1)今回の北朝鮮のミサイル発射で最も得をしたのは誰か?
ここからまず考えてみたいと思う。
張本人の北朝鮮ですが、非難されるのは重々承知。そんなことを怖れていては、初めから発射なんてできない。元々「日本の主張をへこます」「米国の譲歩を引き出す」というのが達成できればよく、うまくいけば中韓からの何らかの「援助交際」(笑)が見込めると踏んでいたと思う。ところがドッコイ、そうは問屋がおろさねえ、ってところでしょうか。
「ならず者」同士というのは大概「徒党」を組みやすく、チーマーだか、チンピラ集団だか判らんけど、要するにワルモノ同士はワルモノ同士でつるんだりなんかして、警察権力や他の暴力集団などに対抗しようとするわけです。なので、北朝鮮にはそういうグループとのお付き合いがあって、ミサイルのデモ効果とか言われる面があるようです。しかし、これはどうなんでしょう?デモ効果でミサイル技術やブツそのものが売れて金を稼げる、ってことは、あまり期待できないのではないかと。仮にイラン、ベネズエラ等が調達を決めたとしても、北朝鮮の製造能力では納入までに長期間かかると思いますね(イランやベネズエラには何と言っても資金源の「石油」がある!)。それに、経済封鎖で基本部品等の手当てが困難になれば、比較的高度な製造技術を必要とする電子回路等の製造がままならないのではないでしょうか。別な(韓国や中国)ルートから調達可能なのかもしれませんが、そうした電子部品を買う金そのものが「絞られている」状況ですので、厳しいでしょうね。なので、デモ効果はほぼ期待薄だったのではないかと思えます。
北朝鮮にとっては、やはり「窮余の一策」であったと見ています。
「どうせ撃てまい」→「いや、本気だぞ、撃ってやる」というのが基本的な反応でしょう。本当に撃てば、中韓露は「ほらみろ、日米が厳しくし過ぎるからだ」と言ってくれる、と思っていたからです。そこに見込み違いがあった。
まず、露ですけれども、サミット議長国であったので、「成功させたい、『優等生クラブ』(旧G7)の正式メンバーとして仲間入りしたい、暖かく迎え入れてほしい」という思いはあります。「貧乏な北国の田舎者」という蔑みは避けたい、大国としてのメンツを保ちたい、と考えるのは普通です。その立場を考えれば、北朝鮮を擁護し続けるのはちょっと困難であったでしょう。そこまで、北朝鮮にロシアの利益は乗ってないでしょう。
韓国はどうかと言えば、ミサイル発射の行為自体への拒否感というのはさほど感じてないでしょう。これはスカッド型の配備があるということが元来知られているし、韓国向けのアピールでないことは明白だし。問題は韓国政府の読み筋と、韓国世論の温度差が想像以上に大きかった、ということだと思います。クラス内で「オレ流粗暴ツッパリ君」にどれほど肩入れしてても、「もう、そんなに庇うことないんじゃね?」という素朴な反応が韓国国民にもあるわけで。それに米国にあんまり冷たくされても、「独り立ち」(ちょっとエッチ?)するほど国際社会での立場があるわけでなし。日本にはライバル心を燃やすが、日本以外の部分で国際社会に理解されていることは少ない。せいぜいが、韓国系移民が主に北米で頑張るくらい(女子プロゴルファーとか)。なので、韓国政府は「立ち位置」を間違えた為に、しっぺ返しを食らった格好。
最大の直接関係者である中国ですけれども、いい恥さらしになってしまいました。それは、発射直前まで「思いとどまるはず」という読み違いをしていたことが全世界にバレてしまい、その前に地味に活動していた「六カ国協議非公式会合プラン」とか「米国内工作」とか、水泡に帰してしまったから。多分テコにしてた米国内ネットワークからも、「折角動いてやってたのに、何だよー!」的な反発があったでしょう。外交戦術の変更を強いられることになってしまいました。日本に「あんまり拉致拉致言うな」とか「制裁制裁言うな」とか言える立場にあったものが、滑り落ちました。天罰、天罰(笑)。「ちゃんと見てなかったのかよ」と『優等生クラブ』の面々(英仏独)から思われて、赤っ恥。米国だけならまだしも、欧州伝統国にまで・・・というのが堪えた模様。日本には何とでも言えるが、欧州伝統国には一目置いてるからだろう。
