第33回アメリカズカップを考える(その3)

2008年03月30日 | 風の旅人日乗
3月29日(現地時間)、フランス大西洋岸のロリアン沖で練習中のアリンギ・チームの乗るトリマラン『FONCIA』が転覆した。
転覆の状況は、ベアウエイしていたとき(どんなマルチハルにとっても最も船体に負荷がかかる、もっとも危険な瞬間)、風下のフロートだけでなくメインハルが水没し、その負荷で舵が折れ、コントロールを失った艇はそのままピッチポール(バウから前のめりに転覆すること)して、マストが折れ、後ろのビームも折れたとのこと。
10名のクルーのうち2名が負傷したものの、命に別状はないという。

Photo: Jacques Vapillon/Alinghi

この事故で明らかになったことは、アリンギは、法廷で第33回アメリカズカップ開催時期の引き伸ばしを図る一方で、カタマランではなくトリマランの開発も視野に入れて準備を進めている、ということだ。
BMWオラクルレーシングが水線長90フィートのカタマランを建造していることは、すでに周知の事実だ。

以前110フィートのトリマラン『ジェロニモ』に乗ったとき、マルチハルのベテラン・セーラーに、大型レーシング・マルチハルの世界で、カタマランとトリマランの性能差について聞いたことがある。彼らの意見では、クローズホールド以外では、カタマランのほうが速いが、オールラウンドな走りでの性能からすれば、少しトリマランに分があるのではないか、ということだった。特に、カタマランの弱点は、波にたたかれる状況でのクローズホールドだという。つまり、次回アメリカズカップの開催場所に波の悪い場所を選べば、カタマランはトリマランよりも不利になる。
アリンギは、このあたりに焦点を絞ってきているのかもしれない。
今回の事故のとき、うねりはかなり大きく、風速は20ノット以上あったという。
地中海ではなく大西洋で、しかもそういうコンディションで敢えて練習していたということが、アリンギが狙っていることのヒントにもなるかもしれない。