What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

三浦しをん まほろ駅前多田便利軒

2007年03月20日 09時26分53秒 | 図書館で借りた本
 ようやく読む事が出来ましたー!思い起こせば約半年前、第135回直木賞が決定した記事を書いた時は、候補作はおろか受賞作であるこのお話も読んでいなくて、感想どころじゃなかったんですね~(汗)

 読み終わった今なら、三浦さんの「まほろ」と伊坂さんの「砂漠」のどちらを選ぶと言われたら相当悩むと思いますが、森さんの「風に舞い上がるビニールシート」と「砂漠」なら、「砂漠」を選ぶと思います。W受賞は納得がいかないですね。この三作に共通する「喪失と再生」の描き方は、作者さんそれぞれの持ち味が出ていて、比べられないなぁと思いますが、キャラクターの魅力という点では、三浦さんが頭一つ突出していたんじゃないでしょうか?

(そして第136回直木賞が該当者無しだったのは、やはり納得がいきません)

 このお話を読む前に、三浦さんのエッセーや小説の数々を先に読むハメになりましたが(図書館で借りられなかったので)逆に「まほろ」で、初めて三浦さんの書くキャラクターを魅力的だと思いました。この「まほろ」の後に書かれた「風が強く吹いている」もキャラクターが魅力的でしたから、やはりこのお話から、何か一つ山を越えられた印象を受けます。

 直木賞-選評の概要-第135回

 そこで、一つ見て頂きたいのが、「まほろ」選評に当たった、渡辺純一さんのコメントなんです。

>「妖しげな小説である。」「現代的な雰囲気を描こうとした著者の狙いはそれなりにわかるが、やや受けを狙いすぎて筆がすべりすぎたようである。とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける。」

 はぁ?貴方がそれを言いますか?

 「大人の男の切実さと~」のくだりを読んで、元々好きじゃない渡辺さんの作品群でしたが、更に絶対に読まない気持ちが固まりました。もしお好きな方がおられたら申し訳ないんですが、私は渡辺さんの作品に登場する男性及び女性で、感情移入して読めたお話って、無いです。どうにも我慢なら無い自己中で、自己陶酔している人たちばかりですよ?

 「とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか~」
明らかに、BL出身作家さんを見下してますよね?私は以前、漫画雑誌「ぱふ」のBL作品の広告にうんざりという事を書きましたが、BLもラノベも見下されても仕方ない作品も多々ありますが、玉石混合の例えのごとく、素晴らしい作品だって確かにあるんです。

 さっきまで暖かかった赤ん坊がひっそりと目の前で死んでしまった痛みに何年も苦しむ男に、他人を故意に傷つけてしまった慙愧に苦しんでいる男に、その傷を受けても許そうと言う男に、両親に虐待を受けてもなお生きようとする男に、リアリティはないですか?

 私は、三浦さんのエッセイの数々を読んで、あぁこうやって沢山の実在&創作の男性を見つめて来たから、こんなにも魅力的なキャラクターが創れたんだな、と実感しました。「まほろ」はBLじゃないです、BLの妄想の入り込む余地すらない、血を流して生きる人間の物語です。作中登場する「二十分二千円」の重さを噛み締められるうちは、まだ自分はまっとうだなと思います。

 それと「挿絵」の相乗効果をしみじみ感じました。
角川文庫の横溝正史さんの作品の表紙絵(杉本一文さん画)や栗本薫さんの「グインサーガ」、「銀河英雄伝説」に「魔界都市ハンター」に「十二国記」などなど、挙げたらキリが無い名作の、その作品の魅力を更にパワーアップさせるアイテムが、挿絵や表紙絵だと私は思うんです。この「まほろ」でも、下村富美さんの描かれた挿絵の効能凄いと思いました。「小説なら文章で全てを表現しろ」と仰る作家さんがおいでで、以前は一理あると思いましたが、絵画にはその絵にあった額縁が、宝石にはその石に合ったデザインがあって、更に作品が生きると私は思います。

*下村さんは他にも「陰陽師 安倍晴明」シリーズ(谷 恒生著/祥伝社)なども手がけておいでです。


 「まほろ」がすっごく面白くて満足した感想を書こうと思っていたのに、渡辺さんにケンカを売ってる文になってしまいましたね(笑)

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小学館ガガガ文庫 創刊

2007年03月20日 09時25分03秒 | 
小学館::ガガガ文庫:the 1st line-up

 「ハヤテのごとく」は漫画を読んだことがありますが、「IKKI」など他作品の作家さんはサッパリ存じ上げないです(汗)ごめんなさい。

 このラインナップでの私の楽しみは、なんといっても「FREEDOM フットマークデイズ1」です。あのカップラーメンのCMの小説版ですが、大友克洋さんの漫画あるいは小説で、あの世界観を読みたかったのです。

 しかし小学館もやる気ですよね、この「ガガガ文庫」は少年向けで、もうひとつ「ルルル文庫」という少女向けの二つを同時に創刊するのですからねぇ。是非息の長い、良い作品を生み出す母体の文庫となって欲しいです。
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