米国は基本的に二国間協議には応じない立場を貫いて、チキンレースに耐え抜くのは楽勝でした。何なら発射させてもいいよ、と思っていたので、別に困ることなし。日本との対応協議に時間を取っていたので、直ぐに動けた。ただし、他の常任理事国の立場を考える必要があったので、「声を一つに」というメッセージで単独主義の影を薄めてみました、ってところだろう。日本の立場を尊重したということを示せればよく、一方では中国に北朝鮮を「預ける」という明確な役割を演じさせたので、まあよし、というところでしょう。
日本では対応策のプランができていたので、すぐさま行動開始ができた。あくまで想像に過ぎませんが、今までにない体制で進められたのは、「情報」の重要性(統合・共有・分析)を認識したから、ということと、外務省と防衛庁が協力できたことではないかと思います。結果としては、得したのは日本であったと思います。譲歩させられた、という評価もあったりしますが、国連という場で国際社会に明示できたことは「技あり」ゲットでしょう。
得失点で言うと、10点満点で、日本+10点、米+5点、露±0点、韓国-3点、北朝鮮-7点、中-10点、というような感じでしょうか。
2)安保理決議
日本の強い態度・要望に米国はすぐさま賛意を示して、各国の反応を窺いました。調整の協議に時間が必要でしたが、これは普通でしょう。日本だけが「こうしよう」と言っても、他の国々が無条件に応じてくることは有り得ないでしょう。
米国は初めから「声を一つにして言うことが大事」と決めてましたので、日本の立場に理解・配慮をしながらも、英仏独と中露の様子を「右見て、左見て、また右を見て」という具合に「指差し確認」してました。売り手と買い手の「価格交渉」みたいなもんで、妥協点の探り合いが続きましたが、日米の基本線としては「まあよし」という落としどころに落ち着きました。ロシアはおそらくサミットでの内容との兼ね合いなんかがあって、欧州勢や米国の意向に「足並みをそろえてもよい」という妥協が直ぐに働いたことでしょう。
問題の中国でしたが、(いつもは同調して日本に文句を言う)韓国がすぐに脱落(笑)していったのでやや心細くなり、ロシアも「ウチは別にいいや」と中国に配慮する気配は殆どなく、「何だ、オレんとこだけかよ、北朝鮮の味方してんのは」ということになってしまいました。北朝鮮のせいで孤立したくもないので、日本以外の欧米諸国あたりからの説得に応じたものと思いますね。大雑把に、態度的に強硬な順で言うと、日、米、英、仏、露、中というような具合だろうと思いますので、結局この中間くらいに落ち着いたということになると思います。中国としては、例えば日本の案には「死んでも反対」、米案には「拒否権使ってでも反対」、という感じになってしまうでしょうから、この2カ国に直接同調するのは耐え難いでしょう。それがイヤなら、「仏案あたりで手を打たんか?」とか言われれば、応じざるを得ないだろう、ということでしょう。
日本としては、「安保理決議に持ち込めた」ということで、所期の目的は達したと言ってもいいでしょう。「振り上げたコブシ」をどうするのか、とか言われたりもしたようですけれども、日本がそのコブシで北朝鮮に殴りかかった訳ではないのですから、制裁決議にならなかったからといって、特別不利益を蒙ることはないですね。更に、いつもは「日本が北朝鮮に文句を言うから(六カ国協議が)進展しないんだ(=日本の拉致問題のせいだ)」、というような主張をしていた中国が、さすがに今回は日本の主張を簡単には非難したり退けることができなかったことでも、日本にプラスになったと見ていいでしょう。
3)サンクトペテルブルク・サミット
ここでの成果はいくつかありました。北朝鮮問題の言及は発射以前からのテーマですので当然として、安保理決議を受けての対応としては「日本の存在・主張を無視できない」ということが示されたのではないかと思います。もしも、安保理決議がなければ、拉致・人道問題の記述を取り上げられなかったかもしれません。日本以外のG8参加国は、「日本が何か協力してくれるなら―例えばイラン問題とかで―問題を共有してあげてもいいですよ(=協力できることはするかもね)」ということを認めたということになります。すなわち、拉致問題というのは、単純に「日朝間の問題」という扱いではなくなった、ということを意味します。ここでも、日本はポイントを上げることに成功しました。
