanterburyとLUXMANの真空管式セパレートアンプ(CL-38uとMQ-88u)である。一聴して、これは良い音だと思った。柔らかい音調だが、キレもコクもある。大きな奥行きを伴う音場に甘やかな余韻が漂う様子は、このコンビが大勢のマニアを魅了したことも納得出来る。とにかく、いつまでも聴いていたいサウンドだ。
Canterburyを含む同社のPRESTIGEシリーズは、AVシステムの付属物みたいなトールボーイ型とコンパクト型ばかりが幅を利かせるオーディオ用スピーカーの中にあって、昔ながらの家具調のエクステリアを堅持している点で異彩を放っており、所有する満足度も高いだろう。また、低出力の管球式アンプでも十分な音圧が得られるほど高能率である点も大きなメリットだ。アンプに過度な予算を投入しなくても済むということは、ユーザーにとって有り難いことなのである。
(この項つづく)