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続・一酸化炭素中毒死を考える

2006年07月25日 22時18分01秒 | 社会全般
うーむむむ、先日ブログに書いたことにちょっと関連する記事を見つけたので、取り上げることとしたい。

参考記事:一酸化炭素中毒死を考える


Yahooニュース - 毎日新聞 - CO中毒 相次ぐ事故 夏場も要注意

中身としては、一酸化炭素中毒の注意喚起ということで良いと思うのですが、一方でちょっと疑問というか、??よく判らない部分があったので、一応書いておきます。


毎日の記事から一部抜粋しますと、次の部分ですね。

『専門家によると、体内では血液中のヘモグロビンが酸素と結びつき、体内に酸素を運ぶ役目をしている。COはこの役目を阻害する。ヘモグロビンとの結合しやすさは酸素の10分の1だが、一度結合すると酸素の2500倍離れにくくなるためだ。つまり、一度体内でCOが増えると酸素不足になり中毒症状を来す。』


このように説明されているわけですが、ヘモグロビン(Hb)が酸素との結合しやすさと比べると、一酸化炭素(CO)は十分の一しか結合できない、ということなんですよね?本当なのかな、と思ったのです。


一酸化炭素 - Wikipedia

こちらでは、『一酸化炭素が酸素よりも約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすい上、4つある結合サイトのうち1つが一酸化炭素と結合したヘモグロビン(カルボキシヘモグロビン)は、他のサイトに結合した酸素を放出しにくいためである。』という説明がなされています。

酸素よりも「250倍結合しやすい」というのと、「十分の一だが、くっついたら2500倍離れない」のと、どちらが正しいんでしょう?トータルでは250倍になっているんですけどね。


大体、他の多くの説明では酸素の200~250倍の親和性がある、というようなことのようです。


素人考えで申し訳ないんですけど、もしもCOが酸素の10分の1しか「結合しやすさ」(親和力)がないのなら、単純に同じ数だけくっつくには10倍の濃度が必要になると思うんですけどね。

例で考えてみます。
今、ビンの中に、Hbが10個あるとします。このビンの中に密閉されてる気体が、酸素とCOであるとすれば、同じ分子数が入っていると、酸素が9個くっつき、COは1個しかくっつきませんよね?つまり、普通の状態であれば、吸入する空気の中に含まれる酸素の濃度とCOの濃度が同じになって初めて、COはHbの1割を占拠できることになると思います。でも、これって、かなり無理なんでは?

吸入するCO濃度が酸素と同じ約20%もの濃度に達するわけがないですもん。大体、致死濃度が1000~1500ppmとかの非常に低濃度であるのに、何で1%とか10%とかまで生きて呼吸ができるのかな、と。おかしいと思うけどね。


もしも「200倍の親和力」ならば、空気中の酸素濃度20%に対して、COが0.1%あればいいので、こちらの方が妥当だと思えます。COがHbと解離しにくい、というのは当然で、親和力が強ければ解離も当然し難いわけですから。

血液中の溶解度が酸素よりもCOの方が10倍くらい多い、というのなら意味として判りますが、それでも血中に溶解するのとHbとの結合するのでは、Hbと結合している方が多いのではないかと思いますけど。


因みに、Hbには酸素分子が0~4個結合でき、この一箇所でもCOが結合してしまうと、残りの結合部位の酸素が解離しにくくなる為に、組織の低酸素が進む、ということだそうです。このCOをHbと離れさせる(追い出す)には、酸素濃度がCO濃度よりも200倍とか250倍必要、っていうことなら、整合性がとれてると思うな。

肌の色が「紅鮮色」になる、って前に書きましたが、これはCOがHbにくっつくとそういう色になるんだそうですよ。中々勉強になりました。



この毎日の記事の誤り(?)の原因は、専門家が間違えて説明したか、記者さんが説明を正しく理解せずに記事に書いたか、どちらかではないかと思いますが、どうでしょうか。でも、専門家が間違って説明をしたりするでしょうか?どうなんでしょう・・・・

「理系白書」が泣くような気がしますが・・・記者さんも少し勉強をしてみては?それか、記事に出す前に、「科学リテラシー担当デスク」とかにチェックしてもらうとか(笑)。


ほらね、ミスというのは、大体同じように起こってくるでしょ?色んなメーカーとかにメディアが「ツッコミ」するのと同じく、「第三者によるチェック体制をとっておらず、杜撰な管理体制だった」とかと同じではないですか?そっか、まだミスとは決まってなかったね。ごめんなさい。



ヘパリン過量投与で脊髄損傷??