もう一点、特徴的であったと思うことは、米国の姿勢がやや変わってきた部分があったことです。「京都議定書」不参加を決め込んでいた米国が、「エネルギー効率・省エネルギー」に関する記述を認めたことです。普通に考えれば、エネルギー安全保障は、産油国などに見られる「資源ナショナリズム」に対する警戒感と、新興諸国のエネルギー消費の爆発的増大に対処せねばならない、ということでしょう。エネルギー資源獲得競争は、価格高騰を招き、世界経済に対して不安定要因となってしまいます。結果的に、資源大国(主に産油国)の発言力が増すことと、高騰した価格の恩恵を受けて(単純に考えれば、売上高大幅増ということですよね)、「オイルダラー」に代表される大量の「資源マネー」は世界市場に「投機的に」流れ込みモンスター化するかもしれない、という危惧はあるだろう。
何よりも、米国にとっては「GMショック」がかなり効いたのではないかと思っています。かつては米国を象徴するかのようなGMでしたが、「省エネルギー」への対応の遅れなどもあり、市場からはっきりNOを突きつけられてしまいました。海外市場での苦戦ばかりではなく、「米国国内」での苦戦というのが省エネ路線へ転換させていったのではないでしょうか。米国の消費者自身がその選択を示したということではないかと思っています。そうでなければ、これほど早く省エネだなんて言わなかったに違いないと思いますね。
最後に、単なる偶然かもしれませんけれども、日本の対露外交の一端はサンクトペテルブルクという地で、ずっと以前から始まっていたでしょう。そうです、「ナショナル・フラッグ」ですよ。ロシアに「お土産」を持って、奥田さんが昨年訪れていたはずですよね。トヨタ工場を進出させる、というサンクトペテルブルクの地が丁度サミット会場であったのは、なんとうまい具合なのでしょう(笑)。民間レベルというか、ビジネス上の外交では、「ナショナル・フラッグ」というのが確かに大事だ。そういう地であったことは、日本にとってプラスに働いただろう。これが全くの計算外で、実は何も考えもせずに偶然工場建設話を持って行ってたのなら、日本の外務省筋は本当の無能ということなんだろう。「舞台は着々と、ずーっと前から既に用意されていた」という方に解釈しておこう、とりあえず(笑)。もしも、今後に無能さを露呈した場合には、「やっぱ買いかぶりだったんだー」って思うことにするぞ。
防衛問題の話は、また後で。
ここからまず考えてみたいと思う。
張本人の北朝鮮ですが、非難されるのは重々承知。そんなことを怖れていては、初めから発射なんてできない。元々「日本の主張をへこます」「米国の譲歩を引き出す」というのが達成できればよく、うまくいけば中韓からの何らかの「援助交際」(笑)が見込めると踏んでいたと思う。ところがドッコイ、そうは問屋がおろさねえ、ってところでしょうか。
「ならず者」同士というのは大概「徒党」を組みやすく、チーマーだか、チンピラ集団だか判らんけど、要するにワルモノ同士はワルモノ同士でつるんだりなんかして、警察権力や他の暴力集団などに対抗しようとするわけです。なので、北朝鮮にはそういうグループとのお付き合いがあって、ミサイルのデモ効果とか言われる面があるようです。しかし、これはどうなんでしょう?デモ効果でミサイル技術やブツそのものが売れて金を稼げる、ってことは、あまり期待できないのではないかと。仮にイラン、ベネズエラ等が調達を決めたとしても、北朝鮮の製造能力では納入までに長期間かかると思いますね(イランやベネズエラには何と言っても資金源の「石油」がある!)。それに、経済封鎖で基本部品等の手当てが困難になれば、比較的高度な製造技術を必要とする電子回路等の製造がままならないのではないでしょうか。別な(韓国や中国)ルートから調達可能なのかもしれませんが、そうした電子部品を買う金そのものが「絞られている」状況ですので、厳しいでしょうね。なので、デモ効果はほぼ期待薄だったのではないかと思えます。
北朝鮮にとっては、やはり「窮余の一策」であったと見ています。
「どうせ撃てまい」→「いや、本気だぞ、撃ってやる」というのが基本的な反応でしょう。本当に撃てば、中韓露は「ほらみろ、日米が厳しくし過ぎるからだ」と言ってくれる、と思っていたからです。そこに見込み違いがあった。
まず、露ですけれども、サミット議長国であったので、「成功させたい、『優等生クラブ』(旧G7)の正式メンバーとして仲間入りしたい、暖かく迎え入れてほしい」という思いはあります。「貧乏な北国の田舎者」という蔑みは避けたい、大国としてのメンツを保ちたい、と考えるのは普通です。その立場を考えれば、北朝鮮を擁護し続けるのはちょっと困難であったでしょう。そこまで、北朝鮮にロシアの利益は乗ってないでしょう。
韓国はどうかと言えば、ミサイル発射の行為自体への拒否感というのはさほど感じてないでしょう。これはスカッド型の配備があるということが元来知られているし、韓国向けのアピールでないことは明白だし。問題は韓国政府の読み筋と、韓国世論の温度差が想像以上に大きかった、ということだと思います。クラス内で「オレ流粗暴ツッパリ君」にどれほど肩入れしてても、「もう、そんなに庇うことないんじゃね?」という素朴な反応が韓国国民にもあるわけで。それに米国にあんまり冷たくされても、「独り立ち」(ちょっとエッチ?)するほど国際社会での立場があるわけでなし。日本にはライバル心を燃やすが、日本以外の部分で国際社会に理解されていることは少ない。せいぜいが、韓国系移民が主に北米で頑張るくらい(女子プロゴルファーとか)。なので、韓国政府は「立ち位置」を間違えた為に、しっぺ返しを食らった格好。
最大の直接関係者である中国ですけれども、いい恥さらしになってしまいました。それは、発射直前まで「思いとどまるはず」という読み違いをしていたことが全世界にバレてしまい、その前に地味に活動していた「六カ国協議非公式会合プラン」とか「米国内工作」とか、水泡に帰してしまったから。多分テコにしてた米国内ネットワークからも、「折角動いてやってたのに、何だよー!」的な反発があったでしょう。外交戦術の変更を強いられることになってしまいました。日本に「あんまり拉致拉致言うな」とか「制裁制裁言うな」とか言える立場にあったものが、滑り落ちました。天罰、天罰(笑)。「ちゃんと見てなかったのかよ」と『優等生クラブ』の面々(英仏独)から思われて、赤っ恥。米国だけならまだしも、欧州伝統国にまで・・・というのが堪えた模様。日本には何とでも言えるが、欧州伝統国には一目置いてるからだろう。
米国は基本的に二国間協議には応じない立場を貫いて、チキンレースに耐え抜くのは楽勝でした。何なら発射させてもいいよ、と思っていたので、別に困ることなし。日本との対応協議に時間を取っていたので、直ぐに動けた。ただし、他の常任理事国の立場を考える必要があったので、「声を一つに」というメッセージで単独主義の影を薄めてみました、ってところだろう。日本の立場を尊重したということを示せればよく、一方では中国に北朝鮮を「預ける」という明確な役割を演じさせたので、まあよし、というところでしょう。
日本では対応策のプランができていたので、すぐさま行動開始ができた。あくまで想像に過ぎませんが、今までにない体制で進められたのは、「情報」の重要性(統合・共有・分析)を認識したから、ということと、外務省と防衛庁が協力できたことではないかと思います。結果としては、得したのは日本であったと思います。譲歩させられた、という評価もあったりしますが、国連という場で国際社会に明示できたことは「技あり」ゲットでしょう。
得失点で言うと、10点満点で、日本+10点、米+5点、露±0点、韓国-3点、北朝鮮-7点、中-10点、というような感じでしょうか。
2)安保理決議
日本の強い態度・要望に米国はすぐさま賛意を示して、各国の反応を窺いました。調整の協議に時間が必要でしたが、これは普通でしょう。日本だけが「こうしよう」と言っても、他の国々が無条件に応じてくることは有り得ないでしょう。
米国は初めから「声を一つにして言うことが大事」と決めてましたので、日本の立場に理解・配慮をしながらも、英仏独と中露の様子を「右見て、左見て、また右を見て」という具合に「指差し確認」してました。売り手と買い手の「価格交渉」みたいなもんで、妥協点の探り合いが続きましたが、日米の基本線としては「まあよし」という落としどころに落ち着きました。ロシアはおそらくサミットでの内容との兼ね合いなんかがあって、欧州勢や米国の意向に「足並みをそろえてもよい」という妥協が直ぐに働いたことでしょう。