2006年07月25日 13時47分37秒 | 社会全般
よく判らんが、この説明って当然なんだろうか?専門家はどうなんでしょ。

Yahooニュース - 毎日新聞 - <生体肝移植>女性に薬剤過量投与で重い後遺症 群馬大病院

(記事より一部抜粋)

群馬大学医学部付属病院は24日、生体肝移植ドナーの患者に薬剤の過量投与から両下肢まひの重い後遺症が残ったと発表した。森下靖雄院長は医療ミスと認め、「患者と家族に深くおわびする」と陳謝した。日本肝移植研究会(会長、門田守人大阪大教授)によると、生体肝移植でドナーに重い後遺症が残るのは初めて。

同病院によると、患者は群馬県内に住む50代の女性で、昨年11月に生体部分肝移植ドナーの手術を受けた。術後2日目に麻酔剤を流すための硬膜外カテーテルを差し込んだ脊髄付近から多量の出血があり、両下肢の完全まひが確認された。調査の結果、肺血栓などの合併症予防のための血液凝固阻止剤「ヘパリン」を通常の2~5倍投与したことにより、副作用の出血が増え、脊髄損傷を引き起こしたという。




この説明から推測すると、

)硬膜外カテーテルで術後鎮痛
)出血で硬膜外血腫が形成
)血腫による脊髄圧迫で両下肢麻痺

という風に解釈されます。

出血原因はヘパリンの過量投与によるもので、この為に硬膜外腔に多量に出血し血腫となったのと、カテーテル挿入部位辺りからの出血が確認された、ということだろうと思います(記事だけ見ると、まるでヘパリンが多く投与されると脊髄損傷が起こるかのように書かれていますが、薬剤の性質上そういうことはありませんよね?)。私には、この説明のどこが間違ってるとか正しいとか、判る訳ではありませんので、あくまで勝手な疑問を書いてみたいと思います。

・脊髄の硬膜外血腫は外傷性でも非外傷性でも起こり得るようですが、血腫の存在があったとしても直ぐに手術で減圧したり除去したりするとも限らない、ということです。自然に症状が軽減したりする場合もあり、血腫があっても必ずしも完全神経麻痺が残るとも言えないのでは?

・血腫が形成されてくると、圧迫が段々と強くなる為に運動麻痺が起こってくるが、それ以前は運動機能障害は存在していなかったはずで、患者自身が両足を動かせなくなることに気付く時点があっても不思議ではないのでは?術後2日目に出血に気付いているので、概ね術後24時間以内に起こったと思われますが、翌日時点では完全に麻痺してますから、血腫は早い段階で形成され、かなり圧迫が強くなっていないと完全麻痺にまでは至らないのでは?

<ちょっと寄り道:似たようなケースは日常でも感じることができます。それは正座を続けると、足の神経が圧迫されて、ジンジンしますよね。あれです。他にも、Saturday night palsy と呼ばれる現象があります。これは恋人に腕枕をしたまま寝てしまうと、翌朝その腕が麻痺してダラーンとなってしまう現象をいいます(笑)。昔に土曜日の夜に起こりがちであったため、このような呼び名が付けられたようです。これも腕の神経が長時間圧迫されることによって起こりますが、自然に回復します。>

・硬膜外カテーテルで鎮痛剤が持続注入されていたので、血腫が形成された後の痛みを感じることができなかった(脊髄が圧迫されると大抵は痛くなる)としても、痛覚のみのブロックが多いのでは?運動機能は残存していたのでは?(=術後、両足が一切動かなくなったら、普通は自覚できそうだけど・・・)

・ヘパリンの過量投与でカテーテル挿入部分から出血したのだが、術創からの出血は無かったのかな?普通は開腹手術だと思うので、切った腹の方が傷も大きいし、深いようにも思えるが?

・硬膜外カテーテルを挿入する時に起こりえる合併症には脊髄損傷があるが、機械的損傷を与えたという可能性はなかったのかな?

・術後へパリンを投与した理由に「肺血栓予防」と記事に出てるが、肺梗塞のような重篤な合併症は下肢手術などに比べれば、かなり少ないのでは?それに術後の肺塞栓は、長期(3、4日くらい)臥床のような場合に起こりやすいのであって、術後2日目でヘパリンがそんなに大量に必要?全身麻酔後の肺塞栓は1万件に4~5件程度の発生頻度なのに?

・ドナーはレシピエントに比べて早期離床が可能であるし、血管吻合もないので抗凝固剤管理は術後必須ではないと思うが?

・ヘパリンは、単に術後のラインを残す為に持続で流れてだけなんでは?

・ドナーの術中にヘパリンを入れてるなら、閉じる前にACTとか測ってプロタミンで拮抗してるのではないかと思ったりしますけど、にも関わらず、オペ室出て直ぐにヘパリンを大量に入れますか?


参考:
血栓 塞栓症についてTITLE