問題の中国でしたが、(いつもは同調して日本に文句を言う)韓国がすぐに脱落(笑)していったのでやや心細くなり、ロシアも「ウチは別にいいや」と中国に配慮する気配は殆どなく、「何だ、オレんとこだけかよ、北朝鮮の味方してんのは」ということになってしまいました。北朝鮮のせいで孤立したくもないので、日本以外の欧米諸国あたりからの説得に応じたものと思いますね。大雑把に、態度的に強硬な順で言うと、日、米、英、仏、露、中というような具合だろうと思いますので、結局この中間くらいに落ち着いたということになると思います。中国としては、例えば日本の案には「死んでも反対」、米案には「拒否権使ってでも反対」、という感じになってしまうでしょうから、この2カ国に直接同調するのは耐え難いでしょう。それがイヤなら、「仏案あたりで手を打たんか?」とか言われれば、応じざるを得ないだろう、ということでしょう。
日本としては、「安保理決議に持ち込めた」ということで、所期の目的は達したと言ってもいいでしょう。「振り上げたコブシ」をどうするのか、とか言われたりもしたようですけれども、日本がそのコブシで北朝鮮に殴りかかった訳ではないのですから、制裁決議にならなかったからといって、特別不利益を蒙ることはないですね。更に、いつもは「日本が北朝鮮に文句を言うから(六カ国協議が)進展しないんだ(=日本の拉致問題のせいだ)」、というような主張をしていた中国が、さすがに今回は日本の主張を簡単には非難したり退けることができなかったことでも、日本にプラスになったと見ていいでしょう。
3)サンクトペテルブルク・サミット
ここでの成果はいくつかありました。北朝鮮問題の言及は発射以前からのテーマですので当然として、安保理決議を受けての対応としては「日本の存在・主張を無視できない」ということが示されたのではないかと思います。もしも、安保理決議がなければ、拉致・人道問題の記述を取り上げられなかったかもしれません。日本以外のG8参加国は、「日本が何か協力してくれるなら―例えばイラン問題とかで―問題を共有してあげてもいいですよ(=協力できることはするかもね)」ということを認めたということになります。すなわち、拉致問題というのは、単純に「日朝間の問題」という扱いではなくなった、ということを意味します。ここでも、日本はポイントを上げることに成功しました。
もう一点、特徴的であったと思うことは、米国の姿勢がやや変わってきた部分があったことです。「京都議定書」不参加を決め込んでいた米国が、「エネルギー効率・省エネルギー」に関する記述を認めたことです。普通に考えれば、エネルギー安全保障は、産油国などに見られる「資源ナショナリズム」に対する警戒感と、新興諸国のエネルギー消費の爆発的増大に対処せねばならない、ということでしょう。エネルギー資源獲得競争は、価格高騰を招き、世界経済に対して不安定要因となってしまいます。結果的に、資源大国(主に産油国)の発言力が増すことと、高騰した価格の恩恵を受けて(単純に考えれば、売上高大幅増ということですよね)、「オイルダラー」に代表される大量の「資源マネー」は世界市場に「投機的に」流れ込みモンスター化するかもしれない、という危惧はあるだろう。
何よりも、米国にとっては「GMショック」がかなり効いたのではないかと思っています。かつては米国を象徴するかのようなGMでしたが、「省エネルギー」への対応の遅れなどもあり、市場からはっきりNOを突きつけられてしまいました。海外市場での苦戦ばかりではなく、「米国国内」での苦戦というのが省エネ路線へ転換させていったのではないでしょうか。米国の消費者自身がその選択を示したということではないかと思っています。そうでなければ、これほど早く省エネだなんて言わなかったに違いないと思いますね。
最後に、単なる偶然かもしれませんけれども、日本の対露外交の一端はサンクトペテルブルクという地で、ずっと以前から始まっていたでしょう。そうです、「ナショナル・フラッグ」ですよ。ロシアに「お土産」を持って、奥田さんが昨年訪れていたはずですよね。トヨタ工場を進出させる、というサンクトペテルブルクの地が丁度サミット会場であったのは、なんとうまい具合なのでしょう(笑)。民間レベルというか、ビジネス上の外交では、「ナショナル・フラッグ」というのが確かに大事だ。そういう地であったことは、日本にとってプラスに働いただろう。これが全くの計算外で、実は何も考えもせずに偶然工場建設話を持って行ってたのなら、日本の外務省筋は本当の無能ということなんだろう。「舞台は着々と、ずーっと前から既に用意されていた」という方に解釈しておこう、とりあえず(笑)。もしも、今後に無能さを露呈した場合には、「やっぱ買いかぶりだったんだー」って思うことにするぞ。
防衛問題の話は、また後